激情 (宙組) ―ドン・ホセの抜群の歌唱力と一癖あるカルメン像―

概要


激情は「カルメン」を原作とした作品で、柴田侑宏先生による作、謝珠栄先生による演出の作品。メリメによる小説とビゼーによるオペラ版がミックスされている作品。
衛兵の伍長であるドン・ホセが、ジプシーの女であるカルメンの虜となり、犯罪に手を染めた末に破滅していく物語。

感想のまとめ


高音から低音まで抜群の歌唱力を誇る姿月さんの歌唱力が素晴らしい作品。花總さんの一癖あるカルメン像は独特で魔性の女タイプ。情熱的に始まった恋がすれ違いに繋がり、最後は破滅に至る悲劇性がとても素敵だった。真っ直ぐすぎるドン・ホセがカルメンに惹かれて転落していく際に、頭では解っていても止められない苦悩がとても良かった。

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ODYSSEY 感想―公演中止を乗り越えて出港―

概要


ODYSSEYは野口幸作先生の作・演出による作品。ODYSSEY号を率いる海賊船の船長ブルームが、月の女神セレネと太陽の神アポロンに誘われて世界を巡っていくレビュー作品。
同年上旬に予定されていた公演だったが、コロナによる中止を受けてこの時期へ変更となった作品。

感想のまとめ


バリエーション豊かな衣装が売りのショー作品で、様々な衣装と衣装が映えるダンスを楽しむタイプの作品。抜群の着こなしや、眉を主体とした表情で心情を見せる彩風さんの強みを活かした構成で、叶さんや眞ノ宮さん、音彩さん、華世さんといったメンバーの活躍が光る公演だった。一番のお気に入りはカルメンのシーンで、彩風さんの表情は必見。

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めぐり会いは再び My only shinin’ star 感想 ―先の展開がわかっていても楽しい王道喜劇―

概要


めぐり会いは再び My only shinin` starは小柳奈穂子先生の脚本・演出による作品。フランスの劇作家マリヴォーの「愛と偶然との戯れ」をモチーフにした作品で、結婚相手のことを知るために、身分を偽って相手を観察しようとする男女を描いた喜劇作品

感想のまとめ


古典喜劇の王道を歩むので先の展開がわかっていても笑えるし、ロマンスで盛り上がる事ができる作品。柚希さんと夢咲さんの息の合ったラブシーンがとても素晴らしくて印象的。作品を自分の色に染め上げる、紅さんの劇薬ぶりを堪能できる。
お気に入りはカリスマぶりとラブシーンでのピカイチの格好良さが印象的な柚希さんのドラント、出てくる度に舞台が引き締まる英真さんのオランド伯爵、辛辣なセリフを絶妙な間のとり方と声のトーンで繰り出して笑いを取ってくる涼さんのマリオ。

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宝塚の退団者を振り返る (2021年度)
―思い入れの強い方々―

概要

2021年度は宝塚で好きだった人が多く退団してしまった。そこで、思い入れの強い人をピックアップして、思い出を忘れないように残したい。轟悠さん、望海風斗さん、真彩希帆さん、彩凪翔さん、珠城りょうさん、愛月ひかるさんについて振り返る。


コメント

  • 轟悠さん
    初めて観た宝塚の主演男役。宝塚で好きな人は彩風さんと轟さん、それぐらい思い入れの強い人。
    初めて見たのは人生初の宝塚である「凱旋門」。スポットライトを浴びて輝くその姿に、男役とはこんなにも格好良いのか、と衝撃を受けたのを覚えている。復讐を狙う鋭い目つきとジョアンの死に対する慟哭も印象的で、人生初の宝塚が最高の思い出になったのは雪組のおかげもあるが、轟さんがいたからだろうと思っている。
    「凱旋門」も素晴らしかったが、最後に劇場で観た「チェ・ゲバラ」も心が震えるほどだった。クーデターを成し遂げる力強さや国連演説でのひりつくような空気、最後の戦いで終わりを感じさせるような乾いた嫌な咳は轟さんの演技力があってこそだろう。後世まで語り草になると確信した傑作を劇場で観ることができて、本当に幸せだった。
    望海さん、彩風さん、彩凪さん、珠城さんが退団しても轟さんがいてくれると思っていたので、退団はとてもショックだった。けれど「婆娑羅の玄孫」の配信を見て、轟さんのために書かれたこの公演で退団できるならば、と思えたので未練は少ない。
    轟さんが出演する公演で一番好きな作品は「チェ・ゲバラ」で、今後も過去作品を発掘していく予定。

  • 望海風斗さん
    初めて観た組のトップ男役。劇場で望海さんのアナウンスとあの歌声を聞いて、宝塚に来たんだと実感するのが好きだった。
    初めて見たのは人生初の宝塚である「凱旋門」。轟さんと同じぐらいオーラがあって、凄まじく歌の上手な人という印象だった。
    激しい生き様がこの上なく似合う演技力、どこまでも伸びるロングトーンと凄まじい滑舌の良さ、指先までキレイなダンスとまさに三拍子揃った人で、作品のクオリティを無条件に跳ね上げる凄まじいトップスターだった。
    公演ごとに成長する、というよりも後進のために様々な引き出しを見せてくれているような印象が強かった。「Music Revolution!」での驚異的な滑舌の良さを見せつけるシーンは望海さんだけ別格だったが、「Music Revolution! New split」では皆上手くなっていて、男役にとって本当に良いお手本だったんだろうと思う。
    望海さんが出演する公演で一番好きな作品は「ファントム」だが、一番好きな楽曲は映像込みで「壬生義士伝」での石を割って咲く桜。

