盗賊 / 三島由紀夫 / 新潮文庫

概要


「盗賊」は三島由紀夫の初となる長編小説。子爵の子息である藤村明秀は、失恋を経て自殺を決意する。その最中に同じく自殺を考えている山内清子と共犯となり、自らの計画を遂行していく。

感想のまとめ


観念的な作品で、結末に至る必然性が理路整然と整え得られている点が素晴らしかった。理詰めで固められた心理描写と絵画的で美しいひと時の描写とのギャップが印象的で、まさに美しい日本語を楽しむことができた。他の三島由紀夫作品に比べて少し読み難い印象があったが、作品を重ねていく中で読みやすい文章に変えられていったのかもしれない。

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春の雪 (月組) 感想
―不可能への挑戦―

概要


原作はあの三島由紀夫による作品で、「豊饒の海」四部作の第一部。美しい文章・情景を書かせたら右に出る者はいない三島由紀夫が最後に書いた長編小説。生田大和先生が脚本・演出を手掛けた作品。

感想のまとめ


三島由紀夫作品が持つ雰囲気を見事に表現している素晴らしい作品。清顕を演じる明日海さん、聡子を演じる咲妃さん、蓼科を演じる美穂さんを始めイメージ通りの配役で演技派揃い、歌も上手い完璧な配役。清顕と聡子のビジュアルに惚れ惚れするし、蓼科の老獪さ、奔馬を思わせる飯沼の力強さ、本田の実直さなどそれぞれの人物がとても魅力的。脚本も原作の良さが出ている場所が多く、観ていて美しさに感動する素晴らしさ。
ただオリジナル要素は軒並み微妙で、特にがっかりな2箇所さえ無ければ不世出の作品になっていたのに、と歯噛みしたくなる。
まさに清顕という美しさで作品に引き込むような清顕を演じた明日海さん (青年期) と海乃さん (少年期)、その美しい清顕と並ぶ美しさと素敵な歌声で聡子を演じた咲妃さん、美しい歌声と作品のクオリティを上げる演技力で蓼科を演じた美穂さんが一押し。

観劇日


2019/08/31 (ブルーレイ)

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―不可能への挑戦―” の
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