パルムの僧院/スタンダール/大岡昇平 訳/新潮文庫/感想
―後半が面白い作品―

概要


フランスのスタンダールによる作品で、大岡昇平による翻訳。イタリアのパルム公国を舞台に、貴族の青年ファブリス・デル・ドンゴと周囲の人間たちの生き様を描いた小説。

感想のまとめ


恋愛と政治がファブリスを中心に絡み合っていくので、尻上がりに面白くなる作品。激しい恋愛と宮中の政治は読み進めるほど面白さが増していく。登場人物によって形の違う愛の描き方がとても魅力的。自分の思いに一直線で憎めない魅力のあるファブリス、美貌と知略を駆使して宮中で立ち回るジーナなど、登場人物も魅力的。

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ドン・ジュアン/モリエール/鈴木力衛 訳/岩波文庫/感想
―会話のテンポがとても良い喜劇―

概要


フランスのモリエールによる作品で、鈴木力衛による翻訳。スペインのドン・ジュアン伝説がもとになっている。数多の女性を口説き落としては捨てていくドン・ジュアン。結婚詐欺師で快楽の探求者、無神論者で偽善者である彼の物語。

感想のまとめ


会話のテンポがとても良く、ドン・ジュアンの二枚舌ぶりが楽しい作品。
登場人物を使い捨てるかのごとく新しいエピソードへ進んでいくので、彼の奔放な旅を思わせる楽しさがあった。ドン・ジュアンはいろいろな側面を持っていて、物語が進むほど彼を知っていく楽しみがある。
キリスト教を揶揄するシーンも印象的で、これだけやればそりゃ揉めるだろう、というような揶揄の仕方がとても印象的。

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肉体の悪魔/ラディゲ/新庄嘉章 訳/新潮文庫 感想
―緻密な心理描写が際立った作品―

概要


フランスのラディゲによる作品で、16歳から18歳の間に書かれた本作。第一次大戦期のフランスを舞台に、人妻との恋に落ちていく少年の物語。他にも戯曲「ペリカン家の人々」、「ドニーズ」が収録されている。

感想のまとめ


主人公の緻密な心情描写が凄まじい作品。矛盾だらけで理屈では説明つかないような言動や思考すら、見事に描写していて圧巻。
ただ情熱的だが暴力的でエゴイズムに満ちている恋愛なので、美しさを楽しむ作品ではなかった。主人公の心情を追うことを楽しめるかが、この作品を楽しめるかの分かれ道だと感じた。個人的には、凄いとは思うけれど好きではない作品。

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