かもめ・ワーニャ伯父さん / チェーホフ / 神西清 訳/ 新潮文庫
―かもめのラストシーンは必見―

概要


かもめ・ワーニャ伯父さんはロシアのチェーホフによる作品。かもめ、ワーニャ伯父さん、三人姉妹、桜の園はチェーホフの四大戯曲と呼ばれる作品で、本書はそのうち2作を収録している。
「かもめ」は作家志望のトレープレフ、女優志望のニーナ、人気作家のトリゴーリン、大女優でトレープレフの母アルカージナなどの登場人物の人生を描いた群像劇。ニーナのモデルなど、チェーホフ自身の身の回りで起こった出来事が随所に散りばめられている作品でもある。
「ワーニャ伯父さん」は退職した大学教授の屋敷を舞台にした作品で、登場人物たちの人生観が絡み合う群像劇である。

感想のまとめ


「かもめ」はチェーホフらしい静的な物語で、ゆったりと腰を据えて読むのがおすすめの作品。ニーナとトレープレフが最後に会話するシーンの美しさは必見で、芸術的な名シーン。登場人物たちの噛み合わなさ、作品を通じて語られる人生への希望が魅力の作品。
「ワーニャ伯父さん」はワーニャ伯父さんの生き様に無情さを感じる作品で、どこまでもやるせない。やるせなさの果てに見出した結論が魅力の作品。

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ロミオとジュリエット/シェイクスピア/福田恆存 訳/新潮文庫
―新潮文庫がオススメ―

概要


シェイクスピアの代表作品であり、誰もが結末を知っているであろう恋愛悲劇。
イタリア北部のヴェローナを舞台に、敵対する家に生まれたロミオとジュリエットとが恋に落ち、破滅的な結末を迎える物語。

感想のまとめ


何度読んでも楽しめる不朽の名作。運命に翻弄されていくストーリー、要所で美しい表現と軽妙な台詞回しが特徴的。物語と台詞回しのどちらも素晴らしく、シェイクスピア作品を楽しむのにうってつけの作品。
翻訳は新潮文庫の福田恆存訳が、日本語としての読みやすさとテンポに優れていてオススメ。

 

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パルムの僧院/スタンダール/大岡昇平 訳/新潮文庫/感想
―後半が面白い作品―

概要


フランスのスタンダールによる作品で、大岡昇平による翻訳。イタリアのパルム公国を舞台に、貴族の青年ファブリス・デル・ドンゴと周囲の人間たちの生き様を描いた小説。

感想のまとめ


恋愛と政治がファブリスを中心に絡み合っていくので、尻上がりに面白くなる作品。激しい恋愛と宮中の政治は読み進めるほど面白さが増していく。登場人物によって形の違う愛の描き方がとても魅力的。自分の思いに一直線で憎めない魅力のあるファブリス、美貌と知略を駆使して宮中で立ち回るジーナなど、登場人物も魅力的。

感想


  • 尻上がりなストーリー
    序盤はファブリスの冒険譚が中心で、中盤からファブリスとクレリアの恋愛とジーナやモスカ伯爵の宮中政治とが、ファブリスを中心に絡み合って行く。クレリアやジーナ、モスカ伯爵の人生がファブリスを軸に動いていくストーリーは読み応え十分。読めば読むほど物語が面白さが増していき、下巻はあっという間に読み終わる面白さ。

  • 愛の描き方が良い
    登場人物それぞれ愛の形が違っていて、その描き方がとても素敵。
    ファブリスの幸福へひたすら突き進む愛と、クレリアの苦悩の果てにファブリスを選んでしまった愛とはとても情熱的で魅力的。一方ジーナとモスカ伯爵は献身と苦悩が際立っていて、報われて欲しくなる愛。フェランテの見返りを求めない献身的な愛もまた違った魅力があり、愛に満ちた物語かもしれない。

  • 無常を感じる結末
    とても激しい大恋愛や政治の結末は無常であっさり。ファブリスとクレリアの子供は病死、クレリアは自殺、ファブリスはその後一年ほどで死去、ジーナもその半年後に死去。あまりにもあっさりとした文章で物語の幕を閉じるので、物語から一気に現実に戻される感覚。読み終えて現実に立ち返るのに丁度よいのかもしれない。

  • ファブリスの憎めない人物像
    主人公のファブリスが不思議な魅力を持っている。駄目な形で貴族のボンボンぶりを発揮して行く先々で危機に陥るも、周囲の善意によって助けられる。つい助けたくなるのも頷ける人柄が魅力的で、一つのものに一直線に進み続ける姿が好きだった。ただあまりに浅慮なので、好き嫌いが分かれる人物像かもしれない。

  • ジーナがとても魅力的
    この作品で第二の主役であろうジーナがとても魅力的。際立った美貌と知略を駆使して、ファブリスのために立ち回る政治劇がとても面白い。敏腕のモスカ伯爵が味方にいるとはいえ、大公たちを相手に大立ち回りを見せる彼女の見せ場が作中屈指の見どころ。

  • モスカ伯爵の苦難が良い
    比較的常識人のモスカ伯爵も魅力溢れた人物。ジーナへの愛で苦悩してファブリスに嫉妬もするし、宮中の政治はストレスばかり。悩みながらも正しいことをしてきた彼は人間味に満ちた魅力がある。ジーナの愛を手に入れてファブリスとも和解して、彼が報われたのがこの物語の救い。

ドン・ジュアン/モリエール/鈴木力衛 訳/岩波文庫/感想
―会話のテンポがとても良い喜劇―

概要


フランスのモリエールによる作品で、鈴木力衛による翻訳。スペインのドン・ジュアン伝説がもとになっている。数多の女性を口説き落としては捨てていくドン・ジュアン。結婚詐欺師で快楽の探求者、無神論者で偽善者である彼の物語。

