運命予報をお知らせします
―荒削りだが恋心に向き合った意欲作―

【プレイまで】

「運命予報をお知らせします」はヨナキウグイスによる作品。現在は活動していないブランドだが、ウグイスカグラで活躍されていたルクル先生がシナリオを手掛けている。

本作を入手したのは2017年頃まで遡る。当時はルクル先生の所属するウグイスカグラが飛ぶ鳥を落とす勢いで、「紙の上の魔法使い」、「水葬銀貨のイストリア」、に続いて第三作目の「空に刻んだパラレログラム」を制作していた。「紙の上の魔法使い」に心奪われ「水葬銀貨のイストリア」を楽しんでいたこともあり、「空に刻んだパラレログラム」が発売される少し前に本作を購入した。

しかし「空に刻んだパラレログラム」があんまりな作品だったので心が離れてしまい、本作も積んだ状態となっていた。

断捨離中に気が変わり、せっかく購入した作品だからプレイすることとした。

【感想のまとめ】

問題点も多いがテーマに真摯に向き合った意欲作でもある。
恋心にきちんと向き合ったという点では非の打ち所のない作品だが、伏線が巧みすぎて真逆の印象をもたれるリスクすらある。
メタ要素が強いが空回り気味で、メタで提示したテーマに対する回答には肩透かしを食らった。
サブキャラが強く、ヒロインが弱い作品でもあった。
好きになったキャラは林檎や観月、嫌いになれないのは帚木。

以下ネタバレ注意

【感想】

【全般】

良かった点

  • 選択することを重視する作品
    本作は告白に対して受け入れるか断るかを選択していく。恋愛の成就と失恋とが描かれている作品なので、恋愛を真剣に描いた作品と言って良いだろう。

  • 恋心にきちんと向き合うストーリー
    本作の最大の強みは恋心にきちんと向き合った点で、この点だけは非の打ち所がない。
    面白いことに、最初は真逆の印象を抱いていた。宗一郎がヒロインの告白を断る際に、相手の恋心を否定しているのが気にかかった。ずいぶん独善的な恋愛観だと思って読み進めていたが、まんまとルクル先生にしてやられたと後々気付かされた。夏帆ルートで宗一郎自身が恋心を疑われ、観月たちのおかげで自身の恋を確信するシーンを見て、全てはこのための複線だったと理解した。自分の判断で相手の恋心を否定した宗一郎には夏帆を説得できる材料がなく、宗一郎を救うことができるのは林檎や失恋したメンバーだけである。芸術的とも言えるテーマの書き方だった。

  • 終盤が盛り上がる作品
    所謂各駅停車型の作品なので、TRUEにあたる夏帆ルートにほぼすべてのリソースが注ぎ込まれている。二度目の告白失敗から三度目の告白に至るまでの盛り上がりは完璧で、ルクル先生が緻密に組んだ設定が遺憾なく発揮されていた。

  • ひときわ輝く林檎の愛
    林檎が自身の宗一郎へ向ける愛を、帚木に語るシーンが本作で一番好きなシーン。自身の愛を「無償の愛」だと言い切る彼女は、本作のテーマよりも一つ高い場所にいるように感じた。この恋は正しいのか、告白を受け入れるのか、そんな作品のテーマを超越した彼女は、他のヒロインを食ってしまうほど魅力的なキャラクターだった。

人を選ぶ点

  • サブキャラが強すぎる作品
    良く言えばサブキャラが強く、悪く言えば主要メンバーが弱い作品。主要メンバーが受動的なので、サブキャラの帚木と林檎が物語のキーを担っている。帚木が波乱を起こしつつ恋愛観の問題提起を担当し、林檎が宗一郎の背中を押していく。終盤やエピローグでもこの二人が美味しいところを持っていくので、一番印象に残るのはこの二人かもしれない。ヒロインだと観月が重要な見せ場を担っているが、彼女が光るのは失恋したルート。ある意味彼女も見せ場ではサブヒロインかもしれない。

  • 恋愛観への思想が強い
    本作の恋愛観は非常に強く、押し付けがましく感じるかもしれない。特に宗一郎はヒロインの告白に対してそれは恋ではない、という形で断っていく。これはすべて宗一郎が自身の恋を疑われ、そして自身の恋を確信するまでの伏線となっている。しかしその時点では伏線に気づけないので、独善的で押し付けがましい恋愛観を持った作品だと誤解されてしまうリスクを抱えている。

  • メタ要素がとても強い
    帚木や林檎、宗一郎などの発言にメタ要素がかなり多い。特に帚木は作者の代弁をしているのか、メタ発言をプレイヤーへ積極的に向けてくる。それを昇華できていればアピールポイントだが、後述のように持て余している。いっそのことメタ要素を含まないほうが正解だったかもしれない。

  • ご都合主義へのメタ要素は空回り
    作中で度々ご都合主義やライトなエロゲを揶揄するが、本作も同類に感じた。ヒロインを振るという選択こそ少し珍しいが、恋とはというテーマを掲げる割に各ヒロインのルートは竜頭蛇尾なご都合主義で、物語の展開も帚木や林檎といったお助けキャラ頼み。むしろ本作こそご都合主義に救われているシナリオに感じた。

