ゲルニカ―仕方なくてやるせない―

概要


Nightmare Syndromeによる作品。NS作品でも屈指の鬱ゲーでリメイク前の作品。
青年は獣のような唸り声から逃げるように、わけも分からず遊園地内の城に駆け込んだ。そこは大人を敵視している子どもたちによる未完成の国だった。子どもたちは青年を殺そうとするが、何故か青年は体をバラバラにされても死ななかった。死ぬことも国を出ることもできない青年は、子どもたちが対処法を見つけるまで国内で暮らすことになる。そんな不思議で不条理な国での、青年と子どもたちの物語。

感想のまとめ


不条理で救われない超弩級の鬱ゲー。絶望感に満ちたゾクゾクするような演出が光る作品。呆然としてしまうような、あまりにもやるせない結末はオンリーワン。マリア、メイとビースト、ダフネがお気に入り。


以下ネタバレ注意

良かった点


  • やるせなさはピカイチ
    アンネたちと交流をしていく中で、彼らの抱えている絶望が見えてくる。しかしコマドリはそれを知ることもなく、彼らの最期に立ち会うことすらない。TRUEではアンネの愛や国の真相が明らかになるが、アンネの言う”戦争”は決して終わらないという救いの無さ。
    何もできず、何も変えられない。そんなやるせなさに満ちたオンリーワンの作品。

  • キャラエンドが良い
    それぞれのキャラクターは、生前の死因になぞらえて退場していく。
    ビーストに噛みつかれて絶望の中死んでいくマリア、生前より報われているカンダタ、自身をビーストの糧にするメイ、心を折られたダフネ。終わり方は様々だけれど、どれも個性が強烈。兄弟で希望と絶望が対極的なメイ・マリアのエンドが特に印象的。

  • ゾクゾクするような演出が良い
    アンネがコマドリに料理の食材を見せるシーン、マリアとメイの関係の終着点、大人を皆殺しにしようとしたダフネの結末など、絶望的でゾクゾクするような演出が光る。不条理で救われない、悲しい世界をこれでもかと展開してくる。

  • エンディングの発生パターンが面白い
    1周目は固定ENDで、2周目以降でTRUEが解禁される。TRUEもBAD ENDもフラグを立てた”翌周”で発生する。救われない物語が何回も繰り返されていることがわかってしまう、心を抉ってくるようなエンディングパターン。

個別


  • コマドリ

    何もできず、ほとんどの事実を知らずに終わってしまう主人公。あの扱いを受けながらも皆と普通に接しているので、実はメンタルがとても強いと思う。TRUEで王国の真相とアンネの想いを知るシーンでの会話がとても良い。大人の視点からアンネを救おうとする彼の優しさは、アンネには決して届かないところがやるせない。

  • アンネ&ギフト

    ギャップが強烈なキャラ。ボケているようで毒舌で、コマドリの世話係をしつつ毒を蓄積させる。大人にあまり関心がないように思えて、実は一番敵視している。”仕方ない”と言いながらすべての不条理を耐えてしまう、悲しいキャラ。報われてほしいけれど、アンネの願いが叶うことは決してないであろう点もやるせない。料理の食材を見せてくるシーンはトラウマ。

  • マリア
    消化不良気味ゆえにとても不気味なキャラ。コマドリに向ける強烈な敵意や、メイに向ける歪んだ愛情も相まって、怖くてとても魅力的なキャラ。メイを束縛し、彼を世話することでアイデンティティを確立していた彼が、メイに殺されるシーンで見せる絶望がとても素敵。おともだちの”アガペ”も皮肉が効いていて、自分の本心もメイの本心も知ろうとせず、歪んだ偏愛に生きた彼らしい悲しい結末だった。

  • メイ&ビースト
    二人のイベントは穏やかに時が流れるのでいやし枠。”お食べ”のシーンは絵面も素敵で、二人の関係が集約されていて最高のシーン。生前から制約の多かったメイだからこそ、自由に動ける未完成の国で穏やかに過ごせたのかもしれない。
    そんな穏やかなメイだからこそ、マリアを殺すシーンで見せる闇が良い。歪んだ愛情を捧げるマリアと、その愛情や束縛を邪魔だったと切り捨てるメイ。このシーンでメイが見せる冷たさがとても素敵。

  • カンダタ&アラクネ
    イベントではコメディ風味な癒やし枠。化け物になってでもカンダタを助けたかったアラクネと、そんなアラクネをごく自然に受け入れるカンダタ。メイたちとは違った形で理想的なペアで良かった。

  • ダフネ&ローリエ
    繊細な暴君とその従者。国のために動き続けるリーダーのダフネが大人の思考に染まったせいで、心を折られる展開がとても良い。国を守るためには子どもでは不十分で、大人になると排除される。ローリエは見守ってはくれるけど解決策は授けてくれない。未完成の国の詰み具合をこれでもかと濃縮したペア。