ピガール狂騒曲/WELCOME TO TAKARAZUKA 感想
―匠の技によるドタバタ喜劇―

概要


WELCOME TO TAKARAZUKAは和物レビューで、坂東玉三郎さんが監修。クラシック曲に合わせた舞踊が特徴。
ピガール狂想曲は原田諒先生作・演出。シェイクスピア喜劇の「十二夜」をモチーフに、舞台を1900年のパリ・ピガールに移した作品。十二夜がモチーフなので、主演の珠城りょうさんは男女2役を演じる作品。

感想のまとめ


WELCOME TO TAKARAZUKAは華やかで身のこなしの美しさが素敵なレビュー。何度も繰り返されて覚えやすい主題歌と松本さんのシーンが特に印象的。
ピガール狂騒曲はシェイクスピア作品らしいドタバタ喜劇で、テンポの良い掛け合いと小芝居が楽しい作品。珠城さんが歩き方や仕草までガラッと変えて、一人二役を演じ分ける姿が印象的。暁さんを中心としたダイナミックなダンスも見どころ。


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炎のボレロ/Music Revolution! New Spirit 感想
―王道は良いもの―

概要


「炎のボレロ」は柴田侑宏先生作で中村暁先生演出の作品。メキシコを舞台に、フランス支配下の政府に全てを奪われた貴族の青年アルベルトが、祖国の独立を取り戻すために奮闘する物語。
「Music Revolution! -New Spirit-」は中村一徳先生作・演出で、2019年度公演の同ショー演目をリニューアルした内容。

感想のまとめ


「炎のボレロ」は古き良き王道を行く作風でキャラとキャストを楽しむことのできる作品。伸びやかで綺麗なダンスシーンと久城さんの悪役ぶりが印象的。
「Music Revolution! -New Spirit-」は見応え抜群なダンスと成長著しい歌唱を楽しめる作品。歌って踊ってのフル回転で抜群の安定感を見せた彩風さん・朝美さん、歌が飛躍的に上手くなった懸さん、出だしから聞き惚れる久城さんが特に印象的。

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ドン・ジュアン/モリエール/鈴木力衛 訳/岩波文庫/感想
―会話のテンポがとても良い喜劇―

概要


フランスのモリエールによる作品で、鈴木力衛による翻訳。スペインのドン・ジュアン伝説がもとになっている。数多の女性を口説き落としては捨てていくドン・ジュアン。結婚詐欺師で快楽の探求者、無神論者で偽善者である彼の物語。

感想のまとめ


会話のテンポがとても良く、ドン・ジュアンの二枚舌ぶりが楽しい作品。
登場人物を使い捨てるかのごとく新しいエピソードへ進んでいくので、彼の奔放な旅を思わせる楽しさがあった。ドン・ジュアンはいろいろな側面を持っていて、物語が進むほど彼を知っていく楽しみがある。
キリスト教を揶揄するシーンも印象的で、これだけやればそりゃ揉めるだろう、というような揶揄の仕方がとても印象的。

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神家の七人 (専科) 感想―平和で心が温まる作品―

概要


齋藤吉正先生による作・演出の、オリジナルコメディ作品。専科と一部の月組生による公演。

第二次大戦後のアメリカ東部の都市ボルチモアが舞台。欧州戦線をから帰還したイヴァン・ターナーは、父の死を知らされる。マフィアのボスである父が起こしたターナーズコーポレーションを継ぐ事になったイヴァンは、ファミリーを解散して神父への道を選ぶ。イヴァンの発言に動揺した幹部だったが、彼らはイヴァンを見守るために同じ道を進む決意をした。神の道を歩む彼らの前には、予期せぬ波乱が待ち受けていた。

感想のまとめ


笑えて心も温まるストーリーで、後でニヤリとしたくなる伏線もある、コメディベースでハートフルな脚本がとても良かった。
専科の人が中心となった公演で、壮年期の低い声でも聞き取りやすいセリフ、何気ない動きまで美しい身のこなし、テンポの良い掛け合い、まるで別人のように変わる一人二役 (以上) と技術の粋を感じられる公演だった。

観劇日


2020/6/8
Blu-ray
凱旋門を初観劇する前日に、宝塚ホテルで10分程度視聴済。

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オネーギン/プーシキン/池田健太郎 訳/岩波文庫 感想
―美しい情景に引き込まれる作品―

概要


ロシアのプーシキンによる作品で、韻文小説。池田健太郎先生による翻訳は、韻文ではなく散文形式。
プーシキンを思わせる作者が、読者へ語りかけながら進んでいく独特の形式。オネーギンはタチヤーナの恋心を無下に断るが、何年か後に再会した際に彼は恋に落ちてしまう。情熱的にのめり込んでいくオネーギンだが、彼の恋は実ること無く終わりを迎えてしまう。

感想のまとめ


綺麗な情景の作品で、めぐる季節にロシアの文化、人々の心情の描き方が美しくて心地よかった。派手な物語がなくても引き込まれる、そんな素敵な作品。散文形式の翻訳は情景に浸りやすく、自分好みの翻訳だった。一気に読むよりも、じっくりと味わいながら楽しみたくなる作品。
タチヤーナがとても魅力的に書かれていて、彼女の変化していく描写がとても良かった。
オネーギンは前半の塞ぎがちで冷たい美青年ぶりと、後半での縋るように情熱的な愛を見せる姿のギャップがとても素敵だった。

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