Boiled Doyle on the Toil Trail / FROZEN HOLIDAY ―雪組100周年記念のショー作品―

概要

Boiled Doyle on the Toil Trailは生田大和先生による作・演出の作品。コナン・ドイルの前に想像上の人物であるシャーロック・ホームズが現れることで巻き起こされる物語。

FROZEN HOLIDAYは野口幸作先生による作・演出のショー作品。100周年を迎えるFROZEN HOTELを舞台に冬の休暇を描いたショーで、雪組100周年に合わせた作品。

感想のまとめ

Boiled Doyle on the Toil Trailはコミカルさの中にシリアスさも含めた作品で、わかりやすいテーマと明るい作風で親しみやすくなっている。振れ幅の広いドイルを見事に演じていた彩風さんと、名演技が光る奏乃さんが特に素晴らしかった。
FROZEN HOLIDAYはテーマがはっきりしていて、毎年の冬に見たくなる作品。彩風さん最後のショー作品にふさわしく、彩風さんが抜群のショースターぶりを発揮していた。ダンサー揃いの現体制の雪組最後のショー作品でもあり、個性豊かな雪組メンバーのダンスを楽しめる作品でもあった。

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ディミトリ/JAGUAR BEAT ―二本立てでの傑作芝居―

概要


「ディミトリ~曙光に散る、紫の花~」は並木陽先生による「斜陽の国のルスダン」を原作とした作品で、生田大和先生による脚本・演出。13世紀頃のジョージア (グルジア王国) を舞台とした作品で、存続の危機を迎えつつあるジョージアの女王ルスダンとその夫ディミトリを中心とした物語。
「JAGUAR BEAT」は齋藤吉正先生による脚本・演出のショー作品。その名の通りジャガーをモチーフにしたショー作品。

感想のまとめ


ディミトリは全てにおいて非の打ち所がない傑作。主要メンバーが誇る抜群の歌唱力、独特のステップが印象的なジョージアダンス、登場人物の行動原理が丁寧に描かれている脚本といずれも素晴らしかった。終盤でのディミトリ、ジャラルッディーン、ナサウィーの三者三様な掛け合いが特に素晴らしかった。ハマり役揃いだが、礼さんのディミトリ、瀬央さんのジャラルッディーン、天華さんのナサウィー、輝咲さんのチンギス・ハンが特に素晴らしかった。
JAGUAR BEATはスクリーンや電飾を多用したギラギラとしたショー作品。視覚的な派手さと予想できない展開が続く作品で、びっくり箱のように楽しめるか、とっ散らかった作品に感じるかが分かれる作品。

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シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!- / Délicieux 感想
―予備知識なしでも楽しめるエンターテインメント作品―

概要


シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-は生田大和先生の作・演出による作品。シャーロック・ホームズをモチーフにしたオリジナルシナリオで、ホームズ、モリアーティ教授、アイリーンにスポットを当てた作品。
Délicieuxは野口幸作先生によるレビューで、パリのパティシエをモチーフにした作品。

感想のまとめ


シャーロック・ホームズは予備知識無しでも楽しめる、エンターテインメント性に優れた作品。初見に優しく配慮された作品で、オリジナルストーリーや独自の演出による予想外な要素も楽しめる作品になっている。
Délicieuxは華やかさを全面に出したレビュー。いろいろな人が歌ったり銀橋に並んだりと、多くの人に見せ場のある作品。品のないシーンが2箇所ほどある点だけが残念。
少し社会性が高めでクールな格好良さが際立っているホームズを演じた真風さん、持ち前の華やかさ全開でアイリーンを演じた潤花さん、攻めつつもカリスマ性抜群の役作りでモリアーティ教授を演じた芹香さん、ショーでの歌・銀橋などでのパフォーマンスが素敵な留依さんがお気に入り。

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fff/シルクロード 感想
―有終の美を飾る最高のショー―

概要


f f f (フォルティッシッシモ) ~歓喜に歌え!~は上田久美子先生の作・演出による作品。ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが交響曲第九番を書き上げるまでの物語で、ルートヴィヒと彼の前に現れた謎の女を主軸に、ナポレオンやゲーテなどを交錯させつつ、地上と天界を描く物語。
シルクロード~盗賊と宝石~は生田大和先生の作・演出による作品。シルクロードを舞台に、青いダイヤモンドを手に入れた盗賊が宝石の記憶を巡っていく作品。「天空のエスカフローネ」など多くの作品に楽曲提供をしている菅野よう子さんが楽曲提供したコラボ作品。

 

感想


fffは退団公演としては最高で、作品としては歪みを感じる微妙な作品。退団者に見せ場があり、ベートーヴェンをテーマにして「歓喜の歌」を歌うという完璧なテーマと楽曲選択をした作品。一作品としては視覚効果を巧みに使っているが、テーマを押し出すために登場人物が歪んでしまっていてかなり微妙。自分を含め、望海さん・真彩さん体制の雪組を大好きな人にならお勧めの作品。
シルクロードは有終の美を飾る最高のショー。ダスカのシーン、望海さんが燕尾服で踊るシーンなど観たかったシーンをこれでもかと盛り込んできている。菅野よう子さんによる楽曲も壮大で聞き心地がよく、何度でもいつまでもリピートしたくなる作品。

 

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春の雪 (月組) 感想
―不可能への挑戦―

概要


原作はあの三島由紀夫による作品で、「豊饒の海」四部作の第一部。美しい文章・情景を書かせたら右に出る者はいない三島由紀夫が最後に書いた長編小説。生田大和先生が脚本・演出を手掛けた作品。

感想のまとめ


三島由紀夫作品が持つ雰囲気を見事に表現している素晴らしい作品。清顕を演じる明日海さん、聡子を演じる咲妃さん、蓼科を演じる美穂さんを始めイメージ通りの配役で演技派揃い、歌も上手い完璧な配役。清顕と聡子のビジュアルに惚れ惚れするし、蓼科の老獪さ、奔馬を思わせる飯沼の力強さ、本田の実直さなどそれぞれの人物がとても魅力的。脚本も原作の良さが出ている場所が多く、観ていて美しさに感動する素晴らしさ。
ただオリジナル要素は軒並み微妙で、特にがっかりな2箇所さえ無ければ不世出の作品になっていたのに、と歯噛みしたくなる。
まさに清顕という美しさで作品に引き込むような清顕を演じた明日海さん (青年期) と海乃さん (少年期)、その美しい清顕と並ぶ美しさと素敵な歌声で聡子を演じた咲妃さん、美しい歌声と作品のクオリティを上げる演技力で蓼科を演じた美穂さんが一押し。

観劇日


2019/08/31 (ブルーレイ)

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