ヨスガノソラ (アニメ)
―原作とは別物だが傑作―

概要


ヨスガノソラはSphereによるアダルトゲームで、今回はそのアニメ作品について記載する。地上波作品とは思えぬほど過激な性描写で話題となり、耳にした人も多い作品。いざ見てみると性描写だけで語るにはあまりにも勿体ない作品だったので、感想をメモする。

まとめ


数話ごとにルートをまとめ上げる見事な構成力と洋画のような演出が光る作品で、穹ルートでの演出はまさしく芸術。寂寥感を与える田舎の描写とBGMが心地よく、夏に視聴するのにうってつけ。本編のシリアスな雰囲気に合ったOPと挿入歌、ポップなおまけパートにぴったりなEDで楽曲の使い分けも巧み。
過激な性描写を含み、近親相姦を含む点、原作とはあえて逆のアプローチを取っている点など人を選ぶ要素も多分に含まれているが、エロアニメの一言で片付けるにはあまりにも勿体ない作品。

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少女☆歌劇 レヴュースタァライト
―アニメも映画も綺麗にまとめられた作品―

概要


アニメと舞台を連動させているブシロードのコンテンツであるスタァライト。
聖翔音楽学園という架空の音楽学校を舞台に、学校行事でスタァライトという作品を演じる舞台少女たちの物語。トップスターを目指すためにキラメキを奪い合う、オーディションが独特の要素になっている。
気がつけばアニメ・総集編・劇場版のすべてを見ていたので、所感を残す。

まとめ


演劇要素はあくまで自己表現のためのツールという特殊な作品。レビューシーンの演出・歌唱力が優れた作品で、アニメ本編時点でとても綺麗にまとまっていた。
新作劇場版ではアニメの後、それぞれの未来をとても綺麗にまとめていて、スタァライトという物語の帰着点として完璧。把握しきれないほど膨大なメタファーが光る作品で、見るたびに新しい発見を楽しめる。大迫力のレビューも見応え充分で、歌唱力も相まって映画館向けの作品。パンフレットの演出が良いので、パンフレット購入がお勧め。もしこれから劇場版を視聴するならば、音響の良い映画感を選ぶと良いかもしれない。

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BanG Dream! (アニメ)
―ライブシーンはシリーズで1番―

昨年視聴したアニメ BanG Dream!の3rd season。アニメとリアルライブによるメディア展開、それも声優が演奏まで行う珍しいスタイルが特徴の作品。

3期は安心の王道ストーリーで、これまでのシリーズで1番良いライブシーンを楽しむことに注力した作品だった。ストーリー的には過去のシリーズのほうが丁寧で好きだったが、ライブシーンの演出はこれまでで一番凝っているので見応えたっぷり。

今期はリアルライブ組の3バンドにフォーカスして、武道館でのライブに向かうストーリー。Poppin’Partyは憧れの大舞台に向けての躍動、Roseliaはイベントを通じての再発見、RAISE A SUILENはメンバーの絆に主軸が置かれていて、王道でシンプルな構成。、最初から最後まで手堅いストーリーで、最後にも3バンド全てに賞を与える徹底ぶり。ほとんど王道を外さないので、安心してライブシーンを楽しむことのできる作品だった。テンポ良く新曲を出すためか、過去のシリーズに比べるとストーリーが少し荒い印象。りみの胸中は最終話の数分で使うには勿体ないぐらいだった。

ライブシーンはかなり気合が入っていて、これまでのシリーズで1番良い。中盤に出てくるMVはメイキング・完成品ともに、バンドのカラーが色濃く出ていて良い。武道館ライブは派手に動かすカメラワークやキャラクターの掛け合いが印象的で、3バンド合同での演奏はこれまでの集大成と言わんばかりの出来栄え。

曲に関しては、RAISE A SUILENが飛び抜けている。プロが来ると違いが出てしまい、格好良い系のRoseliaが割りを食った印象。今回正統派に近い3バンドにフォーカスしているので、作中での評価とギャップを感じてしまった。

