RRR × TAKA”R”AZUKA ~√Bheem~ / VIOLETOPIA ―良作と意欲作―

概要

RRRは2022年に公開されたインド映画を元とした作品で、谷貴矢先生による脚本・演出。イギリス占領下のインドを舞台とした作品で、総督に攫われた少女を助け出そうと画策するビームと、イギリス警察に所属するインド人のラーマとを中心とした物語。
VIOLETOPIAは指田珠子先生による作・演出のショー作品。

感想のまとめ

RRRはダンスシーンの見応え抜群。綺麗にまとまったストーリーも強みで、ショーと芝居との中間に位置するようなバランスの作品だった。
VIOLEATOPIAは芸術性重視のショーで、普段の宝塚というよりも美術館の企画展示のような作品。幻想的で美しいシーンが多く、不気味なシーンが強烈なアクセントになっていた。個人的には初見では合わなかったが、この意思は尊重したい作品。

以下ネタバレ注意

RRR

  • 見応え抜群のダンスシーン
    インド映画といえばダンスの印象が強いが、本作もダンスシーンが凄まじい。多人数によるハードなダンスシーンは見応え抜群。凄まじい速さで長時間踊り続けるナートゥや、ビームとラーマとの出会いのシーンなど、ダンスのレパートリーが豊富なのも嬉しいところ。ミュージカル作品だとダンスシーンも自然に感じやすいのも強みで、ショーと芝居の中間に位置するような作品に思えた。

  • 綺麗にまとまったストーリー
    原作は三時間程度の大作らしいが、違和感なくまとまったストーリーだった。ダンスシーンの中でビームとラーマとの友情を描いたり、語るべき場所と語らなくても良い場所の取捨選択が巧みで、初めての宝塚作品にもおすすめできる作品。

  • 主演・二番手の比重が大きい作品
    ストーリー、歌、ダンスのいずれも主演と二番手との比重が大きな作品。特にダンスが激しいので、礼さんと暁さんがフル回転で大活躍している。特に二人のナートゥが凄まじくキレッキレで、トップスターと二番手スターはやはり凄いなぁ、と実感する作品だった。

  • 最後のダンスシーンがとても良い
    最後のダンスシーンはショー作品でも山場になるような大盛りあがり。客席まで使って歌い踊るフィナーレはとても華やかで、どこを見ても楽しめる一番好きなシーン。映像化される際に全容を記録に残せないのが惜しいぐらいに、どこもかしこも大盛り上がりで素晴らしかった。

  • 輝咲さんと暁さんの髭が素敵
    輝咲さんと暁さんの髭がとてもピッタリで格好良かった。自然かつ威厳や雰囲気を感じさせる髭が素敵で、男役の髭姿が好きな身にとってありがたかった。

  • 歌の成長が目立つ舞空さん
    ストーリーの都合で場面を担うことは少なかったが、舞空さんの歌が上手くなっていた気がした。曲数が少ない分一曲を丁寧に仕上げている印象で、着実に成果を出してくるところが凄いと感じた。

VIOLETOPIA

  • 芸術性重視のショー作品
    エンターテインメントよりも芸術性に重きをおいた作品という印象。夢か現かというような幻想的で美しいシーンが多く、不気味なシーンが強烈なアクセントになっている。普段観る宝塚のショー作品というよりは、美術館の企画展示を見たような感覚に陥った。

  • 好き嫌いが出やすそうな作品
    スターよりもテーマ性を全面に押してくる印象だったので、好き嫌いが出やすいように感じた。◯◯さん、というよりは△△を象徴するシーンとして印象に残りやすいので、宝塚のショー作品に何を求めているのかが出るのかもしれない。おそらくだが、指田先生は覚悟の上でこの方向性にしたのだろう、と思わせるような作品。

  • 初見では合わなかったが尊重したい作品
    少なくとも初見では趣向には合わなかったが、この意思を尊重したいと思うような作品。明確なテーマのもとで徹底的な作り込みが行われていて、世界観が綺麗に統一されているように感じられた。不気味に感じた要素も美しいと感じた要素も、演出に上手く感情をコントロールされているように感じた。先の話になるが、ブルーレイで改めて振り返りたい作品。

  • 流石と唸りたくなる礼さんのダンスシーン
    中盤での「孤独」を描いたシーンでの礼さんのダンスがとても素敵で、作品の山場の一つに感じられた。直前のシーンの不気味な印象を植え付けてからのこのシーンで、ダンスだけで生きる人間の感情を表現する礼さんのダンサーとしての素晴らしさを体感した。

  • 餞別に見事に応えた天華さん
    かなり癖のある作品だが、天華さんが担う場面はどれも正統派なのは、指田先生の思いやりだろう。白い衣装で歌い踊るシーンも、コート姿でのシーンも、エトワールもどれも素晴らしかった。余裕を持って綺麗に響く歌声、手足の動きが綺麗なダンス、娘役さんと踊るときの優しそうな動きのどれも印象的。わかりやすい見せ場を作ってくれた指田先生にも、それに見事に応えた天華さんにも感謝したい場面だった。

  • 盛り上がりには欠けるかも
    夢を見ているかのような感覚で、ピントが合わないままゆらゆらと移ろっていくような印象を受けた。それに加えて不気味なシーンに力が入っていることもあり、盛り上がりには欠けるかもしれない。

  • 群舞のサングラスが……
    個人的に一番合わなかったのが群舞のシーンで、もっと言えばサングラス。四半世紀前に描かれた近未来を思わせるイケてなさで、顔が長時間隠れてしまう点と、群舞の動きが制限されてしまっている点が残念だった。