プトリカ 2nd.cut ―救いは存在した―

概要

同人サークル「トトメトリ」が手掛けるノベルゲームの第二作目が「プトリカ 2nd.cut」 である。シナリオに定評のあったウグイスカグラのシナリオ・原画・音楽担当が手掛ける作品で、前作に続くシリーズ物である。
第一作目は別記事 (プトリカ 1st.cut) 参照。

感想のまとめ

人を想う愛がとても美しく描かれていて、ルクル先生の新境地が見えた作品といえるだろう。
不幸へ沈んだ反動で強烈なカタルシスを得る構造が抱える、文章量と盛り上がりが比例するという弱点を克服した傑作。
ラガミカをはじめとした新キャラがとても魅力的に描かれていて、レミやラズリエルの成長やアンシュの変化など、既存キャラも丁寧に描かれていた。
音楽やスチルも素晴らしく、見せ場をより美しく、魅力的に演出していた。
続編前提の演出は良し悪しだが、次作がとても楽しみ。

以下ネタバレ注意

感想

  • 今までで一番救いを感じたシナリオ
    クリアした第一印象は、救いに満ちたとても美しい作品だった。
    “「救いのない話が好き」では、まだ足りない人へ” との製品サイト情報から、本作はどれだけ不幸に沈むのかと思ったが、良い意味で裏切られた。
    結末は悲劇かもしれないが、人を想う気持ちは尊く無為にはならない。本作で描かれる愛はとても美しく、心が救われるものだった。

  • 文章量の壁を超えた面白さ
    ルクル先生といえば不幸を積み重ね、最後に盛り上がるシナリオ。不幸の底へ沈めば沈むほど、反動で強烈なカタルシスを得られる。良くも悪くも文量依存だったが、今回はその弱点を解決してきた。
    負の感情を描くことでカタルシスへ導く演出は健在だが、本作では正負どちらの感情もより鮮明に描かれていた。特に人を想う愛の描き方が美しく、マイナスとのギャップだけではないプラスの盛り上がりがとても鮮烈で、文章量を超えた感動を生み出していた。

  • 様々な愛が描かれていて、どれも美しい
    本作では広義の愛がとても美しく描かれていた。個々の例は次項以降で述べるが、甲乙つけ難い良さがある。人を強く想う愛ゆえに、嫉妬や怒りなどの負の感情も強くなるが、表裏を持った感情の描写がとても繊細で美しかった。

  • 執着や復讐、嫉妬の果てに愛を選んだラガミカ
    本作においてラガミカは、魅力的な悪役でありヒロインだった。スファレライトに執着し、セアドラクへの復讐を目論むがどちらも失敗した。再び野望を果たす機会を得たが、兄への復讐よりもレミへの謝罪を選んだことがきっかけで命を落とすことになった。
    執着や復讐、嫉妬という負の感情に囚われた人生の果てに、愛を選んだ後の彼女の生き様がとても美しかった。レミへの想いを伏せ、悪女として散ろうとするラガミカと、その真意を汲み取ってしまう優しいレミが織りなすシーンはスチル、BGMも相まって本作の山場だった。

  • 宿主への愛ゆえに復讐に燃えるレヴィアタンとリムネイラ
    本作で登場するレヴィアタンとリムネイラは、アズラとマレンへの愛ゆえに、二人の復讐に燃えていた。レミとリムネイラがレヴィアタンに立ち向かうシーンが秀逸だった。ただの戦闘シーンではなく、大切な人を失った三名が、戦いの中でそれぞれの答えにたどり着く流れが素晴らしかった。アズラとリムネイラの別れも印象に残っているシーンだった。

  • 凶行に手を染めつつも志は美しかったドラン院長
    サブキャラだが、孤児院のドラン院長も良いキャラクターだった。
    子どもたちのために戻れぬ凶行に手を染め、良心の呵責に潰されそうだった院長。
    彼がリムネイラ、厳密にはマレンの顔を見て自殺した親心は悲しくも美しかった。マレンが親殺しをさせないことで、彼の子どもたちへの偽りない愛が示されていて印象的だった。

  • 大きな区切りを迎えたレミ
    物語を通じて描かれる、レミの成長も素晴らしかった。
    ラズリエルたちの支えもあって聖女の死を乗り越え、ラガミカの愛も受け止め、レヴィアタンとの戦いの中で、イルサの死への答えを見出した。旅の果てに答えを出すと思っていたが、段階を踏んで成長していくレミは、とても魅力的な主人公だった。

  • 世界や自身を学びつつあるラズリエル
    レミ同様に、ラズリエルも人との交流で成長が描かれていた。
    彼女の愛はレミの支えになってきたが、本作では嫉妬の一面も露呈した。負の感情が見えにくい彼女だったが、負の感情を見せることで人間味が増し、さらに魅力的なヒロインになっていた。
    マイペースな彼女の作り出す雰囲気が独特で、ラガミカやセアドラクといった敵役側のキャラクターの新たな一面を引き出してくれるのが面白かった。

  • とても魅力的になったアンシュ
    前作での敵役だったアンシュが、本作では仲間側でとても魅力的に描かれていた。
    レミたちと心を通わせていく中で、優しさや不器用さがさらに深堀りされた。
    レミたちが作った服に身を包み、鏡の前で涙を流すシーンがとても美しくて印象的。
    エピローグの展開やクリア後のタイトル画面を見て、してやられたと思うほど魅力的なキャラクターになっていた。

  • 男性キャラも魅力的
    本作では男性キャラも増え、ラトネーシュやセアドラク、ザカライやザフィールが登場。
    次作以降に見せ場を残しつつ、個性的な印象づけがされている。
    ラトネーシュはウグイスカグラ定番の頼れる悪友枠で、今後の立ち回りが楽しみなキャラ。セアドラクは魅力的なキャラクターなだけでなく、設定的にも重要な立ち位置になりそうで期待している。ザカライやザフィールはまだ描写が薄いので、次作以降でどういった内面が描かれるかが楽しみ。

  • 続編前提の強烈な幕引き
    本作は続編前提で、起承転結の承でまとめて、エピローグで転を突っ込んできた。
    綺麗に美しくまとまった物語だからこそ、あのエピローグは強烈で効果的だった。
    1st.cut よりも印象の弱かった人間の悪意を、最後の最後に全開にしてくる悪辣さが光っていた。被害者のアンシュに愛着を持たせてきたシナリオも、エグさに拍車をかけている。
    インパクトだけでなく、随所に展開された伏線は、次作で上手く回収してくれるだろう。
    個人的には続編商法は好きではないが、続きが気になる幕引き。
    クリア後のタイトル画面にアンシュを選ぶところも、いい意味で悪趣味だった。

  • BGMはいつもながら素晴らしい
    プレイするたびに思うが、BGMはウグイスカグラ時代から素晴らしい。
    中世ヨーロッパ風のファンタジー、教会風な世界観にこの上なくよく似合う。
    ボリュームが増えて、楽曲が増えたことも嬉しい要素。

  • 見せ場のスチルが美しい
    可愛い系の絵柄だが、随所のスチルはとても美しく素晴らしかった。