神捕 (アヤトリ)
―神様との鬼ごっこ―

概要


神様を殺したという不思議な記憶を持つ偉鏡は、彼の願いを叶えに来たという少年・月霞の暮らす村に誘われる。その村には「神様のお声を耳に入れてはならない」「自分の声を神様に聞かれてはならない」「自分の姿を神様に見られてはならない」と3つの禁忌があるという。その村で偉鏡は神様を目撃する。しかしその際に姿を見られた偉鏡と月霞は神様から逃げるため、神様と鬼ごっこをする事になってしまう。同じく禁忌を破ってしまった眞夏と葉雪、花蜜と玉雄という3組のペアの視点から描かれる神様との鬼ごっこ。
「Nightmare Syndrome」 (以下NS) 様の作品。本作はシナリオを委託した作品で、いつものNS作品とはまた違った味のある作品。

感想のまとめ


短いシナリオでコンパクトにまとめ上げられた作品。
作中に漂う神秘的な雰囲気、異形の神様という不気味な要素、終盤の疾走感としんみりと、けれど爽やかに終わる結末がとても良い。

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夢現無双 / クルンテープ (月組) 感想
―武蔵と小次郎の対比が美しい―

概要


原作は吉川英治の小説。脚本・演出は齋藤吉正先生。
夢現無双は天下無双としてその名を轟かせた宮本武蔵の半生を描いた物語。宮本武蔵と彼を慕うお通、宮本武蔵と長馴染みの青年である又八、天下無双として知られる佐々木小次郎を中心に描かれた物語。
クルンテープはタイをテーマに演じられたエキゾチックなショー。

感想のまとめ


  • 夢現無双
    武蔵の成長や各登場人物の生き様と成長を見ていく作品。人を選ぶ脚本ではあると思う。雄々しくも荒々しい武蔵が成長していく様や、優雅で華麗な小次郎、武芸から遠ざかる又八の生き方の対比がとても素敵。殺陣のシーンは格好良いし、武蔵と小次郎で違った個性があるのが見どころ。人との出会いで成長して印象すら変化していく武蔵を演じる珠城さん、優雅で華麗な小次郎を演じる美弥さん、気品と艶やかさと掴みどころのなさでまさに太夫という海乃さんが一押し。

  • クルンテープ
    キラキラしてエキゾチックな熱量溢れるショー。まさに宝塚の男役と思わせる歌・踊り・燕尾姿の全てが美しい美弥さん、珠城さんと美弥さんの美しいダンスシーン、緑と白の衣装で歌う女性 (輝月さん?) の低音から高音まで歌い上げる素敵な歌、ダイナミックと美しさを兼ね備えたデュエダンが特に見どころ。

観劇日


2019/4/6 (宝塚大劇場)
記念すべき月組初観劇。カンパニーのブルーレイで気になっていた美弥るりかさんの退団公演。最初で最後の美弥るりかさんを見るチャンスと思い観劇。

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夏の夜の夢・あらし/シェイクスピア
/福田恆存 訳/新潮文庫
―世界の美しさに感動する作品―

概要


誰もがご存知シェイクスピアによる作品。「夏の夜の夢」は比較的初期に書かれた喜劇。「あらし (テンペスト) 」は晩年に書かれたロマンス劇。
「夏の夜の夢」はアセンズ (アテネ) を舞台に、妖精の王オーベロンと妖精の女王タイターニアとの間の夫婦喧嘩に巻き込まれた何組かの男女の物語。妖精王の命を受けた妖精パックが惚れ薬を使う相手を間違えたことで事態が混迷していく、幻想的でハチャメチャな恋愛喜劇。
「あらし」は孤島を舞台に、弟の裏切りにより追放されたミラノ王プロスペローが魔法の力で弟たちの乗った船を難破させ、島へ漂流させるところから始まるロマンス劇。シェイクスピア晩年の作品で、多くの喜劇・史劇・悲劇を書き上げたシェイクスピアの集大成にふさわしいロマンス劇。

