BanG Dream! (アニメ)
―声優が演奏もする時代―

演じて歌って演奏する、そんな現在の声優の凄まじいマルチタレントぶりと新しい時代のメディア展開をBang Dream! で今更ながら体感したので、所感を書いてみる。

風邪で寝込んだ時期にYouTubeで期間限定されていた BanG Dream! (以下バンドリ) を視聴。主人公の戸山香澄がメンバーを巻き込んでいく形でガールズバンド Poppin’Party を結成し、成長していくストーリー。

安心感すら感じる普通なストーリーと演出で、作品の売りは各バンドへの曲の割り振りが良いという印象。主人公のバンドには王道な感じの曲、実力派を謳うバンドには格好良い感じの曲、「世界中を笑顔に」を謳うバンドには聞いていて楽しくなる曲が当てられていて、バンドごとの住み分けが上手いと思う。質も良くて、よくこれだけ歌える声優を集めたなぁ、と感心するレベル。普通に上手くて曲もバラエティに富んだ Poppin’Party と、愉快な曲調とアニメらしくぶっ飛んだギミックを活かしたハロー、ハッピーワールド! が見ていた中ではお気に入り。

ここで終われば普通の作品だけれど、作中に登場するバンド (Poppin’Party と Roselia) では、声優が自ら演奏しているということに驚いた。昔の作品では「歌手が声優を兼任」or「歌だけ歌手」という印象で、最近の作品だと「声優が歌う」ケースが多いのは知っていたけれど、「声優が演奏する」パターンの登場に時代の変化を感じた。演じて歌って演奏する。本作の声優のマルチタレントぶりは凄まじいと思う。

「声優が演奏する」ということに関しては、演奏が微妙だと曲目が制限される上にライブシーンが映えない。演奏が上手でもアニメでは誰が演奏しているかは見えず、クロスメディア展開しやすくなるメリットしかなく、声優の負荷は激増する。そんなハイリスクローリターンな勝負に出たブシロードは面白い会社だし、それに応えた声優陣も凄いと思う

アニメで終わらず、アニメと実際のライブを絡めて展開していくプロジェクト。特に Poppin’Party の演奏に、新しい時代のメディア展開手法を見た気がする。声優の負荷は凄まじいだろうが、これだけのバンドを作りあげたこのプロジェクトは大成功だと思う。

バンドリはこの手法が大正解だと思うけれど、個人的にはライブシーンに歌手を使う手法も廃れずに残ってほしいと思う。「歌手が声優をする」だと「満月をさがして」など少女漫画で一時期流行ったイメージ、「歌だけ歌手が担当」だと「Gravitation」や映画のイメージ。特に「Gravitation」は浅倉大介カラー全開で、なぜBLアニメでここまで本気を出したんだろうか、と思うほどに名曲揃い。そんな作品もまた出てきてほしい。