君と彼女と彼女の恋。―一度きりの怪作―

概要


「君と彼女と彼女の恋。」はニトロプラスの作品でAlternative ADV。学園を舞台に無個性な心一、幼なじみで学園の人気者の美雪、電波少女のアオイを中心にした物語。アオイに友達との付き合い方を教えるために心一は美雪に協力を頼み、三人で過ごすようになっていく。交友を深めていく中で互いの関係が変化していき、心一は決断を迫られるようになっていく。

以下ネタバレ注意

感想のまとめ


メタフィクションを駆使した異色のキャラゲー。美雪がプレイヤーに語りかけてくるシーンは衝撃的で、監禁されてからの流れと最後の選択肢は見事。膨大なイベント数かつ会話も少しずつ変わるので、最後まで楽しめる。選択肢の組み合わせで美雪に唯一無二の個性を持たせる手法も素晴らしい。アオイが描写不足なのと再プレイに向かないのが玉に瑕。

感想

美雪ルートでクリア
再プレイに適した作品ではないので、プレイした2014年当時のメモから作成

  • メタフィクションを駆使した異色のキャラゲー
    プレイヤーに美雪かアオイかを迫る二者択一のゲーム。一周目の平和な学園モノから一転して、二週目の後半で美雪がゲームを書き換えてメタフィクションになる。美雪の立ち絵が手前に来て、プレイヤーに語りかけてくるシーンのインパクトが凄まじい。美雪に監禁されてからの流れと最後の選択肢が見事で、忘れられない作品。

  • ゲームがアップデートされてからが本番
    一周目の平和な学園モノから二周目に不穏な空気となり、後半になると美雪がプレイヤーに語りかけながら心一たちを撲殺する。そして美雪がゲームをアップデートすることで、監禁されてしまう。美雪と交流しながら情報を集めるのが楽しく、解決の糸口だと思ったスマホのロック解除すら美雪の掌上だった衝撃は筆舌に尽くし難い。パッケージのコールナンバーを調べることでゲームの垣根も越えていくので、ゲームが現実を侵食してくる感覚を味わえる。

  • 余すところなく描かれる美雪の魅力
    美雪は学園モノとしてのヒロイン、バットで撲殺してくる姿、プレイヤーを掌上に運らす不敵な姿、プレイヤーが自分を選んで安堵する姿など、良い所も悪い所も存分に描かれている。対立関係になったことで、良い所も悪い所も描かれている。だからこそ魅力が増していて、思い入れのあるキャラクターになった。

  • 細かなネタが多い
    二周目に再び美雪ルートを選ぶと随所に変化があったり、改変後のシステムが古いゲームシステムだったりと芸が細かい。同じイベントでも少しずつセリフが変わったりするので、最後まで一気にプレイできる面白さがある。

  • BGMが良い
    BGMはほぼ全曲がピアノ調で落ち着いた曲が多い。作品の雰囲気とよく合っていて、落ち着付きたいときに聞くのにうってつけ。

  • プレイヤーにとっての美雪は世界に一人という設定が良い
    美雪の好みはいくつもの項目についてランダムに選ばれるため、同じ個性を持つ美雪が再現される可能性は天文学的な確率になっている。当時のメモによると決め球はカーブ、苦手科目は化学、嫌いなスポーツはテニスなどの個性だった。ゲームのキャラクターに世界で一人だけの個性を持たせることの設定がとても好き。

  • 一度きりのプレイに対してイベント数が膨大
    監禁中のイベントが豊富で、ゲーム起動時期に応じた会話も含めるとかなりのパターンが用意されている。再プレイを視野に入れていない構造なので網羅することはほぼ不可能で、ほぼすべてのプレイヤーがイベントを制覇できない贅沢な作品になっている。

  • 再プレイできないのが玉に瑕
    とても面白い作品だが、この作品の設定やシステムの関係で再プレイに向かない。作り込みが凄まじい作品だからこそ、再プレイできないのが玉に瑕。

  • プレイヤーに感情移入できない人は面白さが半減
    自分はキャラクター同士の恋愛を楽しむスタンスなので、この作品の一番美味しいところを逃した印象。プレイヤーに感情移入してプレイしている人が受けた衝撃は自分の比ではないだろうと思うと、少し羨ましくなる。

  • 良くも悪くも美雪が強すぎる
    美雪とアオイの二者択一を迫る構造だが、良くも悪くも美雪のキャラが立ちすぎていて、アオイが対立軸になれていない。美雪かアオイかではなく、美雪を好きか嫌いかになってしまうのが惜しい。

  • アオイ好きには不遇
    美雪に比べて描写が弱いのもそうだが、一周目でアオイを選ぶことができないのも難点。アオイルートを目当てでプレイした場合は理不尽なメタルートになってしまうのも惜しい。