今回成長していく主役側の立ち位置はRAISE A SUILENで、他のバンドは先輩側の役割。Poppin’Partyは枷がなく自由に動けていて、先輩としても良い役回り。Roseliaは先輩バンドという美味しい立場だったが、今更それに気づくのか、という内容で脚本面では不遇。

ライブシーン以外では戸山姉妹の会話シーン、マスキング絡みのシーン、ドラマー会議が印象的。
香澄の心情を姉妹の会話を通じて語るシーンでは、音楽という共通項を持たない関係だからこその、会話シーンが好き。主要キャラが全員バンドメンバーなので、バンドを前提としない戸山姉妹は特別な関係かもしれない。全体通じて美味しいポジションだったのはマスキングで、出てくるたびに株が上がる凄いキャラ。気配り上手でありながら周囲を引っ張って、物語を回していくナイスキャラ。息抜き回のドラマー会議では、他バンドのキャラの良い先輩ぶりと、マスキングの後輩ぶりがとても良かった。

今回3バンドにフォーカスしていたが、リアルライブを行うバンドに注力するという方針だとしたら少し残念。せっかく持ち味の異なるバンドを持っているので、次の機会は他のバンドにもフォーカスを当ててくれればと思う。

 

マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝 (アニメ)
―アニメでの変更点が絶妙―

密かに期待していたマギアレコード (以下マギレコ) が最終回を迎えたので、感想に残す。

魔法少女まどか☆マギカ (以下まどマギ) の雰囲気を残しつつも、ソーシャルゲーム原作らしくキャラを立てるシナリオのバランスが良く、アニメでの変更点はキャラの描写が特に素晴らしい。ソーシャルゲーム原作らしく広く受けの良い印象で、まどマギを思い出すけれども寄せすぎない絶妙なバランス。2期のために最終話で雑にならなければ、言うことのない作品だった。

 

マギレコの出典はスマホゲームで、魔法少女まどか☆マギカ (以下まどマギ) の外伝。まどマギはシナリオ・音楽ともに大好きで、前後編の映画を一日かけて観るぐらいハマっていたの作品。マギレコも第一部のシナリオが好きだったので、期待値は高かった。

 

個人的に、マギレコのアニメはまどマギにどこまで寄せるかが気になっていた。

まどマギは各キャラクターの役割が明確という特徴がある。魔法少女への導入を担う巴マミ、魔法少女の一生と魔法少女システムを見せる美樹さやか、別の魔法少女の視点からそれを見せる佐倉杏子、これらを踏まえて物語の主役となる暁美ほむら、一般人の視点で物語を見せつつ、最後に物語を終わらせる鹿目まどか。役割を終えると退場していくまるで舞台のようなシナリオと、随所に散りばめられた細やかな隠喩によって凄まじい完成度を誇っている。これほど素晴らしい作品は滅多にない。

一方マギレコはソーシャルゲームなので、キャラを立てるのための物語。まどマギとは毛色が異なり、よくも悪くもアニメ向きでアレンジしやすい印象。まどマギに寄せることは簡単だが、あまり寄せすぎると作風の違いから失敗するのでは?と思っていた。

 

アニメ版マギレコはそんな懸念を吹き飛ばすような作品だった。まどマギの雰囲気を残しつつも、ソーシャルゲーム原作らしくキャラを立てるシナリオのバランスが良く、アニメでの変更点はキャラの描写が特に素晴らしい。ソーシャルゲーム原作らしく広く受けの良い印象で、まどマギを思い出すけれども寄せすぎない絶妙なバランス。

 

二葉さな関連は特に素晴らしく、「ひとりぼっちの最果て」でのさなとアイの物語はとても素敵なアレンジ。高かった期待値を遥かに超えるようなアレンジで、派手な戦闘に頼らずここまで丁寧に描いてくるとは思わかった。さながみかづき荘に馴染むまでもきちんと描いてくれていて、アニメ化されてよかったと思うような完成度。

