概要
CITY HUNTER―盗まれたXYZ ― は齋藤吉正先生による脚本・演出による公演。原作は北条司先生によって週刊少年ジャンプで連載されていた漫画作品。1980年代の新宿を舞台に、探偵・暗殺・要人警護などを請け負うスイーパー・冴羽獠を描いたハードボイルド・コメディ。
Fire Fever!は稲葉太地先生による作・演出による作品。
感想のまとめ
CITY HUNTERは原作や当時の東京への深い愛が特長の脚本で、散らかり気味のストーリーや微妙すぎる時事ネタを愛で許せるかで好き嫌いの分かれる作品。ビジュアルや動きの再現度の高さ、詰めに詰めたエピソード、生オケでのGet Wildなどが見せ場。特に限界まで低音で、色気を漂わせながら歌う彩風さんのGet Wildが好きなシーン。
Fire Feverは激しいダンスショーで衣装をバンバン変えながら大人数で踊っていく派手な演目。その中でも彩風さんが終始出ずっぱりで歌って踊ってトップとして引っ張る姿が凄まじい。歌唱シーンも様変わりし、彩風さんと朝美さんの癖のある歌唱、奏乃さんや久城さんの綺麗な歌唱を堪能できる。
徹底して研究されたコミカルな動きやハードボイルドな格好良さに加えて低音での色気を漂わる歌唱が凄い彩風さん、歌・演技・ダンスの全てで万能ぶりと男役を輝かせる技術をいかんなく発揮した朝月さん、堂々たる二番手としてすべてのシーンで安定感のある朝美さん、巨漢の海坊主を見事に再現した縣さん、悪役で見たい要素をすべて見せてくれてFire Fever!での歌唱も素晴らしい久城さんがお気に入り。
以下ネタバレ注意
感想
【CITY HUNTER】
原作はアニメを数話見ただけで大まかなキャラクター像とGet Wildを知っている程度で観劇。
- 原作・当時の東京への深い愛が見える脚本
原作、当時の東京への深い愛を感じさせる点が脚本の強み。原作を履修していなくても原作ネタを盛れるだけ盛ったのがよくわかるので、原作を予習したほうが楽しめる作品だろう。贔屓目に見ても良い脚本だとは思わないが、愛ゆえに憎めない脚本だった。 - 散らかり気味の脚本
原作への愛ゆえにエピソードを詰め込みすぎて脚本のまとまりが悪く、当時の時事ネタが微妙なチョイスに加えてくどい。完成度は原作への愛と時事ネタでカバーする、好き嫌いがわかれる作品で、良くも悪くも二昔前のOVAやアニメ映画を思い出させる仕上がりになっている。 - 新生雪組を印象づける見せ場の多さ
脚本のまとまりは良くないが、詰め込んだエピソードの数だけ見せ場がある。多くの生徒に見せ場があり、新生雪組のお披露目としてうってつけの作品。普段から雪組を観ていると新体制になったことを実感するし、あまり雪組を見ていなくても気になる人を見つけやすい脚本になっている。 - 宝塚であのGet Wild
アニメ版CITY HUNTERの代名詞になっている、あのTM NETWORKのGet Wildを宝塚で聞くことができる。彩風さんの歌唱は綺麗に伸びる中高音の得意音域ではなく、色気を漂わせながら歌う低音域。少し変化球だが密かに広い音域を誇る彩風さんならではのチョイスで、彩風さんの曲としてGet Wildが映える名シーンになっている。 - 役の作り込みが凄い
ベルサイユのばらなど原作の落とし込みに定評のある宝塚はCITY HUNTERでも健在。華奢な体格を完璧にカバーしつつ、原作のイメージを見事に再現している。その中でも縣さん演じる海坊主は体格と仕草も相まって、さらに一回り大きな姿が印象的。アニメ調のコミカルな動きも見事に再現されていて、職人芸を楽しめた。
【Fire Fever!】
- 激しいダンスショー
新生雪組での初めてのショーは彩風さんのカラーに合わせたダンスショー。その名にふさわしい激しいダンスショーは見応え充分。大人数でも動きが綺麗に揃ったダンスは圧巻で、色々なタイプのダンスを楽しむことができる。激しいダンスショーであるにも関わらず、彩風さんは出ずっぱりで歌って踊り続けてくれるので、トップの姿をこれでもかと見せてくれる。彩風さんの持ち味の個々の動作が綺麗なダンスと雪組の統一されたダンスが合わさり、激しくも調和したダンスという新しいカラーになっている。 - 歌唱シーンも様変わり
歌唱シーンも印象が変わっていて、歌の得意の人が多く出番を持っていた印象。彩風さんは色気のある低音域を中心とした歌い方で、うなり上げるタイプの朝美さんと二人で癖のある歌唱シーンを作り出している。ビジュアルと少しギャップのある癖の強い歌唱がとても素敵で、とても映えるショーになっている。一方で奏乃さんや久城さんが重用されていて、二人の歌唱シーンがとても素晴らしかった。特に久城さんの歌うシーンが感動的で印象に残っている。 - 豪華で派手なショー
今回のショーは視覚的にかなり派手。ダンスも派手なら衣装も派手で、バンバン衣装を変えていくので豪華なイメージ。さらにラインダンスなど大人数でのシーンも多く、曲のイメージよりも派手なショーを楽しむことができる。
