マスタークラス―没入する心地よさ―

概要

マスタークラスはテレンス・マクナリーによる作品で森新太郎先生の演出、黒田絵美子先生の翻訳。
元オペラ歌手のマリア・カラスが引退後に、音楽学校で若いオペラ歌手たちに公開授業 (マスタークラス) を行う場面を描いた作品。世界屈指のソプラノ歌手だったマリア・カラスの生き様を、引退した後から振り返ることになる作品。

感想のまとめ

迷っている人がいたら是非おすすめしたい公演 (2025年4月12日から大阪公演)。
授業を通じて人生を振り返り、理解を深める様子はまさに講義。
気がつけば全神経が舞台に集中し、あっという間に感じる公演だった。
大学時代に一心不乱に臨んだ講義を思い出すような心地よさを感じた。

以下ネタバレ注意

感想

  • 心から観て良かったと思える公演
    望海さんが出演していて、近郊で、チケットがまだ買える公演。
    こんな軽い気持ちでも観劇しようとした自分を褒めてあげたい。
    心の底から満たされる、とても有意義な時間を過ごすことが出来た。
    観劇を迷っている人がいたら是非おすすめしたい公演。

  • マスタークラスの名にふさわしい公演
    気がつけば全神経が舞台に集中し、あっという間に感じる公演だった。
    脚本、演出、役者のすべてが素晴らしく、凄まじい没入感。
    授業を通じて人生を振り返り、理解を深める様子はまさに講義。
    大学時代に一心不乱に臨んだ講義を思い出すような心地よさを感じた。
    観劇後に心地よい疲労と充足感を感じるような、幸せな時間だった。

  • 女優・望海風斗さんの素晴らしさ
    マリア・カラスを演じる望海さんはやはり素晴らしかった。
    望海さんは宝塚時代から凄まじかったが、この公演でも流石。
    膨大なセリフでも、こちらの頭にすっと入ってくる台詞回しは健在。
    どんなに喋っていても、理解に全く困らないので集中しやすかった。
    マリア・カラスのカリスマ性や回想での男女の演じ分けも印象的。
    ストリートプレイだからこそ、演者としての技術が際立っていた。

  • 個性豊かな生徒たち
    三名の生徒たちはそれぞれが個性的。
    緊張の仕方や授業に望む姿勢が人それぞれで、反応がとてもリアル。
    特にトニーが見せた二面性に、虚勢と本心のリアルさを感じた。
    歌も三名とも素晴らしく、途中で切り替わってしまうのが心惜しい。
    特にトニーの歌は作中で褒められるのも納得の素晴らしさだった。

  • 伴奏者と道具係が作り出す公開授業の雰囲気
    マスタークラス、というテーマに関して、伴奏者と道具係とが印象的。
    伴奏者の所在ない様子から馴染んでいくさまに、授業の経過を感じた。
    道具係は一貫して無関心で、教室という非日常性を強く感じた。

  • 味わい深い構成
    授業を通じて歌の途中で回想に入る構成が趣深かった。
    歌が過去へ誘い、思い出が今再び蘇る構成がとても好みだった。
    少しビターな終わり方も、あの順番で良かったかもと思えた。
    音楽に人生を捧げたマリア・カラスの人生の悲しみを感じた。