冬霞の巴里 感想 ―おどろおどろしくも幻想的な傑作―

概要

冬霞の巴里はアイスキュロスのギリシア悲劇であるオレステイアをモチーフとした作品で、指田珠子先生による作・演出公演。19世紀のパリを舞台に、父を殺害した叔父と母への復讐を目論むオクターヴと姉のアンブルを描いた復讐劇。


感想のまとめ

暗くてドロドロの人間関係の復讐劇、さらにおどろおどろしくも幻想的な演出と冷え冷えとした雰囲気は人を選ぶが、好きな人にはたまらない傑作だった。時制や視点、現実や白昼夢が交錯するため情報量は多いが、少しずつ全容が見えてくることによって想像力が掻き立てられる作品で、痛快な娯楽作品ではなく考えさせられる作品になっている。
まさにハマり役だったオクターヴの永久輝さん、素晴らしい演技力が光ったアンブルの星空さん、登場シーンから完璧だったジャコブ爺の一樹さん、凄まじいインパクトで影を落としていくオーギュストの和海さん、ギラギラした目つきと皮肉屋ぶりが素敵だった聖乃さんが特に印象的。


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ポーの一族 (花組) 感想 ―漫画の世界が現実に―

概要


ポーの一族は萩尾望都による漫画作品で、小池修一郎先生による脚本・演出。18世紀から近代までを舞台に、永遠の命を持つ吸血鬼 (バンパネラ) の一族を描いた大人気作品。余談になるが、小池先生はこの作品の文庫版に寄稿していて、縁の深い作品になっている。

感想のまとめ

ポーの一族の実写化としてこれ以上はないだろう、と確信する完璧なキャスティングが光る傑作。漫画の世界から抜け出したかのような明日海さんのエドガーと柚香さんのアラン、圧巻の演技力に裏打ちされた仙名さんのシーラは特筆すべき素晴らしさ。漫画作品も得意とする宝塚の作品群の中でも、間違いなく傑作として挙げられる作品だろう。脚本のまとめ方も素晴らしく、初見でもポーの一族を理解できるであろう脚本になっている。


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アウグストゥス / Cool Beast!! 感想
―アントニウスとクレオパトラが魅力的な歴史ファンタジー―

概要


アウグストゥス―尊厳ある者―は田渕大輔先生の作・演出による作品。ジュリアス・シーザーの後継者であり、ローマ皇帝となったアウグストゥス。彼の歩んだ道程を、ブルートゥス、アントニウスたちとの対立を交えながら描いた作品。
Cool Beast!!は藤井大介先生の作・演出による作品。野獣の見る夢を描いたラテンショー。

 

感想のまとめ


アウグストゥスは歴史ファンタジーとして観るべき作品。アウグストゥスとポンペイアが心を通わせるシーンや、アントニウスとクレオパトラのシーンなど随所に魅力的なシーンが光る。その一方で、説明不足かつ登場人物が考えなしに見えてしまうのが惜しい。野心に満ちたアントニウスを力強く演じた瀬戸さん、ファラオとしての矜持と愛を選んだ女性を見せたクレオパトラを演じた凪七さん、愛憎入り交じったブルートゥスを演じた永久輝さんがお気に入り。
Cool Beast!!は花組のバラエティ豊かなダンサーを堪能できるショー。美穂さんの歌唱を心置きなく堪能できるショーで、美穂さんと歌う音さんの歌もとても素敵。

 

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CASANOVA 感想
―キラキラと美しい公演
コンデュルメル夫人がイチオシ―

概要


作・演出は生田大和先生による作品。ヴェネツィアを舞台に、希代のプレイボーイ・カサノヴァの半生を描いた作品。華やかで明るく、生き様がとても眩しい公演。

感想のまとめ


キラキラで華やかなひとときを楽しめる公演。人生には恋と冒険が必要だと言い、人生を謳歌していくカサノヴァと、野望にひた走るもうまく行かずに苛立ちを抱えていくコンデュルメル、夫の愛を求めているのに素直になれずに苦しむコンデュルメル夫人と色々な人生を見られるのがとても良い。
イチオシは圧倒的な存在感と気持ちが痛いほど伝わってくる演技、そして高音まで美しい歌声が素敵なコンデュルメル夫人を演じる鳳月さん。誰もが納得する希代の色男カサノヴァを演じる明日海さん、エネルギッシュな演技と透明感のある綺麗な歌声が素敵なベアトリーチェを演じる仙名さんもとても素敵。

観劇日


2019/4/28 (ライブ中継)

記念すべき初の花組は平成最後の公演!

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コンデュルメル夫人がイチオシ―” の
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