  • 真彩希帆さん
    初めて観た組のトップ娘役。圧倒的な歌唱力が印象的。
    初めて見たのは人生初の宝塚である「凱旋門」で、「凱旋門」での月のような美しさが一転して、「Gato Bonito!!」では太陽のような笑顔で衝撃的だったのが印象的。
    圧倒的な歌唱力が素晴らしく、壬生義士伝の辺りからさらにレベルが跳ね上がり、まるで楽器のように綺麗な歌声で高らかに歌うようになったのが印象に残っている。元々上手だった演技やダンスも公演ごとに進化していて、雪組の中で一番成長した人かもしれない。
    真彩さんが出演する公演で一番好きな作品は「二十世紀号に乗って」で、映像化されている作品では「ファントム」。

  • 彩凪翔さん
    キラキラした役を演じさせたら世界一だと思う人。
    初めて見たのは人生初の宝塚である「凱旋門」で、気になりだしたのは「SUPER VOYAGER!」での綺麗なダンスと眉間にシワを寄せたときの格好良さに触れてから。
    「ファントム」でのシャンドン伯爵は衝撃的で、まるで少女漫画のようにキラキラしたオーラを出しながら現れたのが今も脳裏に焼き付いている。そこから「ハリウッド・ゴシップ」では堕ちていくスター、「ONCE UPON A TIME IN AMERICA」では手を汚さない大物と新たな一面を見せてくれて、歌唱力も目覚ましく進化してからの退団だったのでショックだった。本当に素敵な男役で、「シルクロード」での眩い格好良さも素敵だった。
    彩凪さんが出演する公演で一番好きな作品は「ファントム」で、正統派のシャンドン伯爵と変化球のアラン・ショレのどちらも好き。

  • 珠城りょうさん
    初めて雪組・専科以外でこの人の公演を観たいと思った男役で、雪組以外を観るきっかけとなった人。
    初めて見たのは映画館での「タカラヅカスペシャル2018」。トップ男役が持ち回りで歌う場面での、視線と表情で過去を振り返る演技を見て、次は月組を観たい!と思ったのがきっかけ。
    念願が叶った「夢現無双」は癖の強い作品だが、歩き方や周囲への接し方で武蔵の成長を感じさせる演技力がとても素敵で、「クルンテープ」でのダイナミックなダンスも素晴らしかった。
    最後に劇場で観た「WELCOME TO TAKARAZUKA」での全く頭がぶれない足さばきと見惚れるような所作、「ピガール狂騒曲」でのヴィクトールの格好良さとジャンヌの可愛らしさの演じ分けも素敵だった。
    映像やライブ配信で観た作品では誠実な男性像とスケールの大きなデュエットダンスがとても素敵で、頼りになる人柄の役をやらせたら天下一だと思っている。
    珠城さんが出演する公演で一番好きな作品は「カンパニー」。

  • 愛月ひかるさん
    劇場では一度しか見ることが叶わなかった人。
    初めてみたのは星組全国ツアーの「アルジェの男」。本当に嫌な男の演じ方と存在感の出し方が上手で、出てくるたびに惹かれるけれど、ジュリアンたちのために消えてくれと思いたくなる素晴らしさ。サビーヌに撃たれた時のリアクションもとてもリアルで、思わずビクッとしてしまったのを覚えている。もっと観たいけれどジュリアンたちの状況が悪化するから出てこないでほしい、そんな素晴らしい出会いだった。
    「ロミオとジュリエット」での役替わりは強烈だったが、役替わりが大成功した要因の何割かは愛月さんのおかげだろう。ウェスト・サイド・ストーリーを逆輸入したような大人になり切れないリアルな青年ティボルトと、作品の雰囲気をもガラッと変える圧倒的な存在感で人々を冷たい死へと誘う死。まさに愛月さんでなければ演じられない素晴らしい役作りだった。
    愛月さんが出演する公演で一番好きな作品は「ロミオとジュリエット」で、どちらの役替わりも同じぐらい好き。

婆娑羅の玄孫
―愛が込められた最高の当て書き作品―

概要


婆娑羅の玄孫は植田紳爾先生の作・演出による作品で、轟悠さんの退団公演。
江戸時代を舞台に、近江蒲生郡安土を治める佐々木家の当主家次男として生まれるも家から縁を切られた佐々木蔵之介、改め細石蔵之介を主人公とした作品。正義感が強く粋な男、そんな蔵之介の生き様を描いた作品を専科の轟さんと汝鳥さん、そして星組メンバーが演じる。
  

感想のまとめ


植田先生から轟さんへの愛が込められた最高の当て書き作品になっている。蔵之介と轟さんを重ねたクライマックスは、物語としても轟さんへのメッセージとしても感動的。メリハリのある2本立てのストーリー、和物らしい美しい所作や殺陣を堪能できる構成、テンポの良い江戸言葉による掛け合いを楽しめる。
すべての所作で男役の極致を見せてくれる蔵之介を演じた轟さん、専科同士だからこその重みと阿吽の呼吸を見せてくれる彦左を演じた汝鳥さん、軽妙な掛け合いから憂いを帯びた姿まで完璧なお鈴を演じた音波さん、軽く明るく華のある江戸男の権六を演じた極美さん、ガラッと変わる一人二役を見事に演じ分けた阿部 / 頼母を演じた天華さんがお気に入り。

以下ネタバレ注意

“婆娑羅の玄孫
―愛が込められた最高の当て書き作品―” の
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