感想のまとめ


「夏の夜の夢」は妖精が歌い踊るシーンが幻想的で、気づけば大団円を迎えているというまるで狐につままれているかのような作品。
「あらし」はまさにシェイクスピアの集大成。四大悲劇を読んでから読んでほしい作品。幻想的で、情熱的な愛があり、裏切りや疑心があり、言葉の掛け合いも小気味よい。結末の美しさは必見で、多くの喜劇・史劇・悲劇を経たシェイクスピアがこの結末を書いた事実がとても好きになる。

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ファントム (雪組) 感想
―圧倒的な歌と演技に涙が止まらない公演―

概要


原作はガストン・ルルーのオペラ座の怪人。本作の脚本はアーサー・コピット。潤色・演出は中村一徳先生。
オペラ座に憧れる少女、クリスティーヌが歌いながら楽譜を売っているところに、オペラ座のパトロンであるシャンドン伯爵が通りかかる。その歌声を高く評価したシャンドンはオペラ座でレッスンを受けさせるべく、支配人キャリエールへ宛てた紹介状をクリスティーヌへ渡す。
オペラ座にやってきたクリスティーヌだがキャリエールは既に解任されていて、新しい支配人ショレの妻であるカルロッタの衣装係にされてしまう。
仕事の合間に歌うクリスティーヌの歌声を聞いたファントムは彼女の歌声に感動し、彼女がオペラ座で歌えるようレッスンを施す。そして団員たちが集うビストロでクリスティーヌがその才能を開花させた時、物語は大きな変化を迎える。

感想のまとめ


圧倒的な歌と演技が調和して、涙の止まらなくなる公演だった。
歌による表現を極めたかのような、エリックを演じる望海さんとクリスティーヌを演じる真彩さん、歌も凄いが眼差しや演技でも泣かせてくる彩風さん、少女漫画から抜け出したかなようなキラキラしたオーラのシャンドンを演じる彩凪さん、どうしようもない小者だけど憎めないショレを演じる朝美さん、オペラ座を支配するような演技でカルロッタを演じる舞咲さんが凄く良い。
一押しは彩風さんのキャリエールで、特にビストロでの表情、第二幕では登場シーン全てが凄く良い。

観劇日


2018/11/18, 2018/12/11 (宝塚大劇場)
2019/1/3 (東京宝塚劇場),
2019/2/10 (ライブビューイング) 
初の東京宝塚劇場、千秋楽 (ライブビューイング) は雪組公演。

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パパ・アイ・ラブ・ユー (専科) 感想
―笑いに溢れた芝居と優雅で格好良いショー―

概要


原作はイギリスの作家レイ・クーニーの”It runs in the family”。専科の轟さん主演で、専科と宙組による公演。脚本・演出は石田昌也先生。
自身の将来が決まる重大なスピーチを目前に控えた医師デーヴィッド・モーティマーのもとに、かつての恋人ジェーンが現れる。彼女の口から隠し子の存在を知らされたデーヴィッドは事態を隠そうと嘘を重ねていくが、そのせいで大騒動になっていくコメディ作品。

 

感想のまとめ


最初から最後まで笑いに溢れた素敵な公演。決して下品にならないのはさすが宝塚。皆さんお芝居上手で決してバタバタ喜劇にならず、しっかりと見どころを見せてくれるところがまた素敵。
どうしようもなく情けないデーヴィッドを演じる轟さん、凄まじい風貌だけれどいい子だとすぐに分かる演技と目が素敵なレズリーを演じる留依さん、コミカルな演技の中でも誠実さがにじみ出ているヒューバート (悠真さん) が特に素敵。
ショーでは一転して優雅で軽やかなダンスと素敵な歌声を披露する轟さん、幕が下りるまでレズリーを忘れない留依さんが凄く素敵。

観劇日


2019/2/10 (宝塚バウホール)
初の宝塚バウホール公演も轟さん主演。

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