ロミオとジュリエット/シェイクスピア/福田恆存 訳/新潮文庫
―新潮文庫がオススメ―

概要


シェイクスピアの代表作品であり、誰もが結末を知っているであろう恋愛悲劇。
イタリア北部のヴェローナを舞台に、敵対する家に生まれたロミオとジュリエットとが恋に落ち、破滅的な結末を迎える物語。

感想のまとめ


何度読んでも楽しめる不朽の名作。運命に翻弄されていくストーリー、要所で美しい表現と軽妙な台詞回しが特徴的。物語と台詞回しのどちらも素晴らしく、シェイクスピア作品を楽しむのにうってつけの作品。
翻訳は新潮文庫の福田恆存訳が、日本語としての読みやすさとテンポに優れていてオススメ。

 

以下ネタバレ注意

感想


  • 何度読んでも面白いストーリー
    結末だけ知っていても、あらすじを知っていても、全容を知っていても、何度でも楽しめるのがこの不朽の名作。燃え上がるような恋が辿る物語、随所に散りばめられた悲劇の暗示、軽妙な掛け合い、テンポの良いセリフのおかげで何度読んでも飽きること無く楽しめる。物語と台詞回しのどちらも素晴らしく、シェイクスピア作品を楽しむのにうってつけの作品。

  • 一気に読むのに丁度よいスピード感
    200ページ程度の作品なので、テンポがとても良い。軽快な掛け合いを織り交ぜつつもドンドン物語が進んでいく。中学時代に読んで以来の愛読書で、あまり本を読まない人にもおすすめの作品。

  • 翻訳が良い
    ロミオとジュリエットは何人もの翻訳で読んだ作品だが、新潮文庫の福田恆存訳が圧倒的に良い。日本語として読んだときのわかりやすさとテンポの良さがずば抜けている。一文あたりが短いからか、とにかく読みやすい。少し硬くて古めかしい表現も、過去の名作を読んでいるという心理的な距離感とマッチする。シェイクスピアの作品を買うなら新潮文庫、とオススメする翻訳。

  • 台詞の掛け合いや言い回しが凄い
    台詞の掛け合いや言い回しが軽妙で小気味良い。ロミオやマキューシオの軽口やジュリエットの皮肉、僧ロレンスの問答めいた台詞回しなどが癖になる心地よさ。目で見ても、声に出しても心地良い素晴らしさ。イチオシはマキューシオが自身の傷に対して言及した、井戸より浅くて協会の戸口よりも狭いという表現。

  • 運命に翻弄されていく展開が魅力的
    運命に嫌われているとしか言いようがないほど、悪い方へ悪い方へ流れていく。もし手紙が届いていれば劇的なハッピーエンドだっただろうに、運命に翻弄されて悲劇的な結末へ向かっていく流れが悲しくも魅力的。

  • 全てを燃やし尽くすかのような恋の激しさ
    燃え上がる恋が自身と周囲を焼き尽くすかのように、登場人物が軒並み不幸になっていく。自身の授けた策によって悲劇を起こしてしまった僧ロレンス、命を落としたマキューシオとティボルト、婚約者が死ぬは墓荒らしに殺されるはで散々なパリスなど、両家が和解する代償にしては多すぎる悲劇が生まれている。この激しい悲劇性も、ロミオとジュリエットの魅力だと思う。

  • 要所の表現が美しい
    初夜が明けて雲雀をナイティンゲイルだと言うシーン、ロミオやジュリエットが死ぬシーンなどの表現がとても美しい。絵面、表現、台詞回しのすべてが美しい。要所でこういった表現をしてくるので、所々下品な表現があっても全体として上品な印象になっている。原作の良さと、それを活かす翻訳の合わせ技が光る。