Hotel Svizra House 感想
―パーフェクトなご都合主義―

概要


植田景子先生の作・演出による作品で、真風さん・潤花さんの新トップコンビお披露目公演。第二次大戦期のスイスのHotel Svizra House (スヴィッツラハウス) を舞台とした作品。スパイ摘発の任務を受けた英国情報部のロベルト、チャリティ公演に参加するために訪れたバレエダンサーのニーナ、チャリティ公演を主催するミハイロフ公爵とパトロンのヘルマンたちによるヒューマンドラマ。

感想のまとめ


重い設定を軽やかに、ご都合主義にまとめ上げた作品。あまりに鮮やかで感心するようなご都合主義ぶりで、気分良く終わる作品に仕上がっている。メッセージ性は強烈だが、物語の歪みや不快感がまったくない素晴らしい脚本になっている。重い設定だが、宝塚らしいロマンスや美しさがとても印象的で、3組の恋愛、リゾート地のホテルという設定にぴったりと合った品のある雰囲気はとても宝塚的。

以下ネタバレ注意

感想


【全体】

  • パーフェクトなご都合主義
    重い設定をどう畳むか気になりながら見ていたが、最後はご都合主義にまとめ上げている。あまりに鮮やかで感心するようなご都合主義ぶりで、救いようのない悪役がいない徹底ぶり。ここまで徹底したご都合主義ならば惚れ惚れするし、ご都合主義なので気分良く終わる作品に仕上がっている。

  • シンプルで強烈なメッセージ性
    このご時世に合わせたのか「芸術を絶やしてはいけない」というメッセージを全面に押し出している。ヘルマンをキーパーソンとしたことで物語の主軸を損ねず、不必要な悪者を作らないことで、物語や登場人物の歪みや強すぎる押し出しによる不快感を全く生じさせない巧みな脚本。

  • 宝塚らしさを感じる物語
    重い設定だが、宝塚らしいロマンスや美しさがとても印象的で、男女が織りなす恋愛、リゾート地のホテルという設定を活かした品のある雰囲気はとても宝塚的。

  • コーラスがとても素敵
    歌唱シーンは少ないが、コーラスがとても綺麗。バランス良く上手い人が多い印象。

  • 潤花さんの当て書きが絶妙
    雪組から組み替えした潤花さんにとって、この作品はトップコンビお披露目作品。得手不得手のはっきりした潤花さんの長所をこの上なく活かした当て書きが素晴らしい。
    快活で自立したバレエダンサーという、潤花さんの演技とダンスを活かしやすい設定で、歌唱シーンも潤花さんの得意な音域を中心とした高音の少ない徹底ぶり。潤花さんの素敵さをアピールする、最高の当て書きになっている。

  • ビリヤードのシーンでの格好良さが凄い
    伏線かと思いきやなんでもなかったビリヤードのシーンだが、とにかく格好良い。ロベルトとヘルマンがキューを使って踊るシーンだが、スタイルの良さとスタイリッシュさを押し出していてとても素敵。

【個別】

  • ロベルト (真風さん)
    英国仕込みも納得のスタイリッシュさで、自然に口説くキザな姿がとても格好良い。スーツの着こなしがとても素敵で、思わず見惚れる格好良さ。仕事に恋に悩む姿も素敵で、本当に格好良いを突き詰めた男役だと思う。

  • ニーナ (潤花さん)
    潤花さんは大好きな娘役さんなので気になっていたが、得意な役柄ど真ん中。お披露目がこれで本当に良かった。自立した快活なバレエダンサーで、歌も高音が少なめと完璧な配役。誰と組んでも綺麗なダンスと、リフトされ上手なシーンは見どころ。不安に悩むシーンやシルヴィのことを考えてナーバスになるシーンも素敵で、今後もとても楽しみ。

  • ヘルマン (芹香さん)
    愛と友情、そして芸術に己のすべてを捧げるハイリスク・ノーリターンとも言える生き様がとても格好良い。不敵な前半、アルマへの叶わない恋を歌う中盤、真相が明らかになる終盤でガラッと印象が変わるのが印象的で、演じ分けがとても素敵。

  • アルマ (遥羽さん)
    場に応じた振る舞い方はまさに女優。未亡人としてのミステリアスな姿、チャールズをあしらう軽い姿、ヘルマンたちに見せる本来の姿とガラッと変わるのが印象的。

  • ウェリントン子爵夫人 (万里さん)
    ヒステリーでおっかない前半、病状が悪化した中盤、それを乗り越えた終盤で表情の演じ分けが凄い。喋る前から彼女の状態がわかる表情は圧巻の演技力で、特に前半の怖さが印象的。

  • ミハイロフ公爵 (寿さん)
    気品ある公爵ぶりがとても似合っていた。ロベルトに探りを入れられた時の変な焦り方が印象的だったが、後から振り返ると納得の焦り方だった。

  • ペーター (松風さん)
    ホスピタリティ溢れる支配人ぶりがとても素敵だった。温かさと優しさ、そして上品さがとても素敵で、ロベルトと話すときの懐かしそうにしている様子も印象的。

  • ネイサン/ラディック (紫藤さん)
    二人のキーパーソンを見事に演じ分ける演技力が凄い。ネイサンは使命感と家族への愛情を強く持った壮年、ラディックは身分故に恋を諦めてピアノにすべてを注ぐ青年。二人の異なる人物を仕草や表情、顔つきで演じ分けていて素敵だった。

  • ホールデン (美月さん)
    洋画なら犯人ポジションだよなぁ、と思わせる雰囲気から本当に犯人だった役。上司という荘厳さのある雰囲気と、どこかでもしかしたら……と思わせる雰囲気が良かった。最後に先代ウィリアム・テルが死んだと知って自嘲する姿がとても印象的で、愛だけでも憎しみだけでも出せない雰囲気がとても素敵だった。

  • ユーリー (桜木さん)
    振付師らしい立ち振る舞いや、ジョルジュを迎えるまでの落ち着かない神経質な様子が印象的。特に立ち振る舞いはひと目でダンサーか振付師だとわかる格好良さ。ジョルジュとの押し出しすぎない絡み方も好きで、役の雰囲気作りがとても上手だった。

  • カウフマン (瑠風さん)
    スーツ姿のよく似合うロベルトの相方。真面目さと若さ、使命感の出し方が上手で、ロベルトと同じ視座に立つのはまだ先だろうと思わせる雰囲気がとても素敵。

  • オットー (聖さん)
    善良さを全面に出した笑顔がとても印象的。出番は少ないけれど、ドイツ軍人にも良い人がいるというのを体現する素敵な笑顔。
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