概要
カジノ・ロワイヤル~我が名はボンド~は小池修一郎先生の脚本・演出による作品。イアン・フレミングの「007/カジノ・ロワイヤル」を原作とした本作は、イギリスの秘密情報部MI6に所属するジェームズ・ボンドの活躍を描いたスパイ小説の初作品。
感想のまとめ
退団公演に特化した身内向けの作品という印象。既視感のあるような得意分野に寄せた配役なので、退団者の晴れ姿を楽しむことに特化した作品だろう。特にジェームズ・ボンドの格好良さが素晴らしく、そういった楽しみ方が向いている作品だろう。
作品単体としては脚本や演出、バカラのシーンといった肝となる要素がこぞって微妙なのが残念。
以下ネタバレ注意
【全般】
- 退団公演に特化した作品
007を原作とする本公演だが、大作というよりも身内向けの退団公演に特化した公演になっている。既視感だらけだが得意分野に特化した配役や過去作品のセルフオマージュなど、これでもかと退団公演仕様になっている。退団者の晴れ姿を楽しむことに特化した作品だろう。 - 既視感ある配役だからこそ際立った芸
真風さん、潤花さん、芹香さんはどこかで前に見たことのあるような役どころ。既視感のある得意分野の配役だからこそ、抜群の安定感だった。スーツの着こなしや立ち姿、キスシーンで男役の真髄を見せる真風さんのボンド、よく通る声と華のあるビジュアルでヒロインぶりを発揮する潤花さんが特に素晴らしかった。芹香さんの悪役ぶりも流石だったが、脚本で割りを食っていた印象。 - 作品単体としては微妙
退団公演としては良いが、作品単体としてみるとかなり微妙。散らかり気味の脚本や、中途半端にコメディに寄せた演出、銃撃戦が映えないアクションシーン、緊張感に欠けたバカラのシーンと肝となる要素が軒並み微妙。特にせっかくのバカラでひりつくような勝負を見られなかったのが残念。
【個別】
- ジェームズ・ボンド (真風さん)
立って歩くだけであの貫禄、まさに男役がたどり着く一つの極致。クールなハードボイルドがここまで似合う男役はそういないだろう。スーツの着こなしやキスシーンの見せ方がとても素敵で、後の代にも継承してほしい格好良さ。所作はどれも素晴らしいが、キスシーンでの手の使い方が特に素敵。 - デルフィーヌ (潤花さん)
娘役の中では一二を争うぐらい好きだったが、最後まで持ち味を活かせる役に恵まれたと思う。どんな衣装でも着こなし、よく通る声と華のあるビジュアル視線を奪うヒロインぶりが素晴らしかった。夢に向かって進む聡明さのある女性を演じさせたらピカイチだった。 - ル・シッフル (芹香さん)
次期トップなだけあって余裕の二番手ぶり。既視感のある役、見せ場の少ない脚本、フィナーレの曲もなぜかイルカの曲と二番手最後の作品にしては不遇。それでもバカラのシーンでの貫禄が素晴らしかった。 - ゲオルギー (寿さん)
小者ぶりも見事だが、父親として息子たちに人生を説くシーンでの温かさが素敵だった。フィナーレでの群舞がビシッと決まっていたのも印象的。 - ミシェル (桜木さん)
退団者以外で誰を一番見たかと言われたら、多分桜木さん。細かな芝居がとても素敵で、出過ぎず引きすぎずの塩梅が素晴らしかった。あまり見ないほどのヘタレっぷりで、どんどんヘタれていく姿が良かった。甲冑に隠れるシーンはいつ動くのかとついつい視線が向いてしまったのを思い出す。 - マティス (瑠風さん)
長い手足が映えるスーツ姿によく通る声が印象的。銀橋で英米仏の三人が並ぶシーンの格好良さが素晴らしかった。歌も上手だったので、これからの公演で出番が増えていくのが楽しみ。 - フェリックス (紫藤さん)
金持ちというのも納得行くようなスマートな演じ方が印象的。よくエレガントという評価を耳にするが、この振る舞いかと納得するような品の良さだった。 - アナベル (天彩さん)
アクの強い役だったが、ギャグにしすぎず自然な演じ方が素敵だった。