グランドホテル / カルーセル輪舞曲 感想
―演技派が織りなす傑作の群像劇―

概要


グランドホテルはヴィッキー・バウムの原作をミュージカルした作品を、宝塚として上演したもの。脚本はルーサー・ディヴィス。ベルリンの高級ホテルを舞台に、様々な人が織りなす群像劇を描いた作品。
カルーセル輪舞曲は稲葉太地先生作・演出で、様々な国を回っていくかのようなレビュー。

感想のまとめ


ストーリーがとても面白い群像劇。珠城さんのフェリックスが見せる人間味や、愛希さんのエリザヴェッタや美弥さんのオットーが見せる変化、海乃さんのフラムシェンと華形さんのプライジングが見せるやり取りなど、どこを見ても芝居上手な人が揃っていることがとても印象的。


以下ネタバレ注意

感想


  • 見応え十分な群像劇
    原作が群像劇として名高い作品なので、ストーリーがとても面白い。グランドホテルに訪れた人々が見せる、一期一会の出会いと別れを描くストーリーは見応え充分。盆やセリを使わずに椅子とドアを動かしていく演出も、ホテルのイメージと合っていて良かった。

  • 演技派キャストと会心の脚本が織りなす群像劇
    主役以外にもきちんとスポットライトがあたっている素晴らしい群像劇。主演の珠城さんをはじめ、愛希さんや美弥さん、海乃さんや華形さんなどいずれのキャストも演技派だからこその作品で、脚本もきちんと群像劇として書かれている。主役以外も弱すぎず、きちんと描いているからこその重厚感あるシナリオだった。

  • 華やかなオープニング
    名作はオープニングから良い。登場人物が続々とホテルに入場してくるオープニングは、これから始まる物語への期待を高めてくれる。

  • フェリックスの人間味が良い
    品があって男爵がとても似合う珠城さん。キザな貴族でありながら、悪人になりきれない人間味のある演技がとても良かった。オットーに財布を返すシーンで見せる、泣きそうな顔がとても良かった。

  • エリザヴェッタの変化がすごい
    年齢の高い印象だったエリザヴェッタは39歳と39ヶ月。そんな彼女が恋をすると、まるで10歳以上若返ったかのように印象が変わる。この変化がとても素敵で、愛希れいかさんあっての公演だと思った。

  • オットーの善良さが良い
    華やかさを極限まで抑えて、代わりに善良さを全面に押し出した美弥さんのオットーがとても良かった。グランドホテルに場違いだった彼が段々と生き生きとしてきて、ダンスシーンで弾けていく様がとても良かった。初めてのダンスではフラムシェンの足を踏まないように足元を見続けているなど、善良さを全面に出したオットーだからこそ、最後のシーンがに希望があって良かった。

  • フラムシェンとプライジングのやりとりが濃い
    フラムシェンを求めるプライジングとそれに抗うフラムシェンのやり取りが濃い。華形さんの生唾を飲む様子が伝わってくるような (良い意味での) 下品さと、海乃さんの色気たっぷりのフラムシェンが醸し出す雰囲気が印象的。フラムシェンは最初は軽い女性という印象だったので、その変化も凄かった。

  • ダンスシーンが良い
    珠城さんと愛希さんのデュエットダンス、美弥さんや海乃さんの楽しげなダンスシーンも良いが、バックで踊るメンバーのダンスも良い。ビシッと揃ったダンスで、ストップモーションもスローモーションもお手の物。高級ホテルに相応しい格調高さは、バックの良さだと思った。

  • 運転手のならず者感が良い
    宇月さんの演じる運転手は、ホテルの宿泊客とは雰囲気が違う悪役。あの悪人ぶりやタバコを吸いながらも抜群の滑舌は流石。