ファウスト/ゲーテ/高橋義孝 訳/新潮文庫 感想
―「とまれ、お前はいかにも美しい。」―

概要


ドイツの文豪ゲーテが誇る代表作である戯曲。「とまれ、お前はいかにも美しい。」のセリフで有名な作品。新潮文庫は全2巻で2部構成。世界の根源を極めようとするファウストは、悪魔メフィストーフェレスに自分の魂を死後に差し出すことと引き換えに、めくるめくような想いを体験させる契約を結ばせる。ファウストは様々な快楽や憎しみ、幸福や苦悩を経験し、人の生き方とはどうあるべきという答えを見出す。
学生時代に読んだ「若きウェルテルの悩み」に続く2冊目のゲーテ。

感想のまとめ


グレートヒェンとの恋愛とファウストの最期が特に素敵な作品。
グレートヒェンとの恋愛などでめくるめく思いを経験したファウストが、最期に心に思い描いた情景はとても美しい。「とまれ、お前はいかにも美しい。」と言いたくなるのも頷けるような、美しくて尊い情景がとても素晴らしい。
そしてファウストの傍らで、常に彼の願いを叶え続けたメフィストーフェレス。常に隣に悪魔とはいえ彼がいる。だからこそファウストは人生に満足できたのではないか、という気もする。常に傍らに誰かがいる、これもまた幸福なのではないかと思う。

以下ネタバレ注意 “ファウスト/ゲーテ/高橋義孝 訳/新潮文庫 感想
―「とまれ、お前はいかにも美しい。」―” の
続きを読む

壬生義士伝 / Music Revolution! 感想
涙枯れ果てるまで泣き、ショーで元気を貰う

概要


【壬生義士伝】
原作は浅田次郎の人気小説。脚本・演出は石田昌也先生。新選組をテーマにした小説の中でも屈指の人気作品。南部藩出身の吉村貫一郎の生き様を描いた作品で、彼の最期に涙した人も多いであろう名作。
【Music Revolution!】
クラシックからラテン、ジャズなど様々な音楽ともに歌い、そして踊るショー。

感想のまとめ


壬生義士伝で涙枯れるまで泣き、Music Revolution!で元気を貰う。感情を極限まで揺さぶられる素敵な公演。

  • 壬生義士伝
    序盤から終盤まで涙が止まらない演目で、序盤と終盤は完璧としか言えない完成度の高さ。「石を割って咲く桜」が流れるシーンは歌と音楽、演技と演出のすべてが完璧に噛み合った最高に美しいシーン。
    イチオシは家族を想い生きていく吉村を演じる望海さん、組頭として振る舞わなければならないが随所で精一杯の優しさを見せた大野を演じる彩風さん、鬼気迫る演技で小川を演じる久城さん。

  • Music Revolution!
    エネルギッシュに元気になれるショーで、壬生義士伝の後にうってつけ。いろいろな人が活躍していて、歌い継ぐシーンがとても良い。ダンスとても良く、彩風さんたちの軽やかで優雅で楽しそうなダンスシーンと、永久輝さんたちのキラキラと爽やかで激しいダンスシーンがとても良い。燕尾服で歌い継ぐシーンの、早口言葉なのに素敵なメロディーが奏でられていくシーンは必見。

観劇日


2019/06/29, 06/30 (宝塚大劇場)
宝塚観劇2年目での初作品も雪組・大劇場公演。

以下ネタバレ注意 “壬生義士伝 / Music Revolution! 感想
涙枯れ果てるまで泣き、ショーで元気を貰う” の
続きを読む

ドン・ジュアン 感想
―赤いバラの花が印象的―

概要


モリエールの戯曲「ドン・ジュアン」をミュージカル化した作品を、宝塚で上演した作品。酒と女に溺れ、快楽を追い続けるドン・ジュアン。ある日ドン・ジュアンは騎士団長と決闘をして、騎士団長を殺害してしまう。すると彼の前に騎士団長の亡霊が現れて「いずれ愛によって死ぬ」と宣告される。全く意に介さなかったドン・ジュアンだったが、やがて彼は亡霊に導かれて、彫刻家の娘マリアと出会う。そこで彼は愛を知り、騎士団長の呪いに身を苛まれていくことになる。
脚本・演出は後に「ひかりふる路」、「CASANOVA」などを手がける生田大和先生。

