フリューゲル / 万華鏡百景色 ―コンパクトなまとめ方が光る作品―

概要


フリューゲル―君がくれた翼―は齋藤吉正先生の作・演出による作品。東ドイツの軍人ヨナスと西ドイツの歌手ナディアを中心に、ベルリンの壁崩壊へ向かうドイツを描いた作品。
万華鏡百景色は栗田優香先生の作・演出による作品。江戸時代から現代まで移ろっていく東京を描いたショー作品。

感想のまとめ


フリューゲルは盛りだくさんの内容をコンパクトにまとめ上げた良作。シリアスなテーマに適度なコミカルさを交え、中だるみすることなくまとめられた脚本が素晴らしかった。歌と演技で引っ張る質実剛健な月城さんと海乃さんとのトップコンビ、所作の美しさが際立っている鳳月さんなど職人芸が見どころ。
万華鏡百景色はテーマの見せ方が上手で、その名の通り華やかなショーだった。冒頭のつかみと、地獄変のシーンが特に印象的。

以下ネタバレ注意

【フリューゲル】


  • 大ボリュームをコンパクトにまとめた作品
    二本立ての芝居作品としてはかなりのボリューム。ヨナスとナディアとのロマンス、東西ドイツの統一、東ドイツの崩壊とヘルムートの自決、親子の和解、アフガニスタン反政府派のサーシャの逃亡と二作品は簡単に作れるボリューム。これをわかりやすくコンパクトにまとめ上げた齋藤先生の手腕が光る作品となっている。

  • シリアスなテーマに適度なコミカルさ
    冷戦下の東西ドイツをテーマにした作品と聞くとシリアスな作品に思えるが、適度なコミカルさを併せ持っている。話の腰を折るわけではく、まさにちょうどよい箸休めとなっている。

  • 東西ドイツ統一のシーンが素晴らしい
    作品の山場と言っても良い、東西ドイツ統一シーンの盛り上がりが素晴らしい。回転する盆で東西ドイツが交互に描かれ、壁の両側で同じ歌が歌われる。機運の高まりが最高潮に達した瞬間に、壁が崩壊するカタルシスが素晴らしかった。

  • 質実剛健なトップコンビ
    月城さんは歌が素晴らしかった。特にデュエットがとても素敵で、力強い低音と安定したロングトーンが良かった。歌うシーンが多く、ダンスよりも歌で引っ張るタイプのトップスターに感じた。海乃さんは歌・演技・ダンスどれも流石の安定感だった。特に演技が印象的で、ときに奔放に、ときに包容力あるナディアの見せ方が素敵だった。

  • 洗練された華やかさが素晴らしい鳳月さん
    トップコンビを支えるベテラン二番手、そんな立場の鳳月さんが素晴らしかった。とにかく動きが綺麗で、歩いたり腕を伸ばすだけで目を奪われる華やかさが印象的。見せ方が巧みで、ダンスシーンがとても素敵だった。動く姿で華やかさを印象付けてくるが、ベルリンの壁が崩壊して「すべて終わった……」と呟くシーンが秀逸。東ドイツの体制にすべてを捧げてきたヘルムートの信念が折れてしまったことが伝わってくる、茫然自失な呟きに思わず感情移入してしまうほど素晴らしかった。

  • 意外とフレッシュな風間さん
    三番手となった風間さんを初めて見たが、意外とフレッシュな姿が印象的だった。盗み聞きをするシーンなどセリフのない場面の見せ方が上手な職人気質だが、若手三番手として組の中核を支えている姿が素敵だった。

【万華鏡百景色】


  • 見せ方上手なショー作品
    時とともに移ろっていく東京を描いたショー作品で、一貫したテーマの見せ方がとても巧みだった。東京をモチーフにしているのにどこか幻想的で、移り変わりながら現代へ向かう構成はその名の通り万華鏡のような華やかさだった。

  • 印象的な地獄変
    一番印象に残ったシーンは地獄変。鳳月さんの表現力を全面に押し出したシーンとなっていて、動きや表情で引き込んでくる鳳月さんの真骨頂を感じた。