概要
「盗賊」は三島由紀夫の初となる長編小説。子爵の子息である藤村明秀は、失恋を経て自殺を決意する。その最中に同じく自殺を考えている山内清子と共犯となり、自らの計画を遂行していく。
感想のまとめ
観念的な作品で、結末に至る必然性が理路整然と整え得られている点が素晴らしかった。理詰めで固められた心理描写と絵画的で美しいひと時の描写とのギャップが印象的で、まさに美しい日本語を楽しむことができた。他の三島由紀夫作品に比べて少し読み難い印象があったが、作品を重ねていく中で読みやすい文章に変えられていったのかもしれない。
感想
- 観念的な美しさ
観念的な作品で、独善的な二人が噛み合ったがゆえの悲劇性が美しかった。明秀と清子とが互いをちゃんと見ていれば回避できたというわけでもなく、破滅への一本道が理路整然と整えられている点が素晴らしかった。 - デートシーンが美しい
心中を決意している明秀と清子との交際シーンが非常に美しかった。心理描写は理詰めできっちりと書かれる一方で、幸せなひと時は絵画的で眩しいぐらいに綺麗だった。金閣寺や春の雪を描いた三島由紀夫らしい、神がかり的な文章をこの作品でも楽しむことができる。 - 少し読み難い文章
他の三島由紀夫作品に比べて、少し読み難い印象があった。作品を重ねていく中で、読み易い作品に修正していったのかもしれない。