 

そんな素晴らしい作品だったが、最終話はかなり残念。これまで各話丁寧に物語を描いてきただけに、落胆してしまう最終話だった。受けの良い派手な戦闘シーン (配信版では間に合わなかったのか残念な出来栄え) 主体で、あとはとりあえず風呂敷を広げるだけの最終話。さやかが痛覚を残して戦っている描写など、細かな描写は良いだけに余計に残念。記憶ミュージアムに中途半端に踏み込まず、その手前で終わるほうが良かったと思う。2期への期待よりも、終わらせ方への不満が出てしまう最終回だった。

 

ただ最終回を除けば毎話楽しめる、とても素晴らしい作品だった。

劇場版BanG Dream! FILM LIVE感想
―個性豊かなバンドが織りなすライブ映画―

宝塚観劇の際に時間を取れたので、以前視聴したBanG Dream! (以下バンドリ) の劇場版を観てきた。アニメの感想はBanG Dream! (アニメ) に記載。

全編がライブシーンで構成された作品で、映画というよりライブを見に来た気分を味わえる面白い作品だった。作中に登場した5組のバンドが曲とMCを披露していく構成で、作中に登場するバンドの能力が高いからこそできる手法だと思う。本作は声優が演奏もするバンドもあるというのが特徴だが、今回はアニメ映画をとして見た感想を書いてみる。

全体の印象


  • 登場バンドが個性豊か
    アニメでも思っていたけれど、5組のバンドは個性豊か。ポップからクールな感じまで幅広いレパートリーを誇る “Poppin’Party”、ロックバンドに寄った “Afterglow”、格好良い系担当 “Roselia”の3組は正統派のイメージ。見ても聞いても面白い “ハロー、ハッピーワールド!”、アイドル系バンドの “Pastel*Palettes”は少し個性派。いろいろなタイプのバンドが映画に出てくるのはこの作品の強みだと思う。

  • 野外ライブの見せ方が面白い
    今回は野外ライブという設定で、昼間から夕方、夜と時が移ろいながら進行していく。明るく始まっていい感じの余韻で終わるライブと上手く合わせつつ、視覚的にも変化があって素敵な演出だった。観客がバンドに合わせた色のサイリウムを振ったり歓声を上げたりもしているので、ライブ会場にいる感覚も強くなっている。
  • 映像はキャラ重視
    映像はかなりの割合でキャラにズームしていた気がする。キャラの演奏ではなく、演奏するキャラを見やすくしているイメージ。個人的にはもう少し引いた映像の多いほうが好きだけど、コンテンツ的にはこっちのほうが合っている気がする。

  • ライト層にも配慮された作品
    MCでのメンバー紹介があったので、自分のようなライト層、それこそ初見でも楽しめる作品だったと思う。

個別の印象


  • Poppin’Party
    アニメで好きだったバンドの1つ。明るい曲からしんみりする曲まで揃えた豊富なレパートリーを誇り、歌も曲も安定している良いバンド。さすが主人公の所属するバンドという印象。香澄 (Vo.&Gt.) の歌が良くて、バンドらしい曲も良い。他のメンバーの歌も安定していて、特に沙綾 (Dr.) の歌うシーンが良かった。

  • Afterglow
    ロックバンド系の曲を聞いている、という感じが心地よいバンド。ギターがかっこよかった印象で、これがロックバンド感を出しているのかもしれない。蘭 (Vo.&Gt.) の歌い方は大人しめで、もう少し激しいほうが好みかも。

  • Pastel*Palettes
    この映画でかなり好きになったバンド。アイドルバンドらしく可愛い系の歌い方と彩 (Vo.) の振り付けが印象的。彩がよく動き回っていて、あのよくわからないけれどアイドル感を感じる振り付けが好き。カメラワークも良く、3曲目の1, 2, 3, 4のあたりが特に好き。曲も改めて聞くとボーカルと絶妙に合っていて、アニメのバンドらしい感じが心地よかった。

