シネマ歌舞伎
野田版 桜の森の満開の下 感想
―幻想的で美しい終盤が印象的―

概要


坂口安吾の「桜の森の満開の下」と「夜長姫と耳男」を元に、野田秀樹が脚本を書き上げた作品。歌舞伎として上演されたこの作品だが、シネマ歌舞伎として映画館で上映されたので観劇。

感想のまとめ


歌舞伎らしさも失わず、それでいて現代的で親しみやすい作品。コミカルな序盤から気がつくと幻想的で壮大な世界が広がり、夢の世界に迷い込んだかのような素晴らしい構成。凄まじい滑舌でテンポよく繰り広げられる言葉遊びや、コミカルから一瞬で空気が切り替わる見得、巧みな無音の活かし方といった歌舞伎らしさもとても良い。
時に気弱で時にとても力強い耳男、無邪気さと狂気を合わせ持つ夜長姫の演技がとても素敵。クライマックスのシーンは幻想的で美しく、涙が止まらないほど美しい光景だった。

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神捕 (アヤトリ)
―神様との鬼ごっこ―

概要


神様を殺したという不思議な記憶を持つ偉鏡は、彼の願いを叶えに来たという少年・月霞の暮らす村に誘われる。その村には「神様のお声を耳に入れてはならない」「自分の声を神様に聞かれてはならない」「自分の姿を神様に見られてはならない」と3つの禁忌があるという。その村で偉鏡は神様を目撃する。しかしその際に姿を見られた偉鏡と月霞は神様から逃げるため、神様と鬼ごっこをする事になってしまう。同じく禁忌を破ってしまった眞夏と葉雪、花蜜と玉雄という3組のペアの視点から描かれる神様との鬼ごっこ。
「Nightmare Syndrome」 (以下NS) 様の作品。本作はシナリオを委託した作品で、いつものNS作品とはまた違った味のある作品。

感想のまとめ


短いシナリオでコンパクトにまとめ上げられた作品。
作中に漂う神秘的な雰囲気、異形の神様という不気味な要素、終盤の疾走感としんみりと、けれど爽やかに終わる結末がとても良い。

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夢現無双 / クルンテープ (月組) 感想
―武蔵と小次郎の対比が美しい―

概要


原作は吉川英治の小説。脚本・演出は齋藤吉正先生。
夢現無双は天下無双としてその名を轟かせた宮本武蔵の半生を描いた物語。宮本武蔵と彼を慕うお通、宮本武蔵と長馴染みの青年である又八、天下無双として知られる佐々木小次郎を中心に描かれた物語。
クルンテープはタイをテーマに演じられたエキゾチックなショー。

感想のまとめ


  • 夢現無双
    武蔵の成長や各登場人物の生き様と成長を見ていく作品。人を選ぶ脚本ではあると思う。雄々しくも荒々しい武蔵が成長していく様や、優雅で華麗な小次郎、武芸から遠ざかる又八の生き方の対比がとても素敵。殺陣のシーンは格好良いし、武蔵と小次郎で違った個性があるのが見どころ。人との出会いで成長して印象すら変化していく武蔵を演じる珠城さん、優雅で華麗な小次郎を演じる美弥さん、気品と艶やかさと掴みどころのなさでまさに太夫という海乃さんが一押し。

  • クルンテープ
    キラキラしてエキゾチックな熱量溢れるショー。まさに宝塚の男役と思わせる歌・踊り・燕尾姿の全てが美しい美弥さん、珠城さんと美弥さんの美しいダンスシーン、緑と白の衣装で歌う女性 (輝月さん?) の低音から高音まで歌い上げる素敵な歌、ダイナミックと美しさを兼ね備えたデュエダンが特に見どころ。

観劇日


2019/4/6 (宝塚大劇場)
記念すべき月組初観劇。カンパニーのブルーレイで気になっていた美弥るりかさんの退団公演。最初で最後の美弥るりかさんを見るチャンスと思い観劇。

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夏の夜の夢・あらし/シェイクスピア
/福田恆存 訳/新潮文庫
―世界の美しさに感動する作品―

概要


誰もがご存知シェイクスピアによる作品。「夏の夜の夢」は比較的初期に書かれた喜劇。「あらし (テンペスト) 」は晩年に書かれたロマンス劇。
「夏の夜の夢」はアセンズ (アテネ) を舞台に、妖精の王オーベロンと妖精の女王タイターニアとの間の夫婦喧嘩に巻き込まれた何組かの男女の物語。妖精王の命を受けた妖精パックが惚れ薬を使う相手を間違えたことで事態が混迷していく、幻想的でハチャメチャな恋愛喜劇。
「あらし」は孤島を舞台に、弟の裏切りにより追放されたミラノ王プロスペローが魔法の力で弟たちの乗った船を難破させ、島へ漂流させるところから始まるロマンス劇。シェイクスピア晩年の作品で、多くの喜劇・史劇・悲劇を書き上げたシェイクスピアの集大成にふさわしいロマンス劇。

感想のまとめ


「夏の夜の夢」は妖精が歌い踊るシーンが幻想的で、気づけば大団円を迎えているというまるで狐につままれているかのような作品。
「あらし」はまさにシェイクスピアの集大成。四大悲劇を読んでから読んでほしい作品。幻想的で、情熱的な愛があり、裏切りや疑心があり、言葉の掛け合いも小気味よい。結末の美しさは必見で、多くの喜劇・史劇・悲劇を経たシェイクスピアがこの結末を書いた事実がとても好きになる。

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ファントム (雪組) 感想
―圧倒的な歌と演技に涙が止まらない公演―

概要


原作はガストン・ルルーのオペラ座の怪人。本作の脚本はアーサー・コピット。潤色・演出は中村一徳先生。
オペラ座に憧れる少女、クリスティーヌが歌いながら楽譜を売っているところに、オペラ座のパトロンであるシャンドン伯爵が通りかかる。その歌声を高く評価したシャンドンはオペラ座でレッスンを受けさせるべく、支配人キャリエールへ宛てた紹介状をクリスティーヌへ渡す。
オペラ座にやってきたクリスティーヌだがキャリエールは既に解任されていて、新しい支配人ショレの妻であるカルロッタの衣装係にされてしまう。
仕事の合間に歌うクリスティーヌの歌声を聞いたファントムは彼女の歌声に感動し、彼女がオペラ座で歌えるようレッスンを施す。そして団員たちが集うビストロでクリスティーヌがその才能を開花させた時、物語は大きな変化を迎える。

感想のまとめ


圧倒的な歌と演技が調和して、涙の止まらなくなる公演だった。
歌による表現を極めたかのような、エリックを演じる望海さんとクリスティーヌを演じる真彩さん、歌も凄いが眼差しや演技でも泣かせてくる彩風さん、少女漫画から抜け出したかなようなキラキラしたオーラのシャンドンを演じる彩凪さん、どうしようもない小者だけど憎めないショレを演じる朝美さん、オペラ座を支配するような演技でカルロッタを演じる舞咲さんが凄く良い。
一押しは彩風さんのキャリエールで、特にビストロでの表情、第二幕では登場シーン全てが凄く良い。

観劇日


2018/11/18, 2018/12/11 (宝塚大劇場)
2019/1/3 (東京宝塚劇場),
2019/2/10 (ライブビューイング) 
初の東京宝塚劇場、千秋楽 (ライブビューイング) は雪組公演。

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