めぐり会いは再び next generation / Gran Cantante 感想 ―宝塚屈指の歌唱力と切れ味抜群のダンスを堪能できる作品―

概要


めぐり会いは再び next generationは小柳奈穂子先生の脚本・演出による作品。フランスの劇作家マリヴォーの「愛と偶然との戯れ」をモチーフにした作品の三作目で、過去作から10年後の王国を描いた作品。
Gran Cantante!!は藤井大介先生の演出による作品で、スペインをモチーフにしたレビュー作品。

感想のまとめ


めぐり会いは再び next generationはライトなラブコメ作品で、当て書きならではの餞別が光る作品。歌唱力に優れたメンバーが多く、歌唱シーンが素晴らしい作品。
Gran Cantante!は歌もダンスもハイレベルなショーで、礼さんや美穂さんの凄まじい歌唱力や星組でしか味わえないキレの良いダンスが特長。テンポの良い作品で、礼さんの変幻自在な歌唱や美穂さんの圧巻の歌唱力、舞空さんの格好良いダンスなどが光る作品。
お気に入りはゴスペル風な曲からJPOP風な歌い方まで変幻自在な歌唱力と切れ味抜群なダンスが素晴らしい礼さん、力強く綺麗な歌声で作品のクオリティを跳ね上げる美穂さん、芝居の声のまま綺麗に歌い上げ小芝居も面白くて目を離せない天華さん、芝居に殺陣に歌にダンスとすべての領域が巧みでメンバーを引っ張っていく綺城さん、抜群のビジュアルで視線を釘付けにしてくる極美さん、低音の響きが素晴らしい輝咲さん、芝居も歌も本当に器用で素敵だった音波さん。

以下ネタバレ注意

感想


【全般】

めぐり会いは再び next generation

  • ライトなラブコメ作品
    一作目は喜劇作品をベースにしていたが、三作目までくると完璧なオリジナルだからかラブコメ作品に。星組は重めな作品が続いている印象なので、気軽に楽しめる貴重な作品。

  • 過去作は履修したほうが良いかも
    登場人物はだいぶ入れ替わってしまったが、一部の人物は一作目からの継続出演。この作品が初めてでも楽しめるように配慮されてはいるものの、過去作を履修したほうが話の流れを追いやすい印象。

  • 歌唱シーンが充実
    礼さんをはじめ、歌唱力に優れたメンバーを活かすためか歌唱シーンが充実している。過去作はストリートプレイに近かったが、今作はミュージカル系。ルーチェ陣営は礼さん有沙さん瀬央さん天華さん、悪役陣は綺城さん、別枠で美穂さんに音波さんと各陣営に歌の上手な方を揃えているのでどのシーンも歌が素晴らしかった。

  • ボリュームはシリーズで一番
    上演時間が長くなったため、これまでで一番ボリュームのある作品になっている。上演時間に合わせて盛り込み方を変えてきた小柳先生の強みが出ていて、コンパクトな芝居から通常の芝居作品に合わせて来たのは流石。

  • 当て書きならではの手厚い餞別
    本作で退団する天寿さん、音波さん、華雪さんへの餞別が手厚かった印象。三人にしっかりと見せ場が用意されていて、当て書き作品の強みを感じた。

Gran Cantante

  • 歌もダンスもハイレベルなショー
    歌もダンスも得意な人が引っ張るスタイルなので、かなりハイレベルなショーになっている。歌もダンスも引っ張る礼さん、宝塚屈指の歌唱力を誇る専科の美穂さん、ダンスで引っ張っていく舞空さんをはじめ、歌唱力が光る綺城さんや有沙さん、歌唱力もダンスも器用な天華さんなどが上手く配置されていて見応え十分だった。

  • テンポの良いショー作品
    星組メンバーが凄いのかひとつひとつの場面が短いのか、かなりテンポの良いショー作品という印象を受けた。途中でダレることなく最後まであっという間に進んでいくショー作品なので、楽しい時間はあっという間という感覚だった。

  • キレの良いダンスが特長
    キレの良いダンスが特長。礼さんや舞空さんなど、キレッキレのダンスを楽しむことができる。普段はゆったりと優雅なダンスが好きだが、ここまでキレが良いと見ていて爽快なので星組でしか味わえない楽しみになっている。

  • 変幻自在な歌唱を誇る礼さん
    今回のショー作品は色々なタイプの曲が混在していて、それを歌い分ける礼さんの歌唱力が際立っている。宝塚らしい曲、JPOP風な曲、ゴスペル風な曲で歌い方を変えてくるので、どれもピッタリと合っている。アカペラで歌うゴスペル風な曲が特に素晴らしかった。

  • 美穂さんの歌が凄い
    宝塚でもピカイチの歌唱力を誇る美穂さんがフル回転で登場する。その力強くて綺麗な響きの歌声で、出てくる度にクオリティを上げていく歌唱シーンは素晴らしく、礼さんとの歌唱シーンは必見。宝塚屈指の歌唱力を誇る二人の歌を楽しめる素晴らしいショーになっている。

