暁のローマ 感想
―あまり構えずに見るべき作品―

概要


暁のローマは木村信司先生による脚本・演出で、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」を原作としたロックミュージカル。古代ローマのユリウス・カエサル暗殺を描いた作品で、カエサル、ブルータス、アントニウス、カシアスを中心に描かれている。

感想のまとめ


原作の名シーンでもある演説シーンやクライマックスは秀逸。名シーンなどの見せ方が良いので、あまり構えずに美味しいシーンをつまみ食いする形で見るのが良いタイプの作品だろう。
一方で演出はかなり微妙。コメディなのかシリアスなのかわからない演出はなぜ採用されたかがわからない。歴史解釈も微妙で、ローマ史か原作を予習しないと背景を理解できないが、予習をすると歴史解釈に疑問符が浮かんでしまう。
カリスマ性と力強い歌声を見せてくれたカエサルの轟さん、苦悩する姿がとても素敵だったブルータスの瀬奈さん、演説シーンが最高だった霧矢さんがお気に入り。


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ロミオとジュリエット (2012年月組役替わり) 感想
―噛み合っている禁じ手の役替わり―

概要


原作は誰もが知っているシェイクスピアの恋愛悲劇。ジェラール・プレスギュルヴィックによるミュージカル作品を、小池修一郎先生が潤色・演出した公演。宝塚では3回目の公演。
14世紀のイタリア・ヴェローナを舞台に、対立している家柄のモンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットが恋に落ちるが、運命の悪戯によって悲劇となってしまう物語。原作から変更点もいくつかある公演。

感想のまとめ


ロミオ/ティボルトの両方で見せ方上手で器用な龍さんと完璧なロミオぶりを誇る明日海さんだからこそ実現した、禁じ手のような役替わり。独りになったときに深い孤独を見せる表情や、マーキューシオたちとの決闘のシーンでの見せ方がとても上手な龍さんのティボルト。ジュリエットとの恋に落ちて世界が輝いて見えるようになる変化がとても素敵な明日海さんのロミオ。非常に特殊な役替わりだろうが、どちらも繊細で王道な演技がとても素敵だった。



役替わりの記事は別 (リンク) に記載。

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ヨスガノソラ (アニメ)
―原作とは別物だが傑作―

概要


ヨスガノソラはSphereによるアダルトゲームで、今回はそのアニメ作品について記載する。地上波作品とは思えぬほど過激な性描写で話題となり、耳にした人も多い作品。いざ見てみると性描写だけで語るにはあまりにも勿体ない作品だったので、感想をメモする。

まとめ


数話ごとにルートをまとめ上げる見事な構成力と洋画のような演出が光る作品で、穹ルートでの演出はまさしく芸術。寂寥感を与える田舎の描写とBGMが心地よく、夏に視聴するのにうってつけ。本編のシリアスな雰囲気に合ったOPと挿入歌、ポップなおまけパートにぴったりなEDで楽曲の使い分けも巧み。
過激な性描写を含み、近親相姦を含む点、原作とはあえて逆のアプローチを取っている点など人を選ぶ要素も多分に含まれているが、エロアニメの一言で片付けるにはあまりにも勿体ない作品。

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婆娑羅の玄孫
―愛が込められた最高の当て書き作品―

概要


婆娑羅の玄孫は植田紳爾先生の作・演出による作品で、轟悠さんの退団公演。
江戸時代を舞台に、近江蒲生郡安土を治める佐々木家の当主家次男として生まれるも家から縁を切られた佐々木蔵之介、改め細石蔵之介を主人公とした作品。正義感が強く粋な男、そんな蔵之介の生き様を描いた作品を専科の轟さんと汝鳥さん、そして星組メンバーが演じる。
  

感想のまとめ


植田先生から轟さんへの愛が込められた最高の当て書き作品になっている。蔵之介と轟さんを重ねたクライマックスは、物語としても轟さんへのメッセージとしても感動的。メリハリのある2本立てのストーリー、和物らしい美しい所作や殺陣を堪能できる構成、テンポの良い江戸言葉による掛け合いを楽しめる。
すべての所作で男役の極致を見せてくれる蔵之介を演じた轟さん、専科同士だからこその重みと阿吽の呼吸を見せてくれる彦左を演じた汝鳥さん、軽妙な掛け合いから憂いを帯びた姿まで完璧なお鈴を演じた音波さん、軽く明るく華のある江戸男の権六を演じた極美さん、ガラッと変わる一人二役を見事に演じ分けた阿部 / 頼母を演じた天華さんがお気に入り。

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少女☆歌劇 レヴュースタァライト
―アニメも映画も綺麗にまとめられた作品―

概要


アニメと舞台を連動させているブシロードのコンテンツであるスタァライト。
聖翔音楽学園という架空の音楽学校を舞台に、学校行事でスタァライトという作品を演じる舞台少女たちの物語。トップスターを目指すためにキラメキを奪い合う、オーディションが独特の要素になっている。
気がつけばアニメ・総集編・劇場版のすべてを見ていたので、所感を残す。

まとめ


演劇要素はあくまで自己表現のためのツールという特殊な作品。レビューシーンの演出・歌唱力が優れた作品で、アニメ本編時点でとても綺麗にまとまっていた。
新作劇場版ではアニメの後、それぞれの未来をとても綺麗にまとめていて、スタァライトという物語の帰着点として完璧。把握しきれないほど膨大なメタファーが光る作品で、見るたびに新しい発見を楽しめる。大迫力のレビューも見応え充分で、歌唱力も相まって映画館向けの作品。パンフレットの演出が良いので、パンフレット購入がお勧め。もしこれから劇場版を視聴するならば、音響の良い映画感を選ぶと良いかもしれない。

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