少女☆歌劇 レヴュースタァライト
―アニメも映画も綺麗にまとめられた作品―

概要


アニメと舞台を連動させているブシロードのコンテンツであるスタァライト。
聖翔音楽学園という架空の音楽学校を舞台に、学校行事でスタァライトという作品を演じる舞台少女たちの物語。トップスターを目指すためにキラメキを奪い合う、オーディションが独特の要素になっている。
気がつけばアニメ・総集編・劇場版のすべてを見ていたので、所感を残す。

まとめ


演劇要素はあくまで自己表現のためのツールという特殊な作品。レビューシーンの演出・歌唱力が優れた作品で、アニメ本編時点でとても綺麗にまとまっていた。
新作劇場版ではアニメの後、それぞれの未来をとても綺麗にまとめていて、スタァライトという物語の帰着点として完璧。把握しきれないほど膨大なメタファーが光る作品で、見るたびに新しい発見を楽しめる。大迫力のレビューも見応え充分で、歌唱力も相まって映画館向けの作品。パンフレットの演出が良いので、パンフレット購入がお勧め。もしこれから劇場版を視聴するならば、音響の良い映画感を選ぶと良いかもしれない。

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ウマ娘―出来すぎだったゲーム―

概要


ウマ娘はCygamesによるソーシャルゲーム。競走馬を女性として擬人化させたゲームで、スマートフォン、DMMによるPCなどのプラットフォームで配信されている。
最近までプレイしていたので、振り返りを兼ねて所感をつらつらと書いていく。

まとめ


なめらかな動きと目まぐるしい表情を誇るグラフィックが最大の特長。このクオリティをスマートフォンでも軽快に動かす技術力は驚異的。元ネタをうまく活かしたシナリオや勝負服などもクオリティが非常に高く、グラフィック、シナリオ、衣装のクオリティが強みのゲームだった。
一方で強みを捨てる方向への展開が目立ち、このゲームを辞めることになった。元ネタの落とし込みが必要なシナリオへのハードルを下げつつ、他作品とのコラボも見据えたであろう異世界ネタのイベントはシナリオの出来がかなり酷い。便利な設定なので今後もこの設定が流用され、朱に交わればなんとやらでこのレベルのシナリオも増えていくのだろう。元ネタの落とし込みやキャラの扱いが良いシナリオだったので、この方向性はとても残念。
こだわり抜いた勝負服からの衣装違いの展開としても、いきなりウェディングドレスという飛道具を出してきたので、今後は季節に合わせた衣装を導入していくのだろう。
リリース当初の高すぎるクオリティに期待していたので残念だが、今後はよくあるソシャゲ路線を歩みつつ、対人イベントで盛り上げていくスタイルを取るのだろう。

 

長所


  • 圧巻のグラフィック
    ウマ娘が誇る最大の特長。ストーリーもレースもキャラがなめらかに動き、目まぐるしく表情が変化する驚異のグラフィック。レースやライブのような大人数のシーンでもクオリティが変わらない。PCで見ても満足できるクオリティをスマートフォンで、しかもかなり軽く仕上げている驚きの技術力。

  • 白熱のレースシーン
    レースシーンもこだわりが見える。キャラクターによって走り方に個性があり、スパートでは迫真の表情を見せる。プレイヤーがレース中に操作することはないが、見ていて楽しめるクオリティになっている。

  • 元ネタの落とし込みの上手いシナリオ
    実在の競走馬を元ネタにしているので、個別ストーリーはかなり配慮したものになっている。実場のエピソードを拾いつつもif性をもたせつつ、悪者を作らないように配慮されている。厳しい制約のおかげで生み出された、クオリティの高いクオリティはこの作品の強みだろう。

  • 元ネタからの落とし込みが光る勝負服
    ウマ娘の勝負服は、馬具や騎手の衣装をモチーフにしている。画像を見ると成程、と思う落とし込みがされていて面白い。

  • パワプロでおなじみの信頼と実績のある育成ゲーシステム
    育成システムはパワプロのサクセスといえば伝わる人も多いだろう。交通事故も爆弾もないサクセスと考えれば、面白さは保証されている。

 

短所


    • 強みを捨てる方向性へ進む運営
      このゲームを辞めるきっかけ。個人的にウマ娘の強みはグラフィック、シナリオ、勝負服のクオリティだろう。しかしシナリオと勝負服のこだわりを捨て、よくあるソシャゲ路線へ舵を取っている印象を受けた。リリース当初のクオリティが高すぎたのかもしれないが、せっかくの強みを捨てる方向は残念。