【個別】

  • 礼さん (ルーチェ)
    歌唱力もダンスも圧倒的。礼さんのこれが観たかった!という圧倒的な技術力を楽しむことができた。演技の方も素敵で、ここ一番での格好良いシーンは勿論決まっているし、アンジェリークの正体を知るシーンやオンブルに怒るシーンなど苦悩する姿もとても似合う。
    ショーでも凄まじく、心の底から惚れ惚れするような歌唱が素晴らしかった。低音から高音まで綺麗に響き渡る歌声が素晴らしく、最近のJPOP風な高音の抜き方も格好良かった。歌だけでも素晴らしいのに、ダンスもキレッキレなのも凄まじい。どれだけ踊ってもブレないだけでなく、踊りながら歌っても抜群の安定感を誇る歌唱力を堪能できて満足。

  • 舞空さん (アンジェリーク)
    芯の強い女性が似合うタイプなので、この役もぴったりだった。上品さを損ねない気の強さが良いバランスで、ちゃんと貴族のご令嬢なのが良かった。
    ショーでのダンスがとても素敵で、バンッ!とセンターで踊る姿がとても格好良かった。綺麗でも可愛いでもなく、格好良くて素敵だった。

  • 万里さん (マダム・グラファイス)
    高貴なオーラがとても素敵で華やかだった。貴族たちのお話だと思い出させてくれる華やかさで、登場するだけで作品が上品になる素敵な方だった。

  • 美穂さん (エメロード)
    歌姫はまさに美穂さんのための役。宝塚でも一二を争う歌唱力が存分に発揮されていてとても素敵だった。裏でワチャワチャしているお芝居も楽しそうで、旅芸人で色々な経験をしてきたのだろうと伝わってきて好き。
    ショーでもその抜群の歌唱力を発揮してくれていて、クオリティをぐっと引き上げている。礼さんとの歌唱シーンは特に素晴らしかった。

  • 美稀さん (フォーマルハウト)
    過去作から楽しみにしていた軽妙な語り口がとても素敵だった。スルスルと頭に入ってくる語りがとてもわかり易く、喜劇作品らしい動き方も印象的。

  • 天寿さん (ユリウス)
    過去作からオルゴン家に仕えてきたことによる慈しみの表情がとても素敵だった。退団公演ということもあり美味しい場面が多かったが、芝居では謙虚に、ショーでは華やかに盛り上げる姿がとても良かった。

  • 音波さん (レオニード)
    星組を初めて観たのは全ツ版アルジェの男だったので、初めての星組ヒロインだった音波さん。退団公演でもすべての分野でのハイレベルさは健在。年月を経て成長したレオニードの姿も素敵だったが、マリオの手紙を聞いたときの可愛さも必見。一瞬で過去作の可愛い姿に戻る演技力が素晴らしかった。歌唱力も抜群で、天寿さんたちと歌うシーンが素敵だった。

  • 輝咲さん (ローウェル公爵)
    めぐり会いで一際低音の素敵な公爵を見て、誰だろうと帰り道で調べたのが輝咲さん。王家に捧ぐ歌でのアモナスロもそうだったが、抜群の安定感を誇る低音の歌唱が素晴らしかった。

  • 瀬央さん (レグルス)
    良くも悪くもまともな人で、周囲に比べて少し薄い役だが誠実そうな感じが素敵だった。有沙さんとの歌唱シーンが特に素敵だった。実は歌が上手になってきた人らしいが、私の中ではロミジュリの頃から一貫して歌上手なスター。
    ショーでは楽しみにしていた眼力がとても印象的で、歌と圧で場面を作っていくのが素敵だった。

  • 綺城さん (宰相オンブル)
    悪役ぶりと歌唱力が素晴らしく、殺陣もこなす器用さが光っていた。芝居もショーも複数名で歌うシーンが多いが、綺城さんの歌唱によってシーンがビシッと決まっていて素敵だった。

  • 有沙さん (ティア)
    貫禄のある役が多い印象だが、軽めの役も難なくこなす抜群の芝居上手。得意なのは貫禄のある役だろうけれど、どんな役でも120点に仕上げてくる素晴らしさだった。歌唱力も抜群で、瀬央さんとの歌唱シーンがとても素敵だった。

  • 天華さん (セシル)
    配信を観てずっと気になっていた天華さん。抜群の器用さが素晴らしかった。エルモクラートを思い出させる冴えない作家先生だが、耳心地の良い明瞭な声での語りが素敵で、その声のまま歌うのでとても自然。裏での小芝居も面白く、この公演で観ようと意識して良かった。
    ショーでは格好良さが全面に出てきていて、身のこなしの良さが際立ってこちらも素敵だった。

  • 極美さん (ロナン)
    得意な役が来たときの破壊力が凄まじかった。登場した瞬間、これで相手が落ちなきゃ出来レースと思わせる完璧なビジュアル。悪役側だが父の気持ちと自分の気持との間で悩む役で、父に向ける表情から見える苦悩がとても素敵だった。丁寧な役作りをする印象があるので、ビジュアルも活かせるこういった役がとても合っていた。