歌行燈・高野聖/泉鏡花/新潮文庫
―幻想的で艶やかな短編集―

概要


泉鏡花の短編集。幻想的な作品を書く作家と聞いたので初挑戦。

感想のまとめ


独特の文体で描かれる、どこか不気味で幻想的な美しさが印象的。特に女性の艶やかな美しさと、時に美しく時におどろおどろしい情景がとても良かった。女性を美しくそして艶やかに書くことが得意な作家という印象。
特に良かった作品は「高野聖」と「女客」。
「高野聖」は僧のリズミカルな語りとともに、ゆるゆると幻想の世界へ引き込まれる感覚がとても心地よい作品。幻想的で美しく、最初に収録されたこの作品を読んだ時点で大満足。「女客」は燃え上がるわけではなく、ゆらゆらと揺れるような恋愛が良かった。
文体が古めで独特、美しさの中に妖しさ漂う作風で人を選ぶ印象。購入前に中身を少しだけ確認したほうが良いかもしれない。

以下ネタバレ注意

  • 全体の印象
    独特の文体で描かれる、どこか不気味で幻想的な美しさが印象的。特に女性の艶やかな美しさと、時に美しく時におどろおどろしい情景がとても良かった。女性を美しくそして艶やかに書くことが得意な作家という印象。
    読点が非常に多く、最初は読むのに手こずった。慣れてくると語り口調のようにリズミカルな文章もよく思えてくる。
    文体が古めで独特、美しさの中に妖しさ漂う作風で人を選ぶ印象。購入前に中身を少しだけ確認したほうが良いかもしれない。
  • 高野聖
    一番好きだった作品。僧のリズミカルな語りとともに、ゆるゆると幻想の世界へ引き込まれる感覚がとても心地よかった。不気味でおどろおどろしい山道を経て、婦人との艶やかで幻想的なひととき、徐々に婦人に心奪われていく僧の描写がとても印象的で、気付かぬうちに僧と同じく幻想の世界へ引き込まれている感覚がとても良かった。

  • 女客
    燃え上がるわけではなく、ゆらゆらと揺れるような恋愛が良かった。互いの気持ちは同じだけれど、何も変わらず終わるからこそ好きな作品。二人だけの空間が子供の泣き声で終わりを告げるシーンが印象的。

  • 国貞えがく
    一番文学的な作品なのかもしれない。あらすじだけなら単純だけれど、随所に印象的な表現が散りばめられているのはわかる…わかるけれど私の理解力を超えている印象。いつかリベンジしようと思う。

  • 売色鴨南蛮
    長屋での妾と無鉄砲な学生という、美しくない世界で語れる美しい話という構図が好き。宗吉の若さとお千の母性がとても印象的で、あっけなく終わる逃避行と最後のシーンが印象的。特に最後のシーンが好きで、かつて自殺を止めてもらったシーンと同じ構図でやるせなく終わるのが良い。

  • 歌行燈
    尻上がりに面白くなる印象。複数の視点、それも現在と過去の物語が結びついた瞬間のあっという感覚が素敵。艶やかで、そして美しい舞のシーンが印象的で、このシーンが妖しさではなくただ美しい描写がすごく良かった。