パルムの僧院/スタンダール/大岡昇平 訳/新潮文庫/感想
―後半が面白い作品―

概要


フランスのスタンダールによる作品で、大岡昇平による翻訳。イタリアのパルム公国を舞台に、貴族の青年ファブリス・デル・ドンゴと周囲の人間たちの生き様を描いた小説。

感想のまとめ


恋愛と政治がファブリスを中心に絡み合っていくので、尻上がりに面白くなる作品。激しい恋愛と宮中の政治は読み進めるほど面白さが増していく。登場人物によって形の違う愛の描き方がとても魅力的。自分の思いに一直線で憎めない魅力のあるファブリス、美貌と知略を駆使して宮中で立ち回るジーナなど、登場人物も魅力的。

感想


  • 尻上がりなストーリー
    序盤はファブリスの冒険譚が中心で、中盤からファブリスとクレリアの恋愛とジーナやモスカ伯爵の宮中政治とが、ファブリスを中心に絡み合って行く。クレリアやジーナ、モスカ伯爵の人生がファブリスを軸に動いていくストーリーは読み応え十分。読めば読むほど物語が面白さが増していき、下巻はあっという間に読み終わる面白さ。

  • 愛の描き方が良い
    登場人物それぞれ愛の形が違っていて、その描き方がとても素敵。
    ファブリスの幸福へひたすら突き進む愛と、クレリアの苦悩の果てにファブリスを選んでしまった愛とはとても情熱的で魅力的。一方ジーナとモスカ伯爵は献身と苦悩が際立っていて、報われて欲しくなる愛。フェランテの見返りを求めない献身的な愛もまた違った魅力があり、愛に満ちた物語かもしれない。

  • 無常を感じる結末
    とても激しい大恋愛や政治の結末は無常であっさり。ファブリスとクレリアの子供は病死、クレリアは自殺、ファブリスはその後一年ほどで死去、ジーナもその半年後に死去。あまりにもあっさりとした文章で物語の幕を閉じるので、物語から一気に現実に戻される感覚。読み終えて現実に立ち返るのに丁度よいのかもしれない。

  • ファブリスの憎めない人物像
    主人公のファブリスが不思議な魅力を持っている。駄目な形で貴族のボンボンぶりを発揮して行く先々で危機に陥るも、周囲の善意によって助けられる。つい助けたくなるのも頷ける人柄が魅力的で、一つのものに一直線に進み続ける姿が好きだった。ただあまりに浅慮なので、好き嫌いが分かれる人物像かもしれない。

  • ジーナがとても魅力的
    この作品で第二の主役であろうジーナがとても魅力的。際立った美貌と知略を駆使して、ファブリスのために立ち回る政治劇がとても面白い。敏腕のモスカ伯爵が味方にいるとはいえ、大公たちを相手に大立ち回りを見せる彼女の見せ場が作中屈指の見どころ。

  • モスカ伯爵の苦難が良い
    比較的常識人のモスカ伯爵も魅力溢れた人物。ジーナへの愛で苦悩してファブリスに嫉妬もするし、宮中の政治はストレスばかり。悩みながらも正しいことをしてきた彼は人間味に満ちた魅力がある。ジーナの愛を手に入れてファブリスとも和解して、彼が報われたのがこの物語の救い。