オネーギン (雪組) 感想
―原作をベースにした大胆なアレンジ作品―

概要


オネーギンはロシアのプーシキンによる小説で、植田景子先生の演出・脚本による作品。
ロシアの貴族オネーギンはタチヤーナの恋心を無下に断るが、何年か後に再会した際に彼はタチヤーナへの恋に落ちてしまう。情熱的にのめり込んでいくオネーギンだが、彼の恋は実ること無く終わりを迎える。

感想のまとめ


植田先生の大胆なアレンジが最大の特徴で、それを好きになれるかが肝。個人的には中盤での掛け合いがとても素晴らしいが、原作最後のシーンのインパクトが薄くなってしまっているのが残念。台詞の掛け合いや表情・仕草の変化を楽しめる作品で、終盤へ向かうにつれて面白さが増していくタイプ。豪華メンバーを中心に歌唱シーンも素晴らしく、大作感を楽しむことができる。
抜群のビジュアルと厭世観や焦がれるような恋の表現がとても素敵だった轟さんのオネーギン、内に秘めた熱い情熱の見せ方がとても素敵な緒月さんの革命思想家、オネーギンとの腐れ縁の見せ方がとても上手な涼花さんのニーナ、輝かしい青春を生きることで現在のオネーギンとの対比が際立つ彩凪さんの若きオネーギンが特にお気に入り。

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シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!- / Délicieux 感想
―予備知識なしでも楽しめるエンターテインメント作品―

概要


シャーロック・ホームズ-The Game Is Afoot!-は生田大和先生の作・演出による作品。シャーロック・ホームズをモチーフにしたオリジナルシナリオで、ホームズ、モリアーティ教授、アイリーンにスポットを当てた作品。
Délicieuxは野口幸作先生によるレビューで、パリのパティシエをモチーフにした作品。

感想のまとめ


シャーロック・ホームズは予備知識無しでも楽しめる、エンターテインメント性に優れた作品。初見に優しく配慮された作品で、オリジナルストーリーや独自の演出による予想外な要素も楽しめる作品になっている。
Délicieuxは華やかさを全面に出したレビュー。いろいろな人が歌ったり銀橋に並んだりと、多くの人に見せ場のある作品。品のないシーンが2箇所ほどある点だけが残念。
少し社会性が高めでクールな格好良さが際立っているホームズを演じた真風さん、持ち前の華やかさ全開でアイリーンを演じた潤花さん、攻めつつもカリスマ性抜群の役作りでモリアーティ教授を演じた芹香さん、ショーでの歌・銀橋などでのパフォーマンスが素敵な留依さんがお気に入り。

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忠臣蔵 感想
―宝塚が誇る日本物の極致―

概要


忠臣蔵は柴田侑宏先生の脚本による作品。赤穂浪士の討ち入りをテーマにした作品で、当時の雪組トップスターである杜けあきさんの退団作品であり、旧東京宝塚劇場の最終公演。この公演以降一度も再演されていない作品でもある。

感想のまとめ


まるで時代劇を観ているような重厚感と宝塚らしい華やかさが調和した作品。時代背景を丁寧にまとめつつロマンスまで盛り込んだ脚本、見惚れるような美しい所作や台詞回し、伸びやかで力強い圧倒的な歌唱力とどこを見ても完璧。演技力も凄まじく、どのシーンも夢中になるほどに素晴らしい。
内蔵助を演じた杜さんの時代劇を飛び出したようなお侍様ぶり、浅野内匠頭を演じた一路さんの気品ある姿と鬼気迫る姿のギャップ、お蘭を演じた紫さんの表情の移り変わり、吉良を演じた星原さんの憎々しさが光る演技が特に印象的。

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暁のローマ 感想
―あまり構えずに見るべき作品―

概要


暁のローマは木村信司先生による脚本・演出で、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」を原作としたロックミュージカル。古代ローマのユリウス・カエサル暗殺を描いた作品で、カエサル、ブルータス、アントニウス、カシアスを中心に描かれている。

感想のまとめ


原作の名シーンでもある演説シーンやクライマックスは秀逸。名シーンなどの見せ方が良いので、あまり構えずに美味しいシーンをつまみ食いする形で見るのが良いタイプの作品だろう。
一方で演出はかなり微妙。コメディなのかシリアスなのかわからない演出はなぜ採用されたかがわからない。歴史解釈も微妙で、ローマ史か原作を予習しないと背景を理解できないが、予習をすると歴史解釈に疑問符が浮かんでしまう。
カリスマ性と力強い歌声を見せてくれたカエサルの轟さん、苦悩する姿がとても素敵だったブルータスの瀬奈さん、演説シーンが最高だった霧矢さんがお気に入り。


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ロミオとジュリエット (2012年月組役替わり) 感想
―噛み合っている禁じ手の役替わり―

概要


原作は誰もが知っているシェイクスピアの恋愛悲劇。ジェラール・プレスギュルヴィックによるミュージカル作品を、小池修一郎先生が潤色・演出した公演。宝塚では3回目の公演。
14世紀のイタリア・ヴェローナを舞台に、対立している家柄のモンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットが恋に落ちるが、運命の悪戯によって悲劇となってしまう物語。原作から変更点もいくつかある公演。

感想のまとめ


ロミオ/ティボルトの両方で見せ方上手で器用な龍さんと完璧なロミオぶりを誇る明日海さんだからこそ実現した、禁じ手のような役替わり。独りになったときに深い孤独を見せる表情や、マーキューシオたちとの決闘のシーンでの見せ方がとても上手な龍さんのティボルト。ジュリエットとの恋に落ちて世界が輝いて見えるようになる変化がとても素敵な明日海さんのロミオ。非常に特殊な役替わりだろうが、どちらも繊細で王道な演技がとても素敵だった。



役替わりの記事は別 (リンク) に記載。

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―噛み合っている禁じ手の役替わり―” の
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