オペラ座の怪人 (劇団四季) 感想
―海外ミュージカルの大作を母国語で!―

概要


原作はガストン・ルルーの小説で、劇団四季版は日本でのお馴染みのアンドリュー・ロイド = ウェバー版。19世紀のパリ・オペラ座を舞台に、神出鬼没の怪人と彼に才能を見いだされたクリスティーヌ、クリスティーヌの幼馴染でオペラ座のパトロンを務めるラウルの三角関係にフォーカスを当てた作品。


感想のまとめ


ブルーレイで見たロンドン公演の雰囲気を見事に再現していて、海外ミュージカルの大作を母国語で楽しむことのできる素晴らしい公演。高さ方向の演出が多く、釣り上げられていくシャンデリアや天井裏で暗躍する怪人などの演出も大迫力。生オケと圧倒的な歌唱力は凄まじく、音楽を堪能するのにこの上ない公演。所々で不自然に残った英語が異物感を生み出す点だけが残念。


以下ネタバレ注意

感想


 【全般】

  • ロンドン公演の雰囲気を見事に再現
    何度もブルーレイで見た25周年記念のロンドン公演、あの雰囲気が見事に再現されている。大好きな公演を母国語で堪能する、そんな贅沢なひとときを与えてくれる公演。特にオークション開始時の第一声やビアンジの雰囲気の合わせ方がピカイチ。

  • 高さ方向を贅沢に使った舞台機構
    劇団四季版は高さ方向の演出が多い印象。釣り上げられていくシャンデリア、天井裏で暗躍する怪人、高所から歌う第一幕クライマックスなど圧倒的な迫力になっている。

  • 劇場の音響ならではの臨場感
    生オケによる臨場感溢れる音楽に加え、音響の使い方も巧み。ドン・ファンのシーンでは扉の施錠音が劇場の扉方向から聞こえ、ファントムの声が四方八方から聞こえてくる。まるでオペラ座にイルカのような雰囲気を味わうことができる。

  • C席でもオペラグラスなしで楽しめる四季劇場秋
    今回はC席を選んだが、オペラグラスがなくとも楽しめる座席だった。表情をアップで見たいときだけオペラグラスを使えば良いのでかなり快適。座席は上から俯瞰するような作りになっているので、人が多くても支障はなさそうな印象。

  • 圧倒的な歌唱力
    誰もが歌が上手で、しかも凄まじいレベル。生オケと圧倒的な歌唱力による音楽は圧巻で、音楽を堪能するのにこの上ない演目。歌の多い「オペラ座の怪人」を観劇する演目に選んで本当に良かったと思えるほど歌が素敵だった。ちなみに役替わりらしいが、これだけのレベルを何組も持っているとしたら恐ろしい。

  • 微妙に残る英語の違和感だけが残念
    翻訳禁止なのか、”Phantom of the opera” や “Angel of music” などところどころ不自然な形で英語が残るのが気になる。訳しているところはとても自然な日本語だけに、不自然な英語の異物感が強い点だけが残念。

【個別】

    • オペラ座の怪人 (岩城さん)
      歌声がとても素敵で、音楽の天使と怪人でガラッと変わる歌声がとても印象的。クリスティーヌが自分を選ばなかったことへの怒りや、止まることができずに進んでいくしかないことへの嘆きといった、自分の中で感情が渦巻いている怪人ぶりがとても素敵だった。

    • クリスティーヌ (山本さん)
      ファントムが惚れるのも納得の素敵な歌声で、高音がどこまでも響き渡り、心地よいビブラートと合わせて凄まじい歌唱力だった。ラウルと歌うときのあどけなさが残る歌い方と、怪人と歌うときの凄まじさを感じる歌い方の使い分けもとても素敵で、ラウルと怪人は彼女の異なる面に惹かれてしまったんだろうなぁ、と思わせる歌い方だった。オペラ座の舞台上で怪人の告白を聞いて愕然とするシーンがとても印象的。原作のように怪人への愛はないけれど、人として愛を彼に教えるタイプだったのかなというイメージで素敵だった。

    • ラウル (光田さん)
      とても頼れる格好良い男で、歌声も力強くてとても素敵。彼なら怪人と立ち向かうしクリスティーヌも惚れるのも納得の良い男ぶり。優しさと力強さ、そして包容力と怪人との対比で残酷なほど際立つ素敵さだった。

    • カルロッタ (河村さん)
      実は作中屈指で歌の上手なカルロッタ、劇団四季版も凄まじい圧を感じる歌がとても素敵だった。歌も素敵だけれど表情も特に素敵で、コロコロと表情が変わって憎めない可愛さが出ていて好きだった。