暁のローマ 感想
―あまり構えずに見るべき作品―

概要


暁のローマは木村信司先生による脚本・演出で、シェイクスピアの「ジュリアス・シーザー」を原作としたロックミュージカル。古代ローマのユリウス・カエサル暗殺を描いた作品で、カエサル、ブルータス、アントニウス、カシアスを中心に描かれている。

感想のまとめ


原作の名シーンでもある演説シーンやクライマックスは秀逸。名シーンなどの見せ方が良いので、あまり構えずに美味しいシーンをつまみ食いする形で見るのが良いタイプの作品だろう。
一方で演出はかなり微妙。コメディなのかシリアスなのかわからない演出はなぜ採用されたかがわからない。歴史解釈も微妙で、ローマ史か原作を予習しないと背景を理解できないが、予習をすると歴史解釈に疑問符が浮かんでしまう。
カリスマ性と力強い歌声を見せてくれたカエサルの轟さん、苦悩する姿がとても素敵だったブルータスの瀬奈さん、演説シーンが最高だった霧矢さんがお気に入り。


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婆娑羅の玄孫
―愛が込められた最高の当て書き作品―

概要


婆娑羅の玄孫は植田紳爾先生の作・演出による作品で、轟悠さんの退団公演。
江戸時代を舞台に、近江蒲生郡安土を治める佐々木家の当主家次男として生まれるも家から縁を切られた佐々木蔵之介、改め細石蔵之介を主人公とした作品。正義感が強く粋な男、そんな蔵之介の生き様を描いた作品を専科の轟さんと汝鳥さん、そして星組メンバーが演じる。
  

感想のまとめ


植田先生から轟さんへの愛が込められた最高の当て書き作品になっている。蔵之介と轟さんを重ねたクライマックスは、物語としても轟さんへのメッセージとしても感動的。メリハリのある2本立てのストーリー、和物らしい美しい所作や殺陣を堪能できる構成、テンポの良い江戸言葉による掛け合いを楽しめる。
すべての所作で男役の極致を見せてくれる蔵之介を演じた轟さん、専科同士だからこその重みと阿吽の呼吸を見せてくれる彦左を演じた汝鳥さん、軽妙な掛け合いから憂いを帯びた姿まで完璧なお鈴を演じた音波さん、軽く明るく華のある江戸男の権六を演じた極美さん、ガラッと変わる一人二役を見事に演じ分けた阿部 / 頼母を演じた天華さんがお気に入り。

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シラノ・ド・ベルジュラック (宝塚) 感想
―キャストは良いのに脚本があまりにも―

概要


原作はフランスの劇作家であるロスタンによる戯曲で、大野拓史先生による脚本・演出。
シラノ・ド・ベルジュラックは理学者にして詩人、剣客、音楽家と多才だが、大きすぎる鼻のせいで従妹ロクサーヌへの恋心を隠している。そのロクサーヌは、美男のクリスチャンに想いを寄せていることをシラノに告げる。シラノは二人のために尽くそうとするが、クリスチャンに弁舌の才がないことを知る。ロクサーヌがこのことを知ったら、彼に幻滅してしまう。
その時、シラノはあることを思いつく。弁舌に恵まれたが容姿に恵まれなかったシラノと、容姿に恵まれたが弁舌に恵まれなかったクリスチャン。二人が手を組めば、ロクサーヌへの想いが届くかもしれない。シラノはクリスチャンに、自分の弁舌を使ってロクサーヌへの想いを伝えることを提案する。

感想のまとめ


原作の良さを根こそぎ奪われた脚本を、轟さんと星組さんの演技で成立させている作品。熱演ぶりとカリスマで成り立たせている轟さんのシラノ、終盤の演技と歌が特に素敵な小桜さんのロクサーヌ、表情に感情を乗せる演技が後半で光る瀬央さんのクリスチャン、前半と後半の演じ分けが完璧な天寿さんのギッシュ伯爵が特に凄い。1シーンでも印象に残る紫月さんの侍女や澪乃さんのリイズなど、娘役の層の厚さが印象的。
ネックは脚本・演出で、再演するなら別の先生の手で作り直してほしい。発表された日から楽しみにしていた作品だったので、今まで見てきた中で一番ショックな公演だった。

 

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神家の七人 (専科) 感想―平和で心が温まる作品―

概要


齋藤吉正先生による作・演出の、オリジナルコメディ作品。専科と一部の月組生による公演。

第二次大戦後のアメリカ東部の都市ボルチモアが舞台。欧州戦線をから帰還したイヴァン・ターナーは、父の死を知らされる。マフィアのボスである父が起こしたターナーズコーポレーションを継ぐ事になったイヴァンは、ファミリーを解散して神父への道を選ぶ。イヴァンの発言に動揺した幹部だったが、彼らはイヴァンを見守るために同じ道を進む決意をした。神の道を歩む彼らの前には、予期せぬ波乱が待ち受けていた。

感想のまとめ


笑えて心も温まるストーリーで、後でニヤリとしたくなる伏線もある、コメディベースでハートフルな脚本がとても良かった。
専科の人が中心となった公演で、壮年期の低い声でも聞き取りやすいセリフ、何気ない動きまで美しい身のこなし、テンポの良い掛け合い、まるで別人のように変わる一人二役 (以上) と技術の粋を感じられる公演だった。

観劇日


2020/6/8
Blu-ray
凱旋門を初観劇する前日に、宝塚ホテルで10分程度視聴済。

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エリザベート (96年雪組) 感想
―歌・演技・脚本の全てが凄い傑作―

概要


オーストリアで上演されていたミュージカルで、潤色・演出は小池修一郎先生。オーストリア・ハプスブルグ家の皇后になるエリザベートと、死の象徴でもある黄泉の帝王トートが織りなす愛と死を描いた作品。

感想のまとめ


脚本・演出・演技・歌のすべてが凄まじい作品。歌はこれまで見た中で一番凄いかもしれない。トートの一路さんを始めとしてどの人も凄まじく歌が上手で、「闇が広がる」が一番のお気に入り。
冷たく無機質で、人の傍らにあり続ける死を象徴するトートがとても素敵で、まさに死そのものというトート像があってこその作品だと思う。
どの人も凄まじいけれど、冷たく無機質な死を象徴するトートを演じた一路さん、オーストリア皇帝として年月を重ねていくフランツを演じた高嶺さん、鏡の間で凄まじい美しさを見せるエリザベートを演じた花總さん、ひと目見てヤバいと感じるルキーニを演じた轟さんが特に印象的。

視聴日


2019/9/23 (Blu-ray)

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