RRR × TAKA”R”AZUKA ~√Bheem~ / VIOLETOPIA ―良作と意欲作―

概要

RRRは2022年に公開されたインド映画を元とした作品で、谷貴矢先生による脚本・演出。イギリス占領下のインドを舞台とした作品で、総督に攫われた少女を助け出そうと画策するビームと、イギリス警察に所属するインド人のラーマとを中心とした物語。
VIOLETOPIAは指田珠子先生による作・演出のショー作品。

感想のまとめ

RRRはダンスシーンの見応え抜群。綺麗にまとまったストーリーも強みで、ショーと芝居との中間に位置するようなバランスの作品だった。
VIOLEATOPIAは芸術性重視のショーで、普段の宝塚というよりも美術館の企画展示のような作品。幻想的で美しいシーンが多く、不気味なシーンが強烈なアクセントになっていた。個人的には初見では合わなかったが、この意思は尊重したい作品。

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運命予報をお知らせします
―荒削りだが恋心に向き合った意欲作―

【プレイまで】

「運命予報をお知らせします」はヨナキウグイスによる作品。現在は活動していないブランドだが、ウグイスカグラで活躍されていたルクル先生がシナリオを手掛けている。

本作を入手したのは2017年頃まで遡る。当時はルクル先生の所属するウグイスカグラが飛ぶ鳥を落とす勢いで、「紙の上の魔法使い」、「水葬銀貨のイストリア」、に続いて第三作目の「空に刻んだパラレログラム」を制作していた。「紙の上の魔法使い」に心奪われ「水葬銀貨のイストリア」を楽しんでいたこともあり、「空に刻んだパラレログラム」が発売される少し前に本作を購入した。

しかし「空に刻んだパラレログラム」があんまりな作品だったので心が離れてしまい、本作も積んだ状態となっていた。

断捨離中に気が変わり、せっかく購入した作品だからプレイすることとした。

【感想のまとめ】

問題点も多いがテーマに真摯に向き合った意欲作でもある。
恋心にきちんと向き合ったという点では非の打ち所のない作品だが、伏線が巧みすぎて真逆の印象をもたれるリスクすらある。
メタ要素が強いが空回り気味で、メタで提示したテーマに対する回答には肩透かしを食らった。
サブキャラが強く、ヒロインが弱い作品でもあった。
好きになったキャラは林檎や観月、嫌いになれないのは帚木。

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オペラ座の怪人 (ケン・ヒル版) ―最初のミュージカル版―

【観劇まで】

2023年12月に X (Twitter) でプロモーションが流れてきた。2024/1/17から1/28にかけて、ケン・ヒル版のオペラ座の怪人が東急シアターオーブで上演されるという内容だった。

人生初の英語版ミュージカル観劇を好きな原作作品で迎える、そんな絶好のチャンスを逃さないよう、すぐチケットを購入した。

オペラ座の怪人といえば様々な作品が存在するが、原作小説、アンドリュー・ロイド・ウェバー版の映画とロンドン公演 (BD) 、 Arthur Kopit版 (宝塚) を視聴していて、どれも素晴らしい作品で、特に宝塚雪組版は現雪組トップスター彩風咲奈さんのファンになった作品でもある。長年愛しているオペラ座の怪人の新たな一面を楽しめる日を心待ちにしつつ、2024年の当日を迎えた。

余談だが、オペラ座の怪人は原作、アンドリュー・ロイド・ウェバー版、Arthur Kopit版とで大きく異なる作品である。ケン・ヒル版も大胆なアレンジがあると予想していたが、英語公演+字幕表示ならばなんとかなるだろうと予習はせずに当日を迎えた。

