パルムの僧院 感想
―テンポ良く明快な帰着で爽やかに―

概要


原作はスタンダールの小説。イタリア北部のパルマを舞台とした物語。主人公のファブリス、彼の叔母でありその美貌で宮中に影響力を持つジーナ、ファブリスと恋に落ちるクレリアを中心とした物語。二人のヒロインによる、ダブルヒロイン体制で展開される。

感想のまとめ


恋愛・政治が並行してスピーディーに展開され、テンポの良さが心地よい作品。物語の帰着点も明快で、視聴後は爽やかな気分になる。
ジーナとクレリアのダブルヒロインはタイプの異なる二人が相乗効果で魅力を増している。
純粋無垢なファブリスを演じた彩風さん、圧倒的な存在感でジーナを演じた大湖さんを始め、どのキャストも表情や仕草、役作りがとても良い。
楽曲も印象に残りやすく、特に久城さんの歌うAVE MARIAが素敵。

視聴日


2020/05/01 Blu-ray
原作は未読。

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ONCE UPON A TIME IN AMERICA (雪組) 感想
―コンパクトな群像劇―

概要


ハリウッドのギャング映画を、小池修一郎先生が脚本・演出でミュージカル化した作品。ローワー・イーストサイド (ニューヨーク) 出身のユダヤ系移民のヌードルスたちの人生を描いた作品で、ギャングとして生きていくヌードルスを主人公に、少年期から壮年期まで描いた作品。

感想のまとめ


コンパクトにまとめられた群像劇という印象。振る舞いや表情、歌い方が年月の経過に合わせて変わっていくので、圧巻の歌と年月の経過による変化を楽しめる作品。コンパクトすぎて少し薄味に感じるかもしれない。
年月とともに変わっていきながらも常に最高のハーモニーで歌う望海さんと真彩さん、年月とともに目の雰囲気がどんどん変わっていく彩風さん、力強くも落ち着いた歌が素敵だった彩凪さん、最高のエトワールだった舞咲さんが特に印象的。

観劇日


2020/01/11 (宝塚大劇場) 
あえて映画は視聴せずに観劇

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El Japón (エル ハポン) / アクアヴィーテ 感想 ―兎にも角にも格好良い―

概要


【El Japón】
大野拓史先生による作・演出。スペイン南部にるハポン (日本) 姓を名乗る人々、彼らのルーツである慶長遣欧使節団をテーマにした作品。日本とスペイン、2つの要素が混在して爽やかな仕上がりになっている娯楽作品。

【アクアヴィーテ】
藤井大介先生による、命の水、ウィスキーをテーマにしたレビュー。

感想のまとめ


【El Japón】
真風さん格好良い!に集約される作品。ストレスフリーで少年漫画的なので、細かなことを考えずに格好良さを堪能できる。兎にも角にも格好良く、ゆったりと余裕のある歌と立ち振舞いがとても素敵な治道を演じる真風さん、歌・演技・ダンスとすべてが素敵で目を引く星風さん、歌と演技がとても素敵な道化を演じる留依さんが特に印象的。

【アクアヴィーテ】
クールでスタイリッシュな格好良さが素敵なショー。ダンスシーンがとても美しくて素敵。どんなセリフでも格好良く見せる真風さん、芹香さん、桜木さんがとても印象的。

観劇日


2019/12/08 (宝塚大劇場)
初の宙組観劇&全組観劇達成日

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ハリウッド・ゴシップ感想
―ほろ苦さと心地良い余韻を楽しめる公演―

概要


作・演出は田渕大輔先生。映画スターを目指すエキストラの青年コンラッドが、往年の大女優アマンダに見いだされてスターへの道を歩み始めていくというストーリー。そこにかつて自分を見捨てたスター俳優ジェリーに対するアマンダの復讐、新人発掘オーディションでヒロインに抜擢されたエステラの存在、ゴシップに飢えたマスコミとそれを提供するハリウッドという構図といった、様々な要素が絡み合っていく作品。

感想のまとめ


B級作品全開のポスターとは裏腹に、ほろ苦さと心地良い余韻を楽しめる素敵な公演。場面の間に何があったかを演出と演技で想像させるような作風が特徴で、観終わった後に振り返ると良い作品だったと思えるような絶妙なバランス。台詞で多くを語らずに細やかな演出や仕草の変化で語る作品なので、見返すたびに楽しめるところも良い。ダンスシーンも豊富で、伸びやかなダンスからキレの良いダンスまでタイプの異なるダンスを堪能できる作品。
本当の自分とスターとしての理想の自分、そして変わっていくスターとしての自分を繊細に演じ分けた彩風さん (コンラッド)、スターとして凄まじい輝きで現れてそこから変化していく演技が凄まじい彩凪さん (ジェリー)、佇まいだけで大女優だと判る梨花ますみさん (アマンダ)、完璧なオジサマ感で魔法使いと呼ばれるのも納得の名プロデューサーぶりを見せつける夏美さん (ハワード) が特に印象的。

観劇日


2019/10/26, 10/27 (梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)

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春の雪 (月組) 感想
―不可能への挑戦―

概要


原作はあの三島由紀夫による作品で、「豊饒の海」四部作の第一部。美しい文章・情景を書かせたら右に出る者はいない三島由紀夫が最後に書いた長編小説。生田大和先生が脚本・演出を手掛けた作品。

感想のまとめ


三島由紀夫作品が持つ雰囲気を見事に表現している素晴らしい作品。清顕を演じる明日海さん、聡子を演じる咲妃さん、蓼科を演じる美穂さんを始めイメージ通りの配役で演技派揃い、歌も上手い完璧な配役。清顕と聡子のビジュアルに惚れ惚れするし、蓼科の老獪さ、奔馬を思わせる飯沼の力強さ、本田の実直さなどそれぞれの人物がとても魅力的。脚本も原作の良さが出ている場所が多く、観ていて美しさに感動する素晴らしさ。
ただオリジナル要素は軒並み微妙で、特にがっかりな2箇所さえ無ければ不世出の作品になっていたのに、と歯噛みしたくなる。
まさに清顕という美しさで作品に引き込むような清顕を演じた明日海さん (青年期) と海乃さん (少年期)、その美しい清顕と並ぶ美しさと素敵な歌声で聡子を演じた咲妃さん、美しい歌声と作品のクオリティを上げる演技力で蓼科を演じた美穂さんが一押し。

観劇日


2019/08/31 (ブルーレイ)

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