炎のボレロ/Music Revolution! New Spirit 感想
―王道は良いもの―

概要


「炎のボレロ」は柴田侑宏先生作で中村暁先生演出の作品。メキシコを舞台に、フランス支配下の政府に全てを奪われた貴族の青年アルベルトが、祖国の独立を取り戻すために奮闘する物語。
「Music Revolution! -New Spirit-」は中村一徳先生作・演出で、2019年度公演の同ショー演目をリニューアルした内容。

感想のまとめ


「炎のボレロ」は古き良き王道を行く作風でキャラとキャストを楽しむことのできる作品。伸びやかで綺麗なダンスシーンと久城さんの悪役ぶりが印象的。
「Music Revolution! -New Spirit-」は見応え抜群なダンスと成長著しい歌唱を楽しめる作品。歌って踊ってのフル回転で抜群の安定感を見せた彩風さん・朝美さん、歌が飛躍的に上手くなった懸さん、出だしから聞き惚れる久城さんが特に印象的。

以下ネタバレ注意

感想

―炎のボレロ―

  • 古き良き王道系
    古き良きを地で行く王道系。王道から逸れずに進む脚本は安心でストレスフリー。スッキリした気分になれるところも良い。

  • キャラクターが立っている
    キャラクターが立っていて、キャラとそれを演じるキャストを楽しむことのできる作品。
    明るいアルベルトと影のあるジェラール、立場の違うドロレス伯爵とブラッスール公爵など、対比関係でよりキャラが立っていた。

  • 目を奪われる伸びやかで綺麗なダンス
    彩風さんと潤花さんのダンスは相性抜群。長い手足を活かした伸びやかで綺麗なダンスで、リフトは重さを全く感じさせない軽やかさ。どのダンスも見応えたっぷり。

  • 彩風さん・潤花さんは正統派がとても似合う
    人の良い人柄を出すのがうまい彩風さんと快活なタイプが得意な潤花さんなので、正統派なこの作品がとても良く似合っていた。

  • 久城さんの悪役ぶりが凄い
    久城さんが活き活きと悪役を演じているのがとても印象的。セリフごとに声色を変えて悪役ぶりを見せつける久城さんがとにかく素敵。撃たれた後に微動だにしない死に様も必見で、動と静どちらも凄い演技。

―Music Revolution―

  • 壬生義士伝版とは別物
    壬生義士伝のと比べるとまるで別のショーなので、観ていて新鮮だった。
  • 見応えたっぷりのダンスシーン
    彩風さんと潤花さんのコンビに合わせてダンスが多めで見応え十分。いつもの雪組公演よりも伸びやかなダンスが印象的で、伸びやかなダンスが好きな人におすすめ。
  • 成長が目立つ歌唱シーン
    彩風さんと朝美さんは踊って歌ってのフル回転でも抜群の安定感で、聴き応え抜群。特に懸さんの歌が上手くなっているのが印象的。歌の上手な奏乃さんや久城さんが脇を固めているので、男役陣の歌がとても良かった。
    娘役は有栖さんのエトワールがとても綺麗だったのが印象的。娘役の歌い継ぎのシーンで総崩れ気味だったので、そこだけが惜しかった。
  • デュエットダンスは変則的
    デュエットダンスは彩さんを交えて3人体制で、みちるさんと潤花さんで雰囲気が変わるのが印象的。重さを全く感じさせない、彩風さんと潤花さんのリフトがとても印象的。

【個別】

  • 彩風さん
    歌が安定していて、どのシーンも聴き応え抜群。デュエットでは潤花さんをリードしているところも印象的。苦手なレベルを得意なレベルに引き上げて安定感を増した印象なので、今後歌唱シーンが増えていくことも楽しみ。
    ボレロでの役柄は燃えるような、というよりは暖かいタイプ。育ちの良さや人柄の良さが全面に出ていて、慕われるのも納得の好青年。正統派もバッチリ似合っていた。
    ショーでは歌って踊ってとフル回転でも抜群の安定感。望海さんから良い影響を受けているなぁ、と思った。

  • 朝美さん
    前作では女性役だったので、久々に観る男役。歌よし芝居よしビジュアルよしでバッチリの仕上がり。いつもよりもギラギラ感が抑えめで、それがまた役に合っていてよかった。

  • 潤花さん
    思わず目を奪われるダンスと、快活なヒロインぶりがとても素敵。歌も高音以外は良いので、高音にもう少し強くなればという点が今後の楽しみ。ダンスとヒロインらしさは既に目を奪われるレベルなので、宙組で更に素敵な娘役になるのが楽しみ。

  • 彩さん
    ジェラールを好きでたまらないというのを全面に出した可愛らしさと、男役をよく見せてくれる歌が素敵。娘役らしい役者ぶりがとても好きなので、今後の公演も楽しみ。

  • 奏乃さん
    久城さんとのシーンがとても良かった。上手い人同士のシーンはこんなに見ていて楽しいのか、と思った。ショーでは場を引き締めてくれる素敵な歌声が印象的。

  • 真那さん
    癖の強すぎない演じ方で、そこにいることが自然と思える演じ方が印象的。

  • 久城さん
    演技も歌も大活躍。楽しんでるなぁ、と思うような悪役ぶりがとても素敵で、声色の使い分けがとても良かった。出だしから聞き惚れる歌声も堪能できたので、ボレロ組にいてくれて本当に良かったと思う。

  • 縣さん
    個人的なMVPで、この公演で飛躍したと思う人。歌が飛躍的に上手くなっていて、得意のダンスと合わせてとても格好良かった。ふと目が行くと懸さんがいるぐらい、目を奪われる存在だった。

  • 叶さん
    登場シーンで幸薄そう、と思ったら本当にその通りだったので、雰囲気作りが上手。良い人そうで、周りが見える聡明さが有りつつ、けれど自己主張は控えめ。ちょっとした仕草からも良い人そうな所が伝わってきたので良かった。