【感想 (ネタバレなし)】

原作の雰囲気を残したアレンジで、神出鬼没で恐ろしいファントムを体験することができた。
ミステリー要素が強く、物語がどう進んでいくかを楽しめる作品となっている。コメディ要素も強く、シリアスな場面でも差し込まれるのは人を選ぶ要素かもしれない。
楽曲はオペラやアリアをベースとしていて、オペラ風な歌唱シーンが素晴らしかった。特にポール・ボッツの歌唱が素敵だった。
英語がはっきりしているので比較的聞き取りやすく、簡潔にまとめられた字幕もあるので初の英語版ミュージカルにもおすすめ。

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Boiled Doyle on the Toil Trail / FROZEN HOLIDAY ―雪組100周年記念のショー作品―

概要

Boiled Doyle on the Toil Trailは生田大和先生による作・演出の作品。コナン・ドイルの前に想像上の人物であるシャーロック・ホームズが現れることで巻き起こされる物語。

FROZEN HOLIDAYは野口幸作先生による作・演出のショー作品。100周年を迎えるFROZEN HOTELを舞台に冬の休暇を描いたショーで、雪組100周年に合わせた作品。

感想のまとめ

Boiled Doyle on the Toil Trailはコミカルさの中にシリアスさも含めた作品で、わかりやすいテーマと明るい作風で親しみやすくなっている。振れ幅の広いドイルを見事に演じていた彩風さんと、名演技が光る奏乃さんが特に素晴らしかった。
FROZEN HOLIDAYはテーマがはっきりしていて、毎年の冬に見たくなる作品。彩風さん最後のショー作品にふさわしく、彩風さんが抜群のショースターぶりを発揮していた。ダンサー揃いの現体制の雪組最後のショー作品でもあり、個性豊かな雪組メンバーのダンスを楽しめる作品でもあった。

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彩風咲奈さんの退団発表

2023年12月26日に、彩風さんの退団予定が発表された。2024年10月13日のベルサイユのばら―フェルゼン編―の千秋楽が、彩風さんの退団日となった。

公式HPに記載された記者会見でのコメントは、ひたむきでありながらも細やかな配慮の行き届いたものであり、とても彩風さんらしく感じられた。この方のファンで良かった、そう思える会見内容だった。

私にとって彩風さんは所謂贔屓であり、初めて贔屓の退団となった。

私が彩風さんの魅力に惹かれたのは、忘れもしない「ファントム」のキャリエールだった。ビストロでクリスティーヌの歌声にベラドーヴァを思い起こされた時の表情や、エリックに向ける優しげな表情が素敵で、この公演から今日までずっと、彩風さんを中心に観てきた宝塚生活だった。

彩風さんはどの作品も素晴らしかったが、トップ就任後の役柄の幅広さは目を見張る物があった。次はどんな作品でどんな演技を観られるだろうか、そんな楽しみを与えてくれるトップスターだった。そんな彩風さんが最後に演じる役は、宝塚でも歴史のある「ベルサイユのばら」のフェルゼンとなった。彩風さんが宝塚を目指すきっかけとなった作品も「ベルサイユのばら」らしいので、退団への道筋としては完璧だろう。幅広い役柄を見事に演じてきた彩風さんが、最後に古典的な正統派をどう演じるか。寂しさもあるが期待に胸が高鳴るのも事実である。

個人的な持論だが、彩風さんはこれまでも代表作といえる作品に恵まれてきたので、退団公演は彩風さんご自身の思い出深い「ベルサイユのばら」が最適だろうと考えている。ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイルはまだ観劇できていないので除外するが、それでもつらつらと作品を挙げることができる。
クラシカルな作品は「ヴェネチアの紋章」、彩風さんにしか演じられない作品は「夢介千両みやげ」、大作は「蒼穹の昴」、ミュージカル作品は「BONNIE & CLYDE」、ショーは「Sensational!」と「ル・ポァゾン」。トップ就任後だけでもこれだけ素晴らしい作品に出会えたので、後はボーナスステージだと考えてる。

その時期が近づいたら寂しがるのだろうが、ファンにできることは日々を楽しむことだけなので、残りの公演を心のままに楽しんでいきたい。