概要
THE ALUCARD SHOW は河原雅彦さんが原作・演出・構成を務める舞台作品で、今回が三度目の上演。
謎の青年ブラドと6名のダンサーからなる謎のユニット「ALUCARD」、彼らに人気を奪われた国民的スターのマリア、マリアから ALUCARD 側へ移ったマネージャーのウォルター、そしてブラドの熱狂的なファンであるサラを中心に物語が展開する。
感想のまとめ
キャストのパフォーマンスが圧巻の作品だった。ALUCARD が作中で熱狂的な人気を集めるのも納得の説得力だった。
松下さん演じるブラドは歌唱力も素晴らしく、後半の曲でのロングトーンは特に印象的だった。
彩風さん演じるマリアは、場面ごとに変化する立ち位置に合わせて雰囲気が大きく変わり、その演じ分けが素晴らしかった。ポップスも綺麗な歌声で歌い上げ、国民的スターらしいカリスマ性だった。
一方で、オブラートに包んでも品があるとは言えない演出が繰り返される点だけは、最後まで馴染めなかった。観ていて不快感が強く、振り返る際も苦痛に感じる要素だった。
以下ネタバレ注意
感想
- 歌とダンスが凄い
この作品の見どころは、何と言ってもキャストのパフォーマンスだった。
ALUCARD の歌とダンスは圧巻で、キレのあるダンスは作中の熱狂に対する強い説得力があった。コンサートを乗っ取る場面の曲は耳に残りやすく、一曲覚えて帰れる点も嬉しかった。
松下さん演じるブラドは歌唱力も素晴らしかった。前半の力強く格好良い曲も魅力的だが、後半の曲でのロングトーンが特に印象的だった。全くブレることなくいつまでも伸びるロングトーンは心地よく、上手い人だからこその見せ場だった。
彩風さん演じるマリアは、国民的な女性スターというこれまでにない役柄。レディー・ガガを思わせるようなビジュアルで、ポップスを堂々と歌う姿はカリスマだった。高音も綺麗に響き、癖のない歌声だからこそ、ポップスとの相性もよく感じた。
ダンサー陣も素晴らしかった。男性陣は力強くシャープな振り付けが映え、女性陣はしなやかで柔らかい振り付けが印象的だった。それぞれ異なる方向性で魅力的だったため、互いの個性が際立って見えた。 - ギャップを楽しめる演技
演技面では、それぞれのキャラクターが抱えるギャップが印象に残った。
ブラドはステージ上では圧倒的なカリスマだが、ステージを降りると雰囲気や声が柔らかくなる。独りだけ視座が高く、他と存在が異なるような独特の存在感があった。柔らかい雰囲気なのに孤独や物悲しさを抱えていて、そのギャップが魅力的だった。
ALUCARD のメンバーはセリフこそないが、個性的だった。ブラドやマリア、ウォルターやファンたちと接する際の反応がメンバーごとに異なり、その様子を観察するのが楽しかった。
マリアは老婆として登場し、国民的スター、失墜したかつてのスター、ブラドたちと対立する女性へと立場を変えていく。場面ごとに立場が大きく変化するので、彩風さんの所作や声色で立場の変化を補間する技術が活かされていた。宝塚雪組二番手時代を思い出させるような、表現力を楽しむことができた。
ウォルターは物語とともに疲弊していき、作中の人物で最も取り返しがつかなくなってしまった。その哀れな姿が印象的だった。
サラは演出面で苦手意識が強かったが、あの演出を演じ切り、一部の笑いまで取っていたのは見事だった。 - 不快なほど品のない演出
キャストの演技や楽曲は魅力的だが、サラ周辺の演出は自分に合わない作品だった。オブラートに包んで表現しても品があるとは言い難く、同種の表現が繰り返されることが苦痛だった。
観客やファン心理を揶揄する風刺として描かれているのかもしれないが、この表現が世界観に馴染んでいるようには見えなかった。また、この形で表現しなければならない必然性も、そもそもこの風刺の必然性も感じられなかった。
意図した風刺だとしても繰り返しが過剰に感じられ、不快感が上回った。風刺ではなく単純に笑いを取りに来ているならば、私とは価値観が全く合わないと感じた。
丁寧に構築された世界観に対して、馴染めていない異物のように思えてしまい、非常に残念な要素だった。
サラ周辺の品のない演出は合わなかったが、不快感を煽るすべての演出が合わないわけではないことは示しておきたい。
ALUCARD のメンバーがウォルターに血を無理やり飲ませる場面や、ウォルターがサラに暴力を振る場面などは、後の展開に活かされていて、不快感そのものにも意図があるように思えた。
それを鑑みても、サラ周辺の演出だけは私には合わない表現だった。