    • シナリオの強みを捨てる雑なイベント
      このゲームを辞めることになった最大の要因。直近の異世界ネタのイベントストーリーがあまりにも酷かった。元ネタの調査と落とし込みが必要なシナリオへのハードルを下げつつ、他作品とのコラボの導入も見据えたシナリオだったのだろう。ただ肝心の出来栄えが悪く、ウマ娘要素も異世界要素も中途半端で単純につまらない。
      キャラクターを掘り下げるイベントも選べるこの時期にあえてこのイベント、しかも便利な設定で今後も使うことを見据えているのが致命的。せっかくの強みだったシナリオに暗雲を感じた。メインストーリーなどしばらくは大丈夫だろうが、このレベルでOKが出たからには徐々にこのレベルに向かっていってしまうかもしれない。

    • こだわりの勝負服から大きく方向転換した別衣装
      前回のイベントではウェディングドレスを着用したキャラクターが導入された。一般衣装を導入することで、衣装違いキャラを導入しやすくしたのだろうが、流石にいきなりウェディングドレスは突飛すぎて浮いていた。

    • 荒れがちな対人イベント
      月一回の対人イベントとして用意されたチャンピオンズミーティング。報酬がかなり美味しいイベントだが、イベント中は界隈の空気が荒れ気味になる。対人要素が攻撃性を煽るのか、対人イベントを境にユーザーの空気が変わった印象もある。対人イベントと言うよりも、それによる雰囲気の変化が人離れを招いている印象。

    • 育成要素の不透明性
      育成要素にサイレントで修正が入っているのでは?と思う点がいくつかある。突然スキルの不具合が発生したことや、リリース当初のボーナスステージだったホープフルやジャパンカップで下位に沈むことが突然増えた点などに疑問を感じた。必要ステータスやランダム要素を修正したのでは?という印象。マスクデータが多い上にランダム性の強いゲームなので、今後もこの手の話題はあがるだろう。

ロミオとジュリエット (2012年月組) 感想
―卓越した演技力でねじ伏せた公演―

概要


原作は誰もが知っているシェイクスピアの恋愛悲劇。ジェラール・プレスギュルヴィックによるミュージカル作品を、小池修一郎先生が潤色・演出した公演。宝塚では3回目の公演。
14世紀のイタリア・ヴェローナを舞台に、対立している家柄のモンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットが恋に落ちるが、運命の悪戯によって悲劇となってしまう物語。原作から変更点もいくつかある公演。

 

感想のまとめ


優れた演技力が魅力で、細かな仕草の魅せ方が素晴らしい。演技力が高いだけでなく、歌唱力にも優れたメンバーが多いので歌のクオリティも高い。はまり役というよりは実力で役をねじ伏せている印象を受ける点が面白い。普遍的な愛と死に対してロミオたちの決断が運命を決めていく、人間ドラマの様相が強いロミオとジュリエットだった。
表情や仕草などの見せ方が非常に巧みな龍さんのロミオ、歌・演技・ダンスのすべてが凄い愛希さんのジュリエット、シェイクスピアは戯曲作家だと思い出させる役作りと歌唱力が素晴らしい美穂さんの乳母、若手であることを全く感じさせない貫禄と歌唱力の輝月さんの大公が特に印象的。

 

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シジミ少年の秀逸な死
―市川団八の魅力―

概要


市川団八はNightmare Syndrome様 (以下NS) のゲーム「シジミ少年の秀逸な死」に登場するキャラクターである。作品の感想は別記事 (リンク) に記載済み。
今回は作中で一番好きな市川団八について語る。NS作品には数多くの魅力的な作品・キャラクターがあったが、団八の異質さと煌めきは際立っている。10年以上彼の虜になっているが、すでにシジミ少年の秀逸な死を知っている人も少なく、語る機会もないからこその備忘録。

 

 

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アウグストゥス / Cool Beast!! 感想
―アントニウスとクレオパトラが魅力的な歴史ファンタジー―

概要


アウグストゥス―尊厳ある者―は田渕大輔先生の作・演出による作品。ジュリアス・シーザーの後継者であり、ローマ皇帝となったアウグストゥス。彼の歩んだ道程を、ブルートゥス、アントニウスたちとの対立を交えながら描いた作品。
Cool Beast!!は藤井大介先生の作・演出による作品。野獣の見る夢を描いたラテンショー。

 

感想のまとめ


アウグストゥスは歴史ファンタジーとして観るべき作品。アウグストゥスとポンペイアが心を通わせるシーンや、アントニウスとクレオパトラのシーンなど随所に魅力的なシーンが光る。その一方で、説明不足かつ登場人物が考えなしに見えてしまうのが惜しい。野心に満ちたアントニウスを力強く演じた瀬戸さん、ファラオとしての矜持と愛を選んだ女性を見せたクレオパトラを演じた凪七さん、愛憎入り交じったブルートゥスを演じた永久輝さんがお気に入り。
Cool Beast!!は花組のバラエティ豊かなダンサーを堪能できるショー。美穂さんの歌唱を心置きなく堪能できるショーで、美穂さんと歌う音さんの歌もとても素敵。

 

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