【個別】
- 彩風さん
CITY HUNTERでは冴羽獠のコミカルさとハードボイルドさの演じ分けがとても素敵。特にコミカルなシーンでの動き方がアニメ的で、役の落とし込みが素晴らしい。得意な役柄・音域でなくても躍動感溢れる動きとハードボイルドな格好良さ、色気漂う低音で冴羽獠を作り込んで来たのが凄い。
Fire Fever!ではずっと歌って踊り続けるハードなショーで、こちらも低音を中心とした歌と伸びやかなダンスで中心に立つ姿は流石の貫禄。踊り続けてしかも低音域でもこの安定感なので、今後も色気漂うショーがとても楽しみ。ダンスは持ち味のブレない軸と伸びやかな動きが激しいダンスでもひときわ映えていて素晴らしい。
どんな作品が来ても作品のカラーに合わせることができる、そんなトップスターとしての今後がとても楽しみな公演だった。 - 朝月さん
CITY HUNTERでは香の作り込みが素敵で、100tハンマーの扱い方がアニメ的で好き。気持ちが揺れているときの演じ方は流石で、アニメよりも女性的な役作り。朝月さんといるときの彩風さんが更に格好良く見えるのが印象的で、男役をさらに輝かせるタイプの演じ方が凄い。Fire Fever!でも彩風さんとの相性が良く、1+1を3にするタイプだなぁという印象。歌もダンスも安定していて、香のような役も合わせ込める万能ぶり。彩風さんと合わせて作品を一切問わない万能なトップコンビとして今後の演目がとても楽しみ。 - 朝美さん
CITY HUNTERではミック役で、華のある役がとても似合う。彩風さんと朝美さんの少し癖のある演じ方も相性が良く、二番手として堂々たる振る舞いは流石。朝美さんも何でもできるタイプなので、二番手としていろいろな役を見ていくのが楽しみ。Fire Fever!では歌唱の癖が全開で、爽やかなビジュアルとのギャップが素敵。 - 夏美さん
CITY HUNTERでの登場で、海原の悪役としての貫禄ある姿がとても素敵。原作でどうかはわからないが、獠に向ける態度から時折見える不器用な愛情がとても印象的で、悪役であると同時に一人の人間でもある姿が見え隠れしてとても好きだった。 - 奏乃さん
CITY HUNTERでは警視総監役で、首相との板挟みという中間管理職ぶりは流石。背負うものが多くて身動きが取りにくい役を演じたらピカイチだと思う。Fire Fever!では冒頭の歌唱シーンがとても素晴らしく、雪組で一番綺麗に歌う人だと思う奏乃さんがショーを最高に盛り上げてくれて素敵だった。 - 久城さん
CITY HUNTERでは劔会の会長として、裏社会の人の色気がとても素敵。佇まいや仕草がまさに期待しているヤクザの会長のそれで、話していないシーンでもずっと見ていたくなる素晴らしさ。Fire Fever!での歌唱シーンでの感情の乗せ方がとても素敵で、思わず涙腺が緩みそうになる素晴らしさだった。今後も悪役やいろいろな役、ショーでもいろいろな歌で出番が楽しみ。 - 真那さん
CITY HUNTERではジェネラルの漫画らしい悪役ぶりが良く、真那さんの新しい一面を見た気分。今回の真那さんの見せ場はむしろFire Fever!の方で、色気あるダンスと銀髪の相性が最高。銀髪であの格好良さ、ダンスも素敵で視線をかなり奪われるのでジェネラル役が真那さんで本当に良かった。 - 綾さん
CITY HUNTERでは槇村として、死者でありストーリーテラーというかなり特殊な立ち位置。場面ごとでの振る舞いの違いが印象的で、幽霊というよりは思い出としての存在なんだろうと思わせる役作りが素敵。 - 縣さん
CITY HUNTERでの海坊主の巨漢ぶりがとても印象的で、実際のサイズ以上に大きく見せる技術がとても素晴らしかった。予想を遥かに超える完成度の高さで、今後活かす機会を作って欲しいと思うほど良かった。Fire Fever!は持ち前のグイグイと出てくる華のあるダンスがとても素敵で、得意のダンスで今後も活躍してくれるのが楽しみ。 - 夢白さん
CITY HUNTERではアルマ王女役で、勇気を振り絞って前へ進もうとする少女ぶりがとても素敵。ヴェネチアの紋章とは全く異なる役柄も軽々と合わせてくる実力派で、今後色々な役を見るのが楽しみな人。 - 彩さん
CITY HUNTERでは冴子役で、老若男女問わずに演じる彩さんの強みがとても出ていたと思う。色気のあるキャリア系という見せ方がとても上手で、きっと月組でも演技派として活躍してくれるはず。 - 沙月さん
Fire Fever!で躍動する姿がとても素敵で、いつも素敵なダンスを見せてくれた沙月さんの退団公演に相応しいシーンがとても良かった。わがままを言えばCITY HUNTERで女優役を見たかった。 - 諏訪さん
CITY HUNTERでは政役で、コメディ担当。圧のある役柄が得意と思いきや、軽めのコメディもきっちり決めてくるところが凄い。Fire Fever!ではあちこちで歌っていて、雪組の歌唱担当としての地位を築きはじめていて嬉しい。