CASANOVA 感想
―キラキラと美しい公演
コンデュルメル夫人がイチオシ―

概要


作・演出は生田大和先生による作品。ヴェネツィアを舞台に、希代のプレイボーイ・カサノヴァの半生を描いた作品。華やかで明るく、生き様がとても眩しい公演。

感想のまとめ


キラキラで華やかなひとときを楽しめる公演。人生には恋と冒険が必要だと言い、人生を謳歌していくカサノヴァと、野望にひた走るもうまく行かずに苛立ちを抱えていくコンデュルメル、夫の愛を求めているのに素直になれずに苦しむコンデュルメル夫人と色々な人生を見られるのがとても良い。
イチオシは圧倒的な存在感と気持ちが痛いほど伝わってくる演技、そして高音まで美しい歌声が素敵なコンデュルメル夫人を演じる鳳月さん。誰もが納得する希代の色男カサノヴァを演じる明日海さん、エネルギッシュな演技と透明感のある綺麗な歌声が素敵なベアトリーチェを演じる仙名さんもとても素敵。

観劇日


2019/4/28 (ライブ中継)

記念すべき初の花組は平成最後の公演!

以下ネタバレ注意

感想


全般

  • キラキラで華やか!花組はこんなにキラキラしている組なのかと感激。綺羅びやかな貴族社会、活気に満ちたカーニバルの2シーンの美しさがとても印象的。
  • 楽しさがわかりやすい脚本。気がつけばいくつもの愛が咲き誇っている大団円で、明るく楽しめる素敵な脚本。人生を謳歌するカサノヴァ側と、野心にひた走るコンデュルメル、愛を求めて苦しむコンデュルメル夫人の対比が素敵だった。カサノヴァ側が生を謳歌するほどに、コンデュルメル夫婦の影が色濃くなっていくのがすごく良い。
  • 仮面舞踏会のシーンは華やかで、それでいて素顔が見えないからこそ素敵なシーン。コンデュルメル夫人のダンスの相手に、あぁ…と思ってしまう脚本が好き。
  • バルビ神父を筆頭に、カサノヴァやコンデュルメルもどこかコミカルで、暗くなりすぎない絶妙なバランス。
  • 惚れ薬 (カサノヴァ薬) の使い方が大好き。思わず笑ってしまったけれど、喜劇的で幸せな使い方だったのでとても素敵だと思う。
  • どちらかというと視覚的な美しさが際立つけれど、随所で歌もとても良い。カサノヴァ、コンデュルメル夫人の歌がとても良く、船乗りの歌も必見。
  • 明日海さんのカサノヴァが本当に美しい!常に女性の心を奪い続っていくのも納得の、格好良くそして美しいカサノヴァだった。美貌・歌声・演技とすべてがハイレベルですごかった。
  • コンデュルメル夫人がとても良くて、一番好き。妖艶な姿、愛に飢えた内面、そして終盤で見せる表情と、登場シーンはもれなく視線を奪われてしまうぐらい素敵。高音まで美しい歌声もまた素敵で、目も耳も奪われっぱなしだった。本来は男役と聞いてまたびっくり。いつか男役も見てみたい。
  • ライブ中継のカメラワークはアップが多すぎて少し微妙。けれどライブ中継がなければこの公演を見られなかったので感謝。

個別

  • カサノヴァ (明日海さん)
    本当に美しい!キラキラとした美しさで、女性たちが心奪われるのも納得の色男。ベアトリーチェに会うべく潜入するシーンは色男全開。グラッチェと囁くシーンは仙名さんがリクエストしちゃうのも納得のザ・色男。あれだけプレイボーイっぷりを発揮しつつも、愛に誠実な印象を受けるのだから明日海さんはすごい。色男ぶりも凄いけれど、コミカルな演技や軽やかな殺陣も素敵。カサノヴァらしいあの軽やかな殺陣はお気に入りのシーン。歌も美しい系の素敵な歌声で、明日海さんの歌うシーンが多いのもまた良い。

