パルムの僧院/スタンダール/大岡昇平 訳/新潮文庫/感想
―後半が面白い作品―

概要


フランスのスタンダールによる作品で、大岡昇平による翻訳。イタリアのパルム公国を舞台に、貴族の青年ファブリス・デル・ドンゴと周囲の人間たちの生き様を描いた小説。

感想のまとめ


恋愛と政治がファブリスを中心に絡み合っていくので、尻上がりに面白くなる作品。激しい恋愛と宮中の政治は読み進めるほど面白さが増していく。登場人物によって形の違う愛の描き方がとても魅力的。自分の思いに一直線で憎めない魅力のあるファブリス、美貌と知略を駆使して宮中で立ち回るジーナなど、登場人物も魅力的。

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空に刻んだパラレログラム
―シナリオが余りにも……―

概要


ウグイスカグラの3作目にして、初のスポーツ作品。
クオリアという魔法の力がある世界を舞台に、テレプシコーラと呼ばれる空を翔けるチーム競技に青春を捧げる学生たちの物語。

 

感想のまとめ


シナリオが足を引っ張っている作品。致命的なほど悪いシナリオのテンポ、終盤まで魅力的に見えないテレプシコーラ、薄すぎる個別ENDの三重苦。システム面は感動するほどパワーアップしていて、BGMも声優も良いがお勧めしない作品。
この作品を買うなら過去作品の「紙の上の魔法使い」や「水葬銀貨のイストリア」をお勧めする。

 

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水葬銀貨のイストリア 感想
―TRUEとBADが良い―

概要


紙の上の魔法使い」で脚光を浴びたウグイスカグラの2作目。
舞台は人魚姫の伝説が語り継がれている人工海上都市のアメマドイ。野望と陰謀が影で渦巻くこの街を舞台にした物語で、ポーカーがキーアイテム。キャッチコピーは「―ハッピーエンドを、約束しよう」。

感想のまとめ


伏線回収と終盤の盛り上がりが凄いシナリオゲー。個別ENDはかなり微妙だが、TRUEとBAD ENDの完成度がピカイチ。人魚姫、ポーカーなどの設定を巧みに使ってシナリオを盛り上げている。キャラクターは茅ヶ崎征士の悪役ぶりがピカイチ。あまりに多すぎる誤字、TRUEと比べて弱すぎる個別END、テンポの悪い文章がネック。前作「紙の上の魔法使い」を楽しめたユーザーならばこの作品も楽しめるはず。

 

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ドグラ・マグラ (映画版) 感想
―怪作を完璧にまとめ上げた傑作―

概要


夢野久作の奇書「ドグラ・マグラ」を映像化した作品。
主人公は大正時代の九州帝国大学医学部精神病科の収監されている記憶喪失の青年。青年の前に現れた医学部教授の若林博士によると、彼の失われた記憶はある重