ハムレット (2026) ―セリフが映える公演―

前置き

シェイクスピア作品のハムレットを日生劇場で初観劇。
デヴィッド・ルヴォーによる演出。
翻訳はちくま文庫版で有名な松岡和子先生。
主演の市川染五郎さんは3代にわたって本作を主演。

感想のまとめ

松岡和子先生の翻訳が素晴らしく、セリフの映える公演。
市川染五郎さんのハムレットは喋る姿で人を引き込む素晴らしさ。
柚香さんのガートルードは繊細な芝居が必見。
歌舞伎役者と宝塚出身は宮中での異物感、初舞台の女優は無垢さと孤立を演出するように、メンバーのバックボーンによる違いをあえて揃えない演出も印象的。
意図された不揃いを楽しめる公演。
一方で、メンバーで質の差も感じてしまう事もあった。

以下ネタバレ注意

感想

  • 舞台と翻訳の相性が素晴らしい
    本作の翻訳はちくま文庫版で有名な松岡和子先生。
    現代的でわかりやすく、セリフの映える翻訳が素敵だった。
    長いセリフも頭に入りやすく、滑舌の良い役者が映えていた。

  • 市川染五郎さんのハムレットが素晴らしい
    兎にも角にも主演の市川染五郎さんが素晴らしかった。
    非常に長く膨大なセリフを滑舌良く演じる姿に引き込まれた。
    喋る姿で人を引き込む素晴らしいハムレットだった。

  • 柚香光さんのガートルードも素晴らしい
    宝塚退団公演 (アルカンシェル) 以来の柚香さんも素晴らしかった。
    クローディアスとのやり取りを見て、初めて理解できた気がした。
    ハムレットを案じる母であり、デンマークの王妃でもある。
    そんな王妃をとても繊細かつ理解しやすく素晴らしかった。
    声もよく通り、気品ある立ち振る舞いと合わせて素敵だった。
    杯の毒を飲んでしまった後の演技は必見で、最後まで見入った。
    ハムレットを気遣い、決闘の裏で毒に苦しむ姿が印象的。
    宝塚時代の細やかな芝居の面影が懐かしかった。

  • 若いメンバーは個性が役に活きている
    若手メンバーはその個性が役柄に反映される演出に感じた。
    横山賀三さんのホレイショーはセリフも演技も映えていて印象的。
    誠実で光を感じさせる人柄を感じさせる演技が素敵だった。
    當真あみさんは初舞台らしく、とてもニュートラルな印象。
    それがオフィーリアの無垢さと孤立につながっていた。

  • ベテラン陣が心強い
    クローディアスの石黒賢さんとポローニアスの梶原善さんも素敵。
    クローディアスは醜悪な悪役だけではない人間味が印象的。
    ポローニアスは動きやセリフが良い意味で鬱陶しくて素晴らしい。

  • 独特のアレンジ
    時代不詳で不揃いな衣装や小道具が印象的。
    芝居がかった喋りも相まって、異なる世界という印象が強い。
    一座の演じる演目は歌舞伎調で、より不調和を強調する。
    古典作だが現代的で、異なる世界にも感じる不思議な感覚。

  • 現在の国際情勢に合わせたラストのアレンジ
    ラストはフォーティンブラスらノルウェー軍が貴族を銃殺に処す。
    国際情勢を批判する意図だろうが、かなり大胆なアレンジ。
    あえて近代的な衣装を身につけるノルウェー軍も効果的。
    原作と異なり、デンマークの終わりを予感させる幕引き。
    昨今の国際情勢を批判的に扱う演出のように見受けられた。
    無しではないが、個人的には原作のほうが好き。

  • メンバーの不揃いを楽しむべき作品
    メンバーのバックボーンが様々で、あえて揃えていない印象。
    歌舞伎役者、初舞台の女優、宝塚、様々なキャリアの舞台俳優。
    演じ方や発声といった異なる文化が不揃いなままの公演。
    ただし失敗ではなく、意図的な演出になっていた。
    ハムレットや王妃が宮中で特殊な印象につながっていた。
    また、オフィーリアの無垢さにもつながっていた。
    演出の良さもあるが、メンバーで質に差も出たのが惜しい。