眩耀の谷 / Ray 感想
―星組の今後が楽しみ―

概要


「眩耀の谷」は謝珠栄先生の作・演出・振り付けによる作品。周王朝の時代を舞台に、秘薬を黄金を持つと噂される少数民族の汶族と、汶族調査を命じられた周国役人の丹礼真の物語。礼真琴さん・舞空瞳さんのトップ就任お披露目公演。
「Ray」は中村一徳先生の作・演出による作品で、Rayにまつわる礼や麗などをテーマにしたショー。

感想のまとめ


「眩耀の谷」は親しみやすい中華風作品で、万人向けな面白い作品。新体制の完成度が既に高く、礼さんが歌でクオリティをぐっと引き上げ、舞空さんが難しい役を見事に演じ、愛月さんや華形さん、音波さんたちのベテラン陣の円熟味もとても良かった。
「Ray」は礼さんのキレの良いダンスが全面に出ていて、スピーディなダンスがとても映えるショー。軽快、そして激しく踊るダンスの見ごたえたっぷり。

感想


  • 手堅く万人向けな中華風作品
    眩耀の谷は天命思想や教訓じみた話で中華の要素を出しつつも、親しみやすい程度に抑えている。価値観が崩れ去った所から新しい価値観を見出していくストーリーも楽しめる。汶族の未来を見せる結末も含めて、とても手堅い脚本だった。

  • お披露目公演から仕上がりが良い
    新体制のお披露目作品だが、現時点で完成度が高い。歌・演技・ダンスどれも素敵で、フレッシュさと円熟味のバランスもとても良い。鬘が浮き気味なのが少し気になったが、お披露目公演からこのクオリティで仕上げてきた新生星組なので、今後の公演もとても楽しみ。

  • 礼さんのパワー凄い
    礼さんの歌がとても素敵で、作品のクオリティをぐっと引き上げている。よく響く低音で、舞空さんとのデュエットもリードするような歌い方がとても良かった。
    Rayでは誰よりもキレの良いダンスと全くぶれずに響き渡る歌声でとてもパワフル。

  • 舞空さんの演技が良い
    舞空さんが演じた瞳花は王族の娘ながら周国将軍の妾にされた一児の母、そして盲目。複雑で難しそうな役だが、女性であり母親であり、王族の人間でもある多面性がとても自然に出ていてとても良かった。

  • 愛月さんが格好良い
    眩耀の谷では渋めの管武将軍で、躊躇いはあるが止まれない苦悩がとても良かった。
    Rayでは礼さんと瀬央さんの若々しさに対して、円熟味のある格好良さがギャップになっていて格好良かった。体格の良さが映えるスーツの着こなしなど、愛月さんがいることで組としてバランスがとても良くなっている印象。

  • ベテラン陣が見せる宮中の荘厳さと華やかさ
    宮中のメンバーはベテラン陣が中心でこれがまた良い。この公演で退団した専科の華形さん、音波さんなどベテラン揃いだからこその重さと華やかさが出ていて、とても良かった。

  • Rayのダンスはスピーディ
    礼さんがトップなので、それに合わせてダンスはかなりスピーディ。ビシッと音が聞こえてきそうなタイプの振り付けを小気味よく踊っていくので、礼さんのダンスを好きだった人にはたまらない振り付け。個人的にはゆったりとしたダンスのほうが好きだけど、これだけ軽快に踊れるならば、この手の振り付けもありだと思う。

グランドホテル / カルーセル輪舞曲 感想
―演技派が織りなす傑作の群像劇―

概要


グランドホテルはヴィッキー・バウムの原作をミュージカルした作品を、宝塚として上演したもの。脚本はルーサー・ディヴィス。ベルリンの高級ホテルを舞台に、様々な人が織りなす群像劇を描いた作品。
カルーセル輪舞曲は稲葉太地先生作・演出で、様々な国を回っていくかのようなレビュー。

感想のまとめ


ストーリーがとても面白い群像劇。珠城さんのフェリックスが見せる人間味や、愛希さんのエリザヴェッタや美弥さんのオットーが見せる変化、海乃さんのフラムシェンと華形さんのプライジングが見せるやり取りなど、どこを見ても芝居上手な人が揃っていることがとても印象的。


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ピガール狂騒曲/WELCOME TO TAKARAZUKA 感想
―匠の技によるドタバタ喜劇―

概要


WELCOME TO TAKARAZUKAは和物レビューで、坂東玉三郎さんが監修。クラシック曲に合わせた舞踊が特徴。
ピガール狂想曲は原田諒先生作・演出。シェイクスピア喜劇の「十二夜」をモチーフに、舞台を1900年のパリ・ピガールに移した作品。十二夜がモチーフなので、主演の珠城りょうさんは男女2役を演じる作品。

感想のまとめ


WELCOME TO TAKARAZUKAは華やかで身のこなしの美しさが素敵なレビュー。何度も繰り返されて覚えやすい主題歌と松本さんのシーンが特に印象的。
ピガール狂騒曲はシェイクスピア作品らしいドタバタ喜劇で、テンポの良い掛け合いと小芝居が楽しい作品。珠城さんが歩き方や仕草までガラッと変えて、一人二役を演じ分ける姿が印象的。暁さんを中心としたダイナミックなダンスも見どころ。


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炎のボレロ/Music Revolution! New Spirit 感想
―王道は良いもの―

概要


「炎のボレロ」は柴田侑宏先生作で中村暁先生演出の作品。メキシコを舞台に、フランス支配下の政府に全てを奪われた貴族の青年アルベルトが、祖国の独立を取り戻すために奮闘する物語。
「Music Revolution! -New Spirit-」は中村一徳先生作・演出で、2019年度公演の同ショー演目をリニューアルした内容。

感想のまとめ


「炎のボレロ」は古き良き王道を行く作風でキャラとキャストを楽しむことのできる作品。伸びやかで綺麗なダンスシーンと久城さんの悪役ぶりが印象的。
「Music Revolution! -New Spirit-」は見応え抜群なダンスと成長著しい歌唱を楽しめる作品。歌って踊ってのフル回転で抜群の安定感を見せた彩風さん・朝美さん、歌が飛躍的に上手くなった懸さん、出だしから聞き惚れる久城さんが特に印象的。

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エリザベート (96年雪組) 感想
―歌・演技・脚本の全てが凄い傑作―

概要


オーストリアで上演されていたミュージカルで、潤色・演出は小池修一郎先生。オーストリア・ハプスブルグ家の皇后になるエリザベートと、死の象徴でもある黄泉の帝王トートが織りなす愛と死を描いた作品。

感想のまとめ


脚本・演出・演技・歌のすべてが凄まじい作品。歌はこれまで見た中で一番凄いかもしれない。トートの一路さんを始めとしてどの人も凄まじく歌が上手で、「闇が広がる」が一番のお気に入り。
冷たく無機質で、人の傍らにあり続ける死を象徴するトートがとても素敵で、まさに死そのものというトート像があってこその作品だと思う。
どの人も凄まじいけれど、冷たく無機質な死を象徴するトートを演じた一路さん、オーストリア皇帝として年月を重ねていくフランツを演じた高嶺さん、鏡の間で凄まじい美しさを見せるエリザベートを演じた花總さん、ひと目見てヤバいと感じるルキーニを演じた轟さんが特に印象的。

視聴日


2019/9/23 (Blu-ray)

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