感想のまとめ


会話のテンポがとても良く、ドン・ジュアンの二枚舌ぶりが楽しい作品。
登場人物を使い捨てるかのごとく新しいエピソードへ進んでいくので、彼の奔放な旅を思わせる楽しさがあった。ドン・ジュアンはいろいろな側面を持っていて、物語が進むほど彼を知っていく楽しみがある。
キリスト教を揶揄するシーンも印象的で、これだけやればそりゃ揉めるだろう、というような揶揄の仕方がとても印象的。

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オネーギン/プーシキン/池田健太郎 訳/岩波文庫 感想
―美しい情景に引き込まれる作品―

概要


ロシアのプーシキンによる作品で、韻文小説。池田健太郎先生による翻訳は、韻文ではなく散文形式。
プーシキンを思わせる作者が、読者へ語りかけながら進んでいく独特の形式。オネーギンはタチヤーナの恋心を無下に断るが、何年か後に再会した際に彼は恋に落ちてしまう。情熱的にのめり込んでいくオネーギンだが、彼の恋は実ること無く終わりを迎えてしまう。

感想のまとめ


綺麗な情景の作品で、めぐる季節にロシアの文化、人々の心情の描き方が美しくて心地よかった。派手な物語がなくても引き込まれる、そんな素敵な作品。散文形式の翻訳は情景に浸りやすく、自分好みの翻訳だった。一気に読むよりも、じっくりと味わいながら楽しみたくなる作品。
タチヤーナがとても魅力的に書かれていて、彼女の変化していく描写がとても良かった。
オネーギンは前半の塞ぎがちで冷たい美青年ぶりと、後半での縋るように情熱的な愛を見せる姿のギャップがとても素敵だった。

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肉体の悪魔/ラディゲ/新庄嘉章 訳/新潮文庫 感想
―緻密な心理描写が際立った作品―

概要


フランスのラディゲによる作品で、16歳から18歳の間に書かれた本作。第一次大戦期のフランスを舞台に、人妻との恋に落ちていく少年の物語。他にも戯曲「ペリカン家の人々」、「ドニーズ」が収録されている。

感想のまとめ


主人公の緻密な心情描写が凄まじい作品。矛盾だらけで理屈では説明つかないような言動や思考すら、見事に描写していて圧巻。
ただ情熱的だが暴力的でエゴイズムに満ちている恋愛なので、美しさを楽しむ作品ではなかった。主人公の心情を追うことを楽しめるかが、この作品を楽しめるかの分かれ道だと感じた。個人的には、凄いとは思うけれど好きではない作品。

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ファウスト/ゲーテ/高橋義孝 訳/新潮文庫 感想
―「とまれ、お前はいかにも美しい。」―

概要


ドイツの文豪ゲーテが誇る代表作である戯曲。「とまれ、お前はいかにも美しい。」のセリフで有名な作品。新潮文庫は全2巻で2部構成。世界の根源を極めようとするファウストは、悪魔メフィストーフェレスに自分の魂を死後に差し出すことと引き換えに、めくるめくような想いを体験させる契約を結ばせる。ファウストは様々な快楽や憎しみ、幸福や苦悩を経験し、人の生き方とはどうあるべきという答えを見出す。
学生時代に読んだ「若きウェルテルの悩み」に続く2冊目のゲーテ。

感想のまとめ


グレートヒェンとの恋愛とファウストの最期が特に素敵な作品。
グレートヒェンとの恋愛などでめくるめく思いを経験したファウストが、最期に心に思い描いた情景はとても美しい。「とまれ、お前はいかにも美しい。」と言いたくなるのも頷けるような、美しくて尊い情景がとても素晴らしい。
そしてファウストの傍らで、常に彼の願いを叶え続けたメフィストーフェレス。常に隣に悪魔とはいえ彼がいる。だからこそファウストは人生に満足できたのではないか、という気もする。常に傍らに誰かがいる、これもまた幸福なのではないかと思う。

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夏の夜の夢・あらし/シェイクスピア
/福田恆存 訳/新潮文庫
―世界の美しさに感動する作品―

概要


誰もがご存知シェイクスピアによる作品。「夏の夜の夢」は比較的初期に書かれた喜劇。「あらし (テンペスト) 」は晩年に書かれたロマンス劇。
「夏の夜の夢」はアセンズ (アテネ) を舞台に、妖精の王オーベロンと妖精の女王タイターニアとの間の夫婦喧嘩に巻き込まれた何組かの男女の物語。妖精王の命を受けた妖精パックが惚れ薬を使う相手を間違えたことで事態が混迷していく、幻想的でハチャメチャな恋愛喜劇。
「あらし」は孤島を舞台に、弟の裏切りにより追放されたミラノ王プロスペローが魔法の力で弟たちの乗った船を難破させ、島へ漂流させるところから始まるロマンス劇。シェイクスピア晩年の作品で、多くの喜劇・史劇・悲劇を書き上げたシェイクスピアの集大成にふさわしいロマンス劇。

感想のまとめ


「夏の夜の夢」は妖精が歌い踊るシーンが幻想的で、気づけば大団円を迎えているというまるで狐につままれているかのような作品。
「あらし」はまさにシェイクスピアの集大成。四大悲劇を読んでから読んでほしい作品。幻想的で、情熱的な愛があり、裏切りや疑心があり、言葉の掛け合いも小気味よい。結末の美しさは必見で、多くの喜劇・史劇・悲劇を経たシェイクスピアがこの結末を書いた事実がとても好きになる。

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/福田恆存 訳/新潮文庫
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