『Le Rouge et le Noir~赤と黒~ ―圧倒的な歌と演技―

概要


「Le Rouge et le Noir~赤と黒~」はアルベール・コーエンによるロック・ミュージカル作品で、原作はスタンダールの赤と黒。2016年にパリで上演された作品だが、今回は谷貴矢先生の潤色・演出によって上演された。

感想のまとめ


歌と演技に特化した作品で、技術的な面では非の打ち所のない作品。ロック調で難しそうな曲を軽々と歌い上げる礼さんを筆頭に聞き応え十分な歌唱シーンと、脚本の不足を補えるだけの演技力が際立っていた。
衣装や舞台装置はお洒落だが、心情描写に乏しく余韻のない脚本が残念。点と点を最短距離で結ぶような脚本は不足こそないが情感に乏しかったのが惜しい。

以下ネタバレ注意

感想

【全般】

  • 歌を全面に押し出した作品
    礼さんの歌がとにかく凄まじい。ロック調で難しそうな曲を軽々と歌い上げる姿は圧巻。蹲っても全く篭らない歌声も素晴らしかった。
    他のメンバーも暁さんや有沙さん、詩さん、英真さん、ひろ香さんや小桜さんと歌の上手いメンバーが揃っていて、どの歌唱シーンも聞き応えある素晴らしいものだった。

  • 脚本の不足を補う演技力
    歌唱力と演技力を重視したメンバーだったこともあり、演技も素晴らしかった。脚本の不足を演技力で補っていくスタイルで、特に有沙さんのルイーズが素晴らしかった。ルイーズの魅力や内面を、ちょっとした仕草や表情で巧みに伝えてくる表現力がピカイチだった。特にジュリアンに撃たれる直前の笑顔が印象的。礼さんのジュリアンは野心が抑えられている分、より悲劇的な要素が際立つ役作りだった。

  • 舞台や衣装がお洒落
    幕が開く前からお洒落な雰囲気で、衣装や舞台の使い方が格好良く見栄えの良い作品。ジェロニモが観客席に語りかけながら劇中劇が進んでいく展開も洒落ている。

  • 大味な脚本・演出
    心理描写が大味で台詞回しも地味なので、余韻の残りにくい作品に感じられた。点と点を最短距離で結んでいくだけのダイジェストの様な作品で、致命的な不足こそないものの情感に乏しい。演者の演技力と歌唱力だけで成り立っているような作品だった。歌が素晴らしかっただけに惜しく感じられた。