神家の七人 (専科) 感想―平和で心が温まる作品―

概要


齋藤吉正先生による作・演出の、オリジナルコメディ作品。専科と一部の月組生による公演。

第二次大戦後のアメリカ東部の都市ボルチモアが舞台。欧州戦線をから帰還したイヴァン・ターナーは、父の死を知らされる。マフィアのボスである父が起こしたターナーズコーポレーションを継ぐ事になったイヴァンは、ファミリーを解散して神父への道を選ぶ。イヴァンの発言に動揺した幹部だったが、彼らはイヴァンを見守るために同じ道を進む決意をした。神の道を歩む彼らの前には、予期せぬ波乱が待ち受けていた。

感想のまとめ


笑えて心も温まるストーリーで、後でニヤリとしたくなる伏線もある、コメディベースでハートフルな脚本がとても良かった。
専科の人が中心となった公演で、壮年期の低い声でも聞き取りやすいセリフ、何気ない動きまで美しい身のこなし、テンポの良い掛け合い、まるで別人のように変わる一人二役 (以上) と技術の粋を感じられる公演だった。

観劇日


2020/6/8
Blu-ray
凱旋門を初観劇する前日に、宝塚ホテルで10分程度視聴済。

以下ネタバレ注意

感想


【全体】

  • 見惚れるような演技
    歌も演技も凄まじい安定感。壮年期の低い声でも聞き取りやすいセリフ、何気ない動きまで美しい身のこなし、テンポの良い掛け合い、まるで別人のように変わる一人二役 (以上) と技術の粋を感じられる公演。月組メンバーも芝居上手の人が多く、演技の凄さに見惚れる作品。

  • 笑えて心も温まるストーリー
    前半はコメディ展開で笑える流れで、後半は家族とファミリーの愛に心温まる展開。平和で楽しい作品なので、気軽に見やすい作品だと思った。

  • さりげなく散りばめられた伏線が良い
    イヴァンとロビンの会話で感じた違和感や、場面切り替えでかかるラジオのDJなどは後々に活きてくる伏線で、全容が見えた時の爽快感が心地よい。2回目を見た時に、思わずニヤリとしてしまう伏線だった。演技で伏線を散りばめてくるので、改めて芝居上手なメンバーだと思う。

  • イヴァンの愛され方がとても素敵
    イヴァンの愛され方がとても温かくて、脚本と演技が組み合わさってとても素敵。幼少期からのエピソードをみんなが覚えていて、その話に花が咲く様子がとても好き。

【個別】

  • イヴァン・ターナー (轟さん)
    最年少の役に合わせた幼さ残る仕草が可愛くてびっくり!愛されて育った坊っちゃんぶりが絶妙で、役柄問わずピタッと合わせてくるのは流石。このイヴの演じ方のおかげで、親子三人、ファミリーのシーンの感動が倍増している。
    ウィリアムが憑依した状態だと仕草や声、表情までガラッと変わって格好良くなるので一作品で二度美味しい。

  • クライド (汝鳥さん)
    イヴのことを一番気にかけている良い人っぷりが素敵。途中からはひたすら猫を探していて、ルイスとの掛け合いがとても面白かった。低い音域をとても綺麗に歌うシーンもとても良かった。そんなに多くはないのだけれど、ダンスシーンもキレが良くて素敵。

  • アルフ (一樹さん)
    一番マフィアっぽく、メイク・声ともに格好良かった。そんな格好良い姿なのに、動きはコミカルでギャップが素敵だった。

  • ハリー (悠真さん)
    ファミリーで一番情けない役柄だけれど、その情けなさの出し方が素敵だった。虚勢を張っているのに伝わってくる情けなさが絶妙。

  • ウィリアム・ターナー (華形さん)
    動きのキレがとても良くて格好良い!キザな男っぷりがとても素敵。イヴを想う父親としての表情も良く、人生楽しみつつ息子を想っている姿がとても良かった。伊達男で、コメディな役柄もこなし、父親としても良い男、そんな振れ幅の大きい要素がすべて素敵。

  • ロビンなど (早乙女さん)
    一人四役の演じ分けが凄かった!イヴとのシーンではかなりの年齢差を感じたが、まさに母と息子のシーンだからシーンのイメージは完璧。クズ野郎を連呼するラジオDJ、 天国からラジオを放送するDJ、そしてロビンの姪まで4人の役を特徴を変えて演じ分けていて凄かった。この人あってのこの公演だったと思う。

  • ルイス (春海さん)
    クライドとペアになっている印象が強く、掛け合いのテンポがとても良かった。教会にも馴染んでいて、実は一番人生を謳歌してそうなところが素敵。

  • ミック (蒼瀬さん)
    オカマな仕草が可愛く、浮きすぎず隠れすぎない絶妙なコミカルさだった。凄む時の声が力強くて格好良いのがまた面白かった。

  • レイ (周旺さん)
    かなりの老人ぶりで、壮年期のメンバーとの年齢差がはっきりと分かって良かった。