感想のまとめ


ドン・ジュアンという愛を知らなかった男が愛を知って変わっていく生き様を、フラメンコとともに情熱的に描いた作品。演出がとても素敵で、クライマックスでの花の使い方はとても感動的。
CASANOVAが光の中を進むならば、ドン・ジュアンは闇に差した光を目指す作品。僧思うほどアプローチが違っていて面白い。
女性を嘲笑う前半、愛を知って愛に生きる後半と劇的に変化するドン・ジュアンを演じる望海さんの演技が凄まじい。同じ笑顔でも前半と後半で大きく印象が変わるので、ぜひ見比べて欲しい。出てくるシーンで心をがっしり掴んでいく歌と演技でイザベルを演じる美穂さん、無機質な表情・動きと軍靴を高らかに鳴らすタップダンスでまさに亡霊という騎士団長を演じる香綾さん、全身から良い人オーラが溢れ出ているドン・カルロを演じる彩風さん、幸せそうな表情がとても素敵なマリアを演じる彩さんも印象的。

観劇日


2019年6月2日 DVD

2019年花組公演「CASANOVA」で触れられていて気になったので視聴。

以下ネタバレ注意 “ドン・ジュアン 感想
―赤いバラの花が印象的―” の
続きを読む

アルジェの男 / ESTRELLAS 感想
―礼さんの歌とアンドレがイチオシ―

概要


作・柴田侑宏先生、演出・大野拓史先生の作品。舞台はフランスの植民地であったアルジェリアとパリ。パリで成功する夢を抱きながらも悪事で生計を立てている青年ジュリアンは、アルジェリア総督のボランジュの財布を盗もうとして失敗してしまう。しかしジュリアンはボランジュに見込まれ、彼の下で働くことになる。アルジェリアの貧困層からパリの社交界へ所在を変え、自分の夢を叶えるべく進んでいくジュリアンを中心とした物語。

感想のまとめ


【アルジェの男】

細やかな演技と礼さんの圧倒的な歌声が素敵な公演。低音な美声で響き渡る歌が素敵で、変化に富んだジュリアンを自然にそして格好良く演じた礼さん、本当に憎らしいジャックを演じた愛月さん、仕草で雄弁に語るアンドレを演じた極美さんが特に好き。一押しはアンドレが最後に登場するシーン、ジャックが最後に登場するシーン、そしてラストシーンでのジュリアン。極美さんのわずかな仕草から感情を観客に伝える演技、愛月さんのあまりにも自然すぎる凄まじい演技、礼さんの最後に一番魅力的になるジュリアンがとても印象的。

【ESTRELLAS】

星組のキレの良い激しいダンスと、礼さんのとてもクリアに響き渡る歌声が素敵。礼さんのファンサービスもとても印象的。客席降りだけではなく、舞台上でも二階席までよく視線をくれるし、二階席を見て手を振ってくれる。そんな礼さんにグッとくる素敵なショー。

観劇日


2019/5/9 (広島文化学園HBGホール)
人生初の全国ツアーでご当地ネタも初体験!
入場時の大行列も宝塚関連では初体験。

以下ネタバレ注意 “アルジェの男 / ESTRELLAS 感想
―礼さんの歌とアンドレがイチオシ―” の
続きを読む

CAPTAIN NEMO 感想
―愛おしい奇跡の迷作―

概要


ジュール・ヴェルヌの「海底二万里」に登場するネモ船長を主役に、谷正純先生が脚本・演出を手がけた作品。
捕鯨船の遭難が相次ぐ海域を調査するため、イギリス海軍のラヴロック少佐は海洋学者のジョイス博士、モリエ博士の娘レティシア、人違いで新聞記者のシリルを拉致し、半ば強制的に調査を依頼する。その矢先に艦隊が謎の沈没を遂げ、一同は謎に包まれた島に漂流し、そこで謎の人物ネモ船長と出会う。

感想のまとめ


ずばり愛おしい迷作。欠点がとても多い脚本だが、欠点が絶妙なバランスで噛み合って、終盤での奇跡的な感動を生み出した作品。決して名作ではないけれど、何度見ても良かったと思える作品で、見終わる頃にはマトカの家族になりたいと思ってしまう怪作。この作品が心に刺さると、マトカの人々の優しさと温かさに涙が止まらなくなる。
イチオシは格好良いビジュアルと雄大なダンス、深い優しさが伝わってくる歌と演技が素敵なネモ船長を演じる彩風さん。フィナーレのダンスシーンでの格好良さは必見。

観劇日


2018年12月 DVDでの視聴が初回。何度も視聴している大好きな作品。

以下ネタバレ注意 “CAPTAIN NEMO 感想
―愛おしい奇跡の迷作―” の
続きを読む