ポーの一族 (花組) 感想 ―漫画の世界が現実に―

概要


ポーの一族は萩尾望都による漫画作品で、小池修一郎先生による脚本・演出。18世紀から近代までを舞台に、永遠の命を持つ吸血鬼 (バンパネラ) の一族を描いた大人気作品。余談になるが、小池先生はこの作品の文庫版に寄稿していて、縁の深い作品になっている。

感想のまとめ

ポーの一族の実写化としてこれ以上はないだろう、と確信する完璧なキャスティングが光る傑作。漫画の世界から抜け出したかのような明日海さんのエドガーと柚香さんのアラン、圧巻の演技力に裏打ちされた仙名さんのシーラは特筆すべき素晴らしさ。漫画作品も得意とする宝塚の作品群の中でも、間違いなく傑作として挙げられる作品だろう。脚本のまとめ方も素晴らしく、初見でもポーの一族を理解できるであろう脚本になっている。


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春雷 感想
―圧倒的なビジュアルの良さ―

概要


春雷はゲーテの「若きウェルテルの悩み」をモチーフとした、原田諒先生による脚本・演出の作品。主人公のゲーテが若きウェルテルの悩みを書き上げた時代を舞台に、ゲーテと若きウェルテルの悩みの物語を交差させた構成。若きウェルテルの悩みは解説も不要な有名作品。主人公のウェルテルが婚約者のいるロッテに恋し、叶わぬ恋に絶望して死に至るまでの物語。

感想のまとめ


圧倒的なビジュアルや繊細な演技、舞台機構や演出の巧みさによって視覚的に堪能できる作品。「若きウェルテルの悩み」とは別作品なのが難点で、安直な三角関係にされてしまった点が残念。圧倒的なビジュアルとキラキラ感を誇る彩凪さんのウェルテル/ゲーテ、美人ぶりが際立っているせしるさんのロッテ、最大の見せ場で一番映える役作りをしてくれた鳳翔さんのアルベルトがお気に入り。

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王家に捧ぐ歌 (2022年星組) 感想
―圧倒的な歌唱力が素晴らしい―

概要


ヴェルディのアイーダをモチーフとした作品で、木村信司先生による脚本・演出。エジプトの将軍ラダメスと、エジプトの捕虜となったエチオピア王女アイーダの悲恋を描いた物語。星組・宙組で上演されている公演の再演である。

感想のまとめ


ライブ配信での視聴。
圧倒的な歌唱力と演技力が際立っていて、歌を浴びるタイプの作品。わかりやすい対立軸と抜群の歌唱力で謳われる、愛と平和というテーマが際立っている。舞台機構や衣装は簡素で、良く言えば歌や演技に集中しやすい公演。
歌と演技が際立っている礼さんのラダメスと有沙さんのアムネリス、セリフがなくても気持ちが伝わってくる天華さんのケペル、アイーダの悪印象を抑えてヒロインに仕上げた舞空さんがお気に入り。

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CITY HUNTER / Fire Fever! 感想
―名前の通り激しいダンスショー―

概要


CITY HUNTER―盗まれたXYZ ― は齋藤吉正先生による脚本・演出による公演。原作は北条司先生によって週刊少年ジャンプで連載されていた漫画作品。1980年代の新宿を舞台に、探偵・暗殺・要人警護などを請け負うスイーパー・冴羽獠を描いたハードボイルド・コメディ。
Fire Fever!は稲葉太地先生による作・演出による作品。

感想のまとめ


CITY HUNTERは原作や当時の東京への深い愛が特長の脚本で、散らかり気味のストーリーや微妙すぎる時事ネタを愛で許せるかで好き嫌いの分かれる作品。ビジュアルや動きの再現度の高さ、詰めに詰めたエピソード、生オケでのGet Wildなどが見せ場。特に限界まで低音で、色気を漂わせながら歌う彩風さんのGet Wildが好きなシーン。
Fire Feverは激しいダンスショーで衣装をバンバン変えながら大人数で踊っていく派手な演目。その中でも彩風さんが終始出ずっぱりで歌って踊ってトップとして引っ張る姿が凄まじい。歌唱シーンも様変わりし、彩風さんと朝美さんの癖のある歌唱、奏乃さんや久城さんの綺麗な歌唱を堪能できる。
徹底して研究されたコミカルな動きやハードボイルドな格好良さに加えて低音での色気を漂わる歌唱が凄い彩風さん、歌・演技・ダンスの全てで万能ぶりと男役を輝かせる技術をいかんなく発揮した朝月さん、堂々たる二番手としてすべてのシーンで安定感のある朝美さん、巨漢の海坊主を見事に再現した縣さん、悪役で見たい要素をすべて見せてくれてFire Fever!での歌唱も素晴らしい久城さんがお気に入り。

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オネーギン (雪組) 感想
―原作をベースにした大胆なアレンジ作品―

概要


オネーギンはロシアのプーシキンによる小説で、植田景子先生の演出・脚本による作品。
ロシアの貴族オネーギンはタチヤーナの恋心を無下に断るが、何年か後に再会した際に彼はタチヤーナへの恋に落ちてしまう。情熱的にのめり込んでいくオネーギンだが、彼の恋は実ること無く終わりを迎える。

感想のまとめ


植田先生の大胆なアレンジが最大の特徴で、それを好きになれるかが肝。個人的には中盤での掛け合いがとても素晴らしいが、原作最後のシーンのインパクトが薄くなってしまっているのが残念。台詞の掛け合いや表情・仕草の変化を楽しめる作品で、終盤へ向かうにつれて面白さが増していくタイプ。豪華メンバーを中心に歌唱シーンも素晴らしく、大作感を楽しむことができる。
抜群のビジュアルと厭世観や焦がれるような恋の表現がとても素敵だった轟さんのオネーギン、内に秘めた熱い情熱の見せ方がとても素敵な緒月さんの革命思想家、オネーギンとの腐れ縁の見せ方がとても上手な涼花さんのニーナ、輝かしい青春を生きることで現在のオネーギンとの対比が際立つ彩凪さんの若きオネーギンが特にお気に入り。

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