オネーギン/プーシキン/池田健太郎 訳/岩波文庫 感想
―美しい情景に引き込まれる作品―

概要


ロシアのプーシキンによる作品で、韻文小説。池田健太郎先生による翻訳は、韻文ではなく散文形式。
プーシキンを思わせる作者が、読者へ語りかけながら進んでいく独特の形式。オネーギンはタチヤーナの恋心を無下に断るが、何年か後に再会した際に彼は恋に落ちてしまう。情熱的にのめり込んでいくオネーギンだが、彼の恋は実ること無く終わりを迎えてしまう。

感想のまとめ


綺麗な情景の作品で、めぐる季節にロシアの文化、人々の心情の描き方が美しくて心地よかった。派手な物語がなくても引き込まれる、そんな素敵な作品。散文形式の翻訳は情景に浸りやすく、自分好みの翻訳だった。一気に読むよりも、じっくりと味わいながら楽しみたくなる作品。
タチヤーナがとても魅力的に書かれていて、彼女の変化していく描写がとても良かった。
オネーギンは前半の塞ぎがちで冷たい美青年ぶりと、後半での縋るように情熱的な愛を見せる姿のギャップがとても素敵だった。

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肉体の悪魔/ラディゲ/新庄嘉章 訳/新潮文庫 感想
―緻密な心理描写が際立った作品―

概要


フランスのラディゲによる作品で、16歳から18歳の間に書かれた本作。第一次大戦期のフランスを舞台に、人妻との恋に落ちていく少年の物語。他にも戯曲「ペリカン家の人々」、「ドニーズ」が収録されている。

感想のまとめ


主人公の緻密な心情描写が凄まじい作品。矛盾だらけで理屈では説明つかないような言動や思考すら、見事に描写していて圧巻。
ただ情熱的だが暴力的でエゴイズムに満ちている恋愛なので、美しさを楽しむ作品ではなかった。主人公の心情を追うことを楽しめるかが、この作品を楽しめるかの分かれ道だと感じた。個人的には、凄いとは思うけれど好きではない作品。

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エリザベート (96年雪組) 感想
―歌・演技・脚本の全てが凄い傑作―

概要


オーストリアで上演されていたミュージカルで、潤色・演出は小池修一郎先生。オーストリア・ハプスブルグ家の皇后になるエリザベートと、死の象徴でもある黄泉の帝王トートが織りなす愛と死を描いた作品。

感想のまとめ


脚本・演出・演技・歌のすべてが凄まじい作品。歌はこれまで見た中で一番凄いかもしれない。トートの一路さんを始めとしてどの人も凄まじく歌が上手で、「闇が広がる」が一番のお気に入り。
冷たく無機質で、人の傍らにあり続ける死を象徴するトートがとても素敵で、まさに死そのものというトート像があってこその作品だと思う。
どの人も凄まじいけれど、冷たく無機質な死を象徴するトートを演じた一路さん、オーストリア皇帝として年月を重ねていくフランツを演じた高嶺さん、鏡の間で凄まじい美しさを見せるエリザベートを演じた花總さん、ひと目見てヤバいと感じるルキーニを演じた轟さんが特に印象的。

視聴日


2019/9/23 (Blu-ray)

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パルムの僧院 感想
―テンポ良く明快な帰着で爽やかに―

概要


原作はスタンダールの小説。イタリア北部のパルマを舞台とした物語。主人公のファブリス、彼の叔母でありその美貌で宮中に影響力を持つジーナ、ファブリスと恋に落ちるクレリアを中心とした物語。二人のヒロインによる、ダブルヒロイン体制で展開される。

感想のまとめ


恋愛・政治が並行してスピーディーに展開され、テンポの良さが心地よい作品。物語の帰着点も明快で、視聴後は爽やかな気分になる。
ジーナとクレリアのダブルヒロインはタイプの異なる二人が相乗効果で魅力を増している。
純粋無垢なファブリスを演じた彩風さん、圧倒的な存在感でジーナを演じた大湖さんを始め、どのキャストも表情や仕草、役作りがとても良い。
楽曲も印象に残りやすく、特に久城さんの歌うAVE MARIAが素敵。

視聴日


2020/05/01 Blu-ray
原作は未読。

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BanG Dream! (アニメ)
―ライブシーンはシリーズで1番―

昨年視聴したアニメ BanG Dream!の3rd season。アニメとリアルライブによるメディア展開、それも声優が演奏まで行う珍しいスタイルが特徴の作品。

3期は安心の王道ストーリーで、これまでのシリーズで1番良いライブシーンを楽しむことに注力した作品だった。ストーリー的には過去のシリーズのほうが丁寧で好きだったが、ライブシーンの演出はこれまでで一番凝っているので見応えたっぷり。

今期はリアルライブ組の3バンドにフォーカスして、武道館でのライブに向かうストーリー。Poppin’Partyは憧れの大舞台に向けての躍動、Roseliaはイベントを通じての再発見、RAISE A SUILENはメンバーの絆に主軸が置かれていて、王道でシンプルな構成。、最初から最後まで手堅いストーリーで、最後にも3バンド全てに賞を与える徹底ぶり。ほとんど王道を外さないので、安心してライブシーンを楽しむことのできる作品だった。テンポ良く新曲を出すためか、過去のシリーズに比べるとストーリーが少し荒い印象。りみの胸中は最終話の数分で使うには勿体ないぐらいだった。

ライブシーンはかなり気合が入っていて、これまでのシリーズで1番良い。中盤に出てくるMVはメイキング・完成品ともに、バンドのカラーが色濃く出ていて良い。武道館ライブは派手に動かすカメラワークやキャラクターの掛け合いが印象的で、3バンド合同での演奏はこれまでの集大成と言わんばかりの出来栄え。

曲に関しては、RAISE A SUILENが飛び抜けている。プロが来ると違いが出てしまい、格好良い系のRoseliaが割りを食った印象。今回正統派に近い3バンドにフォーカスしているので、作中での評価とギャップを感じてしまった。

今回成長していく主役側の立ち位置はRAISE A SUILENで、他のバンドは先輩側の役割。Poppin’Partyは枷がなく自由に動けていて、先輩としても良い役回り。Roseliaは先輩バンドという美味しい立場だったが、今更それに気づくのか、という内容で脚本面では不遇。

ライブシーン以外では戸山姉妹の会話シーン、マスキング絡みのシーン、ドラマー会議が印象的。
香澄の心情を姉妹の会話を通じて語るシーンでは、音楽という共通項を持たない関係だからこその、会話シーンが好き。主要キャラが全員バンドメンバーなので、バンドを前提としない戸山姉妹は特別な関係かもしれない。全体通じて美味しいポジションだったのはマスキングで、出てくるたびに株が上がる凄いキャラ。気配り上手でありながら周囲を引っ張って、物語を回していくナイスキャラ。息抜き回のドラマー会議では、他バンドのキャラの良い先輩ぶりと、マスキングの後輩ぶりがとても良かった。

今回3バンドにフォーカスしていたが、リアルライブを行うバンドに注力するという方針だとしたら少し残念。せっかく持ち味の異なるバンドを持っているので、次の機会は他のバンドにもフォーカスを当ててくれればと思う。