かもめ・ワーニャ伯父さん / チェーホフ / 神西清 訳/ 新潮文庫
―かもめのラストシーンは必見―

概要


かもめ・ワーニャ伯父さんはロシアのチェーホフによる作品。かもめ、ワーニャ伯父さん、三人姉妹、桜の園はチェーホフの四大戯曲と呼ばれる作品で、本書はそのうち2作を収録している。
「かもめ」は作家志望のトレープレフ、女優志望のニーナ、人気作家のトリゴーリン、大女優でトレープレフの母アルカージナなどの登場人物の人生を描いた群像劇。ニーナのモデルなど、チェーホフ自身の身の回りで起こった出来事が随所に散りばめられている作品でもある。
「ワーニャ伯父さん」は退職した大学教授の屋敷を舞台にした作品で、登場人物たちの人生観が絡み合う群像劇である。

感想のまとめ


「かもめ」はチェーホフらしい静的な物語で、ゆったりと腰を据えて読むのがおすすめの作品。ニーナとトレープレフが最後に会話するシーンの美しさは必見で、芸術的な名シーン。登場人物たちの噛み合わなさ、作品を通じて語られる人生への希望が魅力の作品。
「ワーニャ伯父さん」はワーニャ伯父さんの生き様に無情さを感じる作品で、どこまでもやるせない。やるせなさの果てに見出した結論が魅力の作品。

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オネーギン/プーシキン/池田健太郎 訳/岩波文庫 感想
―美しい情景に引き込まれる作品―

概要


ロシアのプーシキンによる作品で、韻文小説。池田健太郎先生による翻訳は、韻文ではなく散文形式。
プーシキンを思わせる作者が、読者へ語りかけながら進んでいく独特の形式。オネーギンはタチヤーナの恋心を無下に断るが、何年か後に再会した際に彼は恋に落ちてしまう。情熱的にのめり込んでいくオネーギンだが、彼の恋は実ること無く終わりを迎えてしまう。

感想のまとめ


綺麗な情景の作品で、めぐる季節にロシアの文化、人々の心情の描き方が美しくて心地よかった。派手な物語がなくても引き込まれる、そんな素敵な作品。散文形式の翻訳は情景に浸りやすく、自分好みの翻訳だった。一気に読むよりも、じっくりと味わいながら楽しみたくなる作品。
タチヤーナがとても魅力的に書かれていて、彼女の変化していく描写がとても良かった。
オネーギンは前半の塞ぎがちで冷たい美青年ぶりと、後半での縋るように情熱的な愛を見せる姿のギャップがとても素敵だった。

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