  • ハロー、ハッピーワールド!
    アニメで好きだったバンドの1つ。アニメらしく派手な演出と激しいダンス、聞いていて楽しくなってくるタイプの曲でアニメ映えするバンド。今回もとにかくよく動く。独特の曲と、こころ (Vo.) の歌と動きにグイグイと引き込まれていくので、映画で見られてよかったと思う。3曲目で飛ぶシーンが一番好き。

  • Roselia
    格好良い曲担当というイメージがあるバンド。他のバンドと比べると演奏が大人しめな印象で、格好良いけど少し地味な印象。声優が演奏する前提の曲にしている事が一因かもしれない。最後の曲で青い炎が上がるところなどMusic Video風で好き。友希那 (Vo.) は中低音域のパワフルさが良く、他にはあこ (Dr.) の歌が良かった印象。

BanG Dream! (アニメ)
―声優が演奏もする時代―

演じて歌って演奏する、そんな現在の声優の凄まじいマルチタレントぶりと新しい時代のメディア展開をBang Dream! で今更ながら体感したので、所感を書いてみる。

風邪で寝込んだ時期にYouTubeで期間限定されていた BanG Dream! (以下バンドリ) を視聴。主人公の戸山香澄がメンバーを巻き込んでいく形でガールズバンド Poppin’Party を結成し、成長していくストーリー。

安心感すら感じる普通なストーリーと演出で、作品の売りは各バンドへの曲の割り振りが良いという印象。主人公のバンドには王道な感じの曲、実力派を謳うバンドには格好良い感じの曲、「世界中を笑顔に」を謳うバンドには聞いていて楽しくなる曲が当てられていて、バンドごとの住み分けが上手いと思う。質も良くて、よくこれだけ歌える声優を集めたなぁ、と感心するレベル。普通に上手くて曲もバラエティに富んだ Poppin’Party と、愉快な曲調とアニメらしくぶっ飛んだギミックを活かしたハロー、ハッピーワールド! が見ていた中ではお気に入り。

ここで終われば普通の作品だけれど、作中に登場するバンド (Poppin’Party と Roselia) では、声優が自ら演奏しているということに驚いた。昔の作品では「歌手が声優を兼任」or「歌だけ歌手」という印象で、最近の作品だと「声優が歌う」ケースが多いのは知っていたけれど、「声優が演奏する」パターンの登場に時代の変化を感じた。演じて歌って演奏する。本作の声優のマルチタレントぶりは凄まじいと思う。

「声優が演奏する」ということに関しては、演奏が微妙だと曲目が制限される上にライブシーンが映えない。演奏が上手でもアニメでは誰が演奏しているかは見えず、クロスメディア展開しやすくなるメリットしかなく、声優の負荷は激増する。そんなハイリスクローリターンな勝負に出たブシロードは面白い会社だし、それに応えた声優陣も凄いと思う

アニメで終わらず、アニメと実際のライブを絡めて展開していくプロジェクト。特に Poppin’Party の演奏に、新しい時代のメディア展開手法を見た気がする。声優の負荷は凄まじいだろうが、これだけのバンドを作りあげたこのプロジェクトは大成功だと思う。

バンドリはこの手法が大正解だと思うけれど、個人的にはライブシーンに歌手を使う手法も廃れずに残ってほしいと思う。「歌手が声優をする」だと「満月をさがして」など少女漫画で一時期流行ったイメージ、「歌だけ歌手が担当」だと「Gravitation」や映画のイメージ。特に「Gravitation」は浅倉大介カラー全開で、なぜBLアニメでここまで本気を出したんだろうか、と思うほどに名曲揃い。そんな作品もまた出てきてほしい。