  • ベアトリーチェ (仙名さん)
    カサノヴァたちを振り回すエネルギッシュな前半での姿と、心の迷いを綺麗な歌声で歌い上げる2つの姿がとても印象的。特に歌声が素敵で、あの透明感のある歌声で歌い上げる姿は本当に鮮烈。あの強烈なカサノヴァの印象に埋もれることなく、むしろその鮮烈な印象を残してくれる姿がとても素敵。この公演で退団されるとのことで、仙名さんの鮮烈なヒロイン像を見られて良かった。

  • コンデュルメル (柚香さん)
    強烈な眼力!一度見たら忘れないような眼が印象的。夫婦仲もうまく行かず、野望もうまく進まない。そんな苛立ちを抱えた演技や声色が素敵。基本苛立っているけれど、目薬をさして嘘泣きするシーンのコミカルさも絶妙。個人的に一番輝いていたシーンは、服毒したコンデュルメル夫人が運ばれてきたシーン。ここでロザリアと呼びかけるところがすごく好き。自分の野望が潰えたときにも見せなかった動揺をみせて、あの眼力も消え失せる。夫人が一命をとりとめたら心から安堵して抱きしめる姿がとても良かった。少し苦しそうな印象だったけれど、あの声質も役柄とぴったりだった。

  • コンデュルメル夫人 (鳳月さん)
    今回の公演で、私が一番好きだった人。愛に飢えた姿が本当に愛おしくて、ずっと見ていたくなるような魅力的な人物だった。明るい作風で一人だけ寂しげな彼女は、鳳月さんの素敵な演技も相まって心に残る素敵な人物。
    第一印象はまさに妖艶。黒魔術に傾倒しているのがひと目で分かる、あの圧倒的な存在感。悪役なのかと思いきや、あの高音まで惚れ惚れするような美声で歌い上げられる切ない歌。ただコンデュルメルに振り向いてほしいがためにひた走る彼女が本当に健気でいじらしく、あの歌で彼女の虜になった気がする。永遠に変わらない虎も夫の愛を失ってしまったトラウマだと思うと、彼女の部屋すら物悲しくなってくる。
    仮面舞踏会では夫婦で踊っていて、もしかしたらこの二人もと希望を持たせたあとで訪れる決定的なシーンが凄まじい。お前と結婚さえしていなければ、とコンデュルメルに言われ、表情も全身も凍りついたのが伝わってくるあの瞬間!彼女の気持ちが痛いほど伝わってくるあの瞬間がとても好き。作品で一番好きなシーンかもしれない。
    ラストシーンでコンデュルメルに抱きしめられる彼女の戸惑い、その後の喜びがまた素敵で、この作品が大団円を迎えて本当に良かったと思う。
    あの美しくて切なげな歌もとても素敵。作品の明るい雰囲気を彼女の色で塗り替えるような、切なく歌い上げるあの歌がとても好き。配信されたら購入予定。
    実はなんて素敵な娘役さんなんだと思っていたので、男役と知ってびっくり。いつもの男役の時の鳳月さんの作品もいつか見てみたい。

  • バルビ神父 (水美さん)
    三枚目な演技が素敵。格好良くなりそうで格好良くならない絶妙なバランスがとても良かった。あまりメインでは映らなかったけれどダンスシーンで生き生きと踊っていた姿が印象的。

  • コンスタンティーノ (瀬戸さん)
    すごく幸せそうな人。コンデュルメルの掌で動くと思いきや、明後日の方向へ突き進み、勝手に幸せになってしまう面白いキャラ。自分で惚れ薬飲んでどうするんだと思いきや、それが思わぬハッピーエンドにつながるのだから面白い。ゾルチ夫人に冒険譚を語るシーンでの、あのコミカルで幸せいっぱいな空間がとても素敵。