BanG Dream! (アニメ)
―ライブシーンはシリーズで1番―

昨年視聴したアニメ BanG Dream!の3rd season。アニメとリアルライブによるメディア展開、それも声優が演奏まで行う珍しいスタイルが特徴の作品。

3期は安心の王道ストーリーで、これまでのシリーズで1番良いライブシーンを楽しむことに注力した作品だった。ストーリー的には過去のシリーズのほうが丁寧で好きだったが、ライブシーンの演出はこれまでで一番凝っているので見応えたっぷり。

今期はリアルライブ組の3バンドにフォーカスして、武道館でのライブに向かうストーリー。Poppin’Partyは憧れの大舞台に向けての躍動、Roseliaはイベントを通じての再発見、RAISE A SUILENはメンバーの絆に主軸が置かれていて、王道でシンプルな構成。、最初から最後まで手堅いストーリーで、最後にも3バンド全てに賞を与える徹底ぶり。ほとんど王道を外さないので、安心してライブシーンを楽しむことのできる作品だった。テンポ良く新曲を出すためか、過去のシリーズに比べるとストーリーが少し荒い印象。りみの胸中は最終話の数分で使うには勿体ないぐらいだった。

ライブシーンはかなり気合が入っていて、これまでのシリーズで1番良い。中盤に出てくるMVはメイキング・完成品ともに、バンドのカラーが色濃く出ていて良い。武道館ライブは派手に動かすカメラワークやキャラクターの掛け合いが印象的で、3バンド合同での演奏はこれまでの集大成と言わんばかりの出来栄え。

曲に関しては、RAISE A SUILENが飛び抜けている。プロが来ると違いが出てしまい、格好良い系のRoseliaが割りを食った印象。今回正統派に近い3バンドにフォーカスしているので、作中での評価とギャップを感じてしまった。

今回成長していく主役側の立ち位置はRAISE A SUILENで、他のバンドは先輩側の役割。Poppin’Partyは枷がなく自由に動けていて、先輩としても良い役回り。Roseliaは先輩バンドという美味しい立場だったが、今更それに気づくのか、という内容で脚本面では不遇。

ライブシーン以外では戸山姉妹の会話シーン、マスキング絡みのシーン、ドラマー会議が印象的。
香澄の心情を姉妹の会話を通じて語るシーンでは、音楽という共通項を持たない関係だからこその、会話シーンが好き。主要キャラが全員バンドメンバーなので、バンドを前提としない戸山姉妹は特別な関係かもしれない。全体通じて美味しいポジションだったのはマスキングで、出てくるたびに株が上がる凄いキャラ。気配り上手でありながら周囲を引っ張って、物語を回していくナイスキャラ。息抜き回のドラマー会議では、他バンドのキャラの良い先輩ぶりと、マスキングの後輩ぶりがとても良かった。

今回3バンドにフォーカスしていたが、リアルライブを行うバンドに注力するという方針だとしたら少し残念。せっかく持ち味の異なるバンドを持っているので、次の機会は他のバンドにもフォーカスを当ててくれればと思う。