ピガール狂騒曲/WELCOME TO TAKARAZUKA 感想
―匠の技によるドタバタ喜劇―

概要


WELCOME TO TAKARAZUKAは和物レビューで、坂東玉三郎さんが監修。クラシック曲に合わせた舞踊が特徴。
ピガール狂想曲は原田諒先生作・演出。シェイクスピア喜劇の「十二夜」をモチーフに、舞台を1900年のパリ・ピガールに移した作品。十二夜がモチーフなので、主演の珠城りょうさんは男女2役を演じる作品。

感想のまとめ


WELCOME TO TAKARAZUKAは華やかで身のこなしの美しさが素敵なレビュー。何度も繰り返されて覚えやすい主題歌と松本さんのシーンが特に印象的。
ピガール狂騒曲はシェイクスピア作品らしいドタバタ喜劇で、テンポの良い掛け合いと小芝居が楽しい作品。珠城さんが歩き方や仕草までガラッと変えて、一人二役を演じ分ける姿が印象的。暁さんを中心としたダイナミックなダンスも見どころ。


以下ネタバレ注意

感想 (WELCOME TO TAKARAZUKA)


  • 華やかで優雅なレビュー
    視界には華やかな衣装と一糸乱れぬ舞姿、耳に入るのはクラシック曲ととても品のあるレビュー。ダイナミックではないが、一挙一動の細やかな動きまで美しいレビュー。

  • 上半身のぶれない姿が凄い
    珠城さんを代表として、移動するときに上半身が全くぶれない。まるでスライドするかのように移動する姿がとても印象的。

  • バッチリ印象に残る主題歌
    これを覚えて帰れと言わんばかりにフレーズを繰り返すので、帰る頃には主題歌を口ずさめるはず。主題歌は印象的な方が好きなので、この配慮が好き。

  • 松本さんのシーンが綺麗
    今回の公演で退団する松本さんのシーンはとても綺麗。観客の心を掴むのに派手な動きはいらない、と言わんばかりの細やかな舞いがとても素敵だった。

  • 光月さんの座頭が凄い
    106期生が口上を述べるシーンでは、光月さんがご挨拶。歌舞伎を見に来たかなような座頭ぶりで素敵だった。

感想 (ピガール狂想曲)


  • シェイクスピア作品の良さを残した脚本
    シェイクスピア喜劇のドタバタ感を残しつつ、ウケの悪そうな所は削る。ストレスフリーでシェイクスピアの雰囲気を楽しめる仕上がり。流石は原田先生と思う脚本。

  • 珠城さんの一人二役が凄い
    この作品のキーは珠城さんの一人二役。立ち姿や歩き方、仕草、声色を変えてまるで別人のようになっている。ジャックのときの中性的な印象と、ヴィクトールのときの御曹司ぶり。どちらも美男子なのに印象がガラッと変わっていて、珠城さんの演技力を堪能できる。

  • 掛け合いのテンポが良い
    芝居上手な月組らしく、掛け合いのテンポがとても良い。コミカルな動きと絶妙なテンポに思わず笑ってしまう面白さ。鳳月さん、光月さん、千海さん、風間さんの台詞回しと動きが特に素敵。

  • ダンスシーンの見応え充分
    暁さんを中心としたダンスシーンは見応え充分。軸が全くぶれることなくダイナミックに踊る暁さんは必見。

  • 見せ場の有無がはっきりとわかれている
    作品としては面白いけれど、人によって見せ場の有無が別れている印象。もっと出番があっても良いのでは?と思う人がチラホラといた。原田先生はもしかしたら小劇場が得意なのかもしれない。

  • 随所にみられるコロナ対策
    オーケストラが生演奏ではなく録音、デュエットダンスもそれほど密着しないなど随所に感染症対策の影響がみられる公演。残念だけれど生演奏は当分先なのかもしれない。

  • 蒼真さんが凄い
    十二夜がベースなので、最後はヴィクトールとジャンヌの兄妹が対面する。この時のヴィクトール役を演じる蒼真さんが、ほぼ完璧に珠城さんのヴィクトールに合わせている。雰囲気や仕草、音声に合わせた口パクまで完璧。作品のネタバレになる上に、プログラムにも記載されていないせいで、大きくアピールしにくいのが惜しくて仕方がない。

以下個別

  • ヴィクトール/ジャック (ジャンヌ) (珠城さん)
    完璧に別人に仕上がっている一人二役がすごい。歩き方や仕草、声色のすべてを変えて、快活で男らしいヴィクトールと中性的で可愛さのあるジャックを演じ分けていて素敵だった。もう少しヴィクトールの比重が大きくても良かったかもしれないけれど、今回の珠城さんはとても新鮮だった。

  • ガブリエル (美園さん)
    出てきた瞬間ヒロインだとわかる華のある美人で、歌もよく響いていてとても良かった。芯のあるヒロインぶりがとても似合っていて、夢現無双の時から良い方向に印象が大きく変わった。

  • シャルル (月城さん)
    コミカルさと熱さの両方を持っていて、その切替が良かった。歌もとても良かったので、おそらく次期トップとして盤石の二番手という印象。

  • ミシェル (光月さん)
    くどいぐらい濃いキャラなのに動きもセリフも自然なので流石。どんな役でも光月さんなら安心という印象。ひそひそと話す時の手の使い方まで自然なオネェキャラで、笑いを取るときだけオーバーリアクション。その演じ分けがとても良くて、2回目の観劇はずっとオペラグラスで眺めていたぐらい素敵だった。

  • ウィリー (鳳月さん)
    アドリブでもいじられていたけど足が長い!完璧なスタイルなのに、動くと三枚目なのは流石の演技力。動きや表情、セリフの間が絶妙で面白いので、出てくるのが楽しみだった。

  • マルセル (輝月さん)
    ムーラン・ルージュへ入る際に入場料を聞いてみたり、どこか小悪党感ある悪役ぶりが作品の雰囲気とあっていてよかった。

  • レオ (暁さん)
    今回はほぼダンサーなので少し役不足だがダンスシーンは必見。長い手足を活かしてダイナミックかつ華やかに、そして体の軸が全くぶれずに回り続ける姿がとても綺麗。フィナーレでの歌も素敵だったので、見せ場が少ないのは勿体なかった。

  • ボリス (風間さん)
    今回の公演ではとても美味しいポジション。熱意が空回りしているコミカルさが素敵で、ついつい見てしまう台詞回しと演技が素敵。出てきただけで笑いを取る、女装感たっぷりな女装も必見。

  • ヴィクトール (蒼真さん)
    ジャンヌとヴィクトールが二人が舞台に立つときは、蒼真さんがヴィクトール役。ヴィジュアルもさることながら、雰囲気の似せ方がとても上手い!さらに珠城さんの音声に合わせた口パクは、本当に喋っているかのような職人技。プログラムに名前は出ないけれど、本公演を成立させる立役者。