  • 個別ルートがあまりに弱い
    個別ルートに入るタイミングで、帚木がヒロインの恋愛観に対してメタ的な疑問を呈してくる。言われなくてもわかるような内容をわざわざ提起してくるが、その回答はごくごく一般的なものをご都合主義で返してくるので肩透かしを食らった。特に序盤でエンディングを迎える光や夕紀は、シナリオの立ち位置で割りを食った印象。

  • 序盤の主人公がきつい
    帚木が宗一郎をヘタレ主人公に仕立て上げたという原因はあるが、それを差し引いても宗一郎の言動がきつい。距離感と情緒のおかしい構ってちゃんぶりで、読むのが苦痛に感じるほど言動がきつい。中盤以降は成長したというていでまともになっていくが、メタネタや下ネタのはさみ方が不快だった。

  • 設定と描写の整合が甘い
    核心に迫る要素以外は、作り込みが甘く感じた。たとえば宗一郎は最初から林檎と仲睦まじく、クラスメイトが描写されていないこともあり孤独感に違和感があった。同じ理由で林檎が嫌われている要素も取ってつけた感が強く、むしろ宗一郎に優しい人という印象が強くなってしまった。登場人物にきっちりと役割を振っているルクル先生だからこその問題なのだろうが、詰めの甘さを随所に感じた。

  • 誤字は他社作品と比べると多め
    ウグイスカグラ自体よりは遥かに少ないものの、誤字や誤用、イラストと文章の不一致は多い。後のウグイスカグラ時代にも見られる悪癖だろう。

  • かなり人を選ぶイラスト
    イラストは贔屓目に見ても素晴らしいとは言いづらい。イラストをそこまで重視していないので許容範囲だが、衣装の季節感に違和感があることや、主人公がモブの悪役みたいで怖いのは残念なところ。

  • 演出面が弱すぎる
    BGMが印象に残らず、立ち絵のバリエーションが少なく、エフェクトは皆無、OPは存在するがなぜか本編で流れず、EDもあってないようなもの。これでシナリオも絵も人を選ぶ作風なのは強気すぎただろう。

【各キャラ】

  • 御法宗一郎
    トラウマ云々は関係なく、単純に距離感や性格悪いのでは?という疑念がついて回る主人公。序盤の言動は本当にきつかったが、執行部活動を通じて言動がまともになっていく成長型。ヒロインの告白に対して恋心を否定するのはどうなんだ、と思ったらきちんとしっぺ返しを受けたのはまんまとしてやられた。そこから立ち直った後はちゃんと格好良い主人公だった。ヘタレ主人公という設定にされたので野暮だろうが、林檎の恋心に気づかないのは無理があると思う。

  • 篝火夏帆
    実はトラウマが一番深いヒロイン。帚木に仕組まれた楔のせいで恋愛を出来ないこともあり、見せ場を林檎と観月に持っていかれた感が否めない。

  • 橋姫観月
    ヒロインで一番好きなキャラ。文化祭を通じて素直になれない性格も改善していき、一番成長を感じたキャラクター。失恋した宗一郎に発破をかけ、失恋するための告白をするシーンがとても好きなシーン。「大事なのは過去ではなく今だろう」と言わせるために生み出されたであろう、幼き日の初恋は帚木に唆された宗一郎の打算によるものという設定は残酷すぎるが、すべてがこのシーンに合わせたキャラだからこその鮮烈なシーンだった。

  • 御法光
    シナリオで割りを食っているキャラその1。個別ルートで近親相姦というテーマに踏み込んだと思いきや、あっさりとしたご都合主義な解決策にはがっかり。二人の関係を隠すと言ったそばから公共の場で普通に話していたり、チグハグな印象。勉強会でのお泊まり会を画策して楽しみにしていたりする、下級生らしい場面が好きなシーン。

  • 梅枝夕紀
    シナリオで割りを食っているキャラその2。一番普通な子として描かれているからこそ、個別ルートがあっさりしていたり、林檎への苦手意識といったネガティブな面が描かれてしまった印象。それでも優しいところは随所で描かれていて、観月の告白を蔑ろに断った宗一郎を諫めるシーンが好きなところ。

  • 早蕨林檎
    一番好きなキャラ。強すぎてヒロインになれなかったサブヒロイン。序盤から周囲からのヘイトを厭わずに宗一郎へ無償の愛を捧げていて、ヒロインレースに名乗りを上げたら一強だろう。宗一郎も林檎がいるシーンでは常に林檎を優先していて、林檎を形容する表現からも魅力を感じているのが面白いところ。帚木相手に啖呵を切る場面や夏帆に振られた宗一郎に発破をかける場面、帚木とのエピローグが好きなシーン。

  • 帚木景色
    諸悪の根源で歪んだ恋愛観を持った人物。それでも憎めないのは登場する度に物語に波乱をもたらし、恋愛のテーマを主張するなど、シナリオを回すために奔走している印象がついてしまったからか。ルクル先生の都合だろうが観察眼も確かなもので、正確すぎる人物評価も印象的。自身の掲げる一途で真剣な恋愛をする男になった宗一郎を見て、夏帆の居場所を教える場面が好きなシーン。