概要
市川団八はNightmare Syndrome様 (以下NS) のゲーム「シジミ少年の秀逸な死」に登場するキャラクターである。作品の感想は別記事 (リンク) に記載済み。
今回は作中で一番好きな市川団八について語る。NS作品には数多くの魅力的な作品・キャラクターがあったが、団八の異質さと煌めきは際立っている。10年以上彼の虜になっているが、すでにシジミ少年の秀逸な死を知っている人も少なく、語る機会もないからこその備忘録。
以下ネタバレ注意
市川団八の魅力
- しじみの幼馴染
彼の言葉を借りると「他に類を見ない」幼馴染。誤用だが、あながち間違ってはいない絶妙な表現。活字中毒で発言までに時間のかかるしじみに対し、喧しい演説家で生き急ぎ気味な団八。まさに割れ鍋に綴じ蓋という言葉がぴったりの二人。会話のキャッチボールが怪しい場面も多々あるが、それがTRUEルートで表面化する。青い目のしじみと赤い目の団八という、ビジュアルのコントラストも良い。 - 死への憧れ
団八は作中の登場人物で唯一、死を手段ではなく目的としている。未来を悲観したわけではなく、孤独を恐れるわけでもなく、親友の後追いでもなく、周囲へのあてつけでもなく、ただ純粋に死にたい。だからこそ彼が死を語るときは生き生きとしていて、その狂気が際立つ。市川団八を語る上で重要なアイデンティティになっている。 - しじみへの重い愛
団八はしじみへの愛を度々口にする。しじみを愛しているが、同時にしじみには清らかであって欲しいという複雑な胸中が見え隠れする。しじみへのラブコールは軒並みスルーされていたり、しじみの読んでいたヰタ・セクスアリスのタイトル訳を知った時の慌てぶりなど、意外と不憫で可愛い役回りが似合っている。 - 級友との関係性
シジミとの会話は愛にあふれているが、級友との距離感が面白い。治夫に喧嘩を売ってみたり、六にはなぜか教員目線で会話をする。悪意はないからこその問題児ぶりが面白い。治夫には冒頭で喧嘩を売っているような会話をしているが、治夫エンドの後は良いトリオになれそうな印象もある。 - NORMAL/TRUEエンドで見せた2つの顔
団八エンドは3つあり、最後に二人で会話をするNORMAL/TRUEエンドで団八の印象が大きく変わる。どちらも彼の魅力がこの上なく発揮されている。
NORMALでは市川団八の真骨頂を見ることができる。自分の血で世界を赤く染めながら、自分の人生は素晴らしかったと語り続けて死を迎える。最期までしじみを裏切らず、憧れの死をほぼ最高の形で迎えている。しじみと一番近い距離にいながら、しじみの本心とは一番遠いというすれ違いも良い。このエンドは眩しいほどの狂気と激しさが素晴らしい。
TRUEでは一転して、市川団八のアイデンティティが崩壊する。しじみの本心を知り、自身の生き方を否定される。ただの狂人ならば一蹴しただろうが、しじみを大切に思っている団八だからこそ、しじみの言葉に迷い戸惑う。そして彼がしじみに結論を伝える前にエンディングを迎える。しじみと一番近い距離なのに、心が一番遠かった団八。彼がしじみとある意味で久しぶりに会話をして、生き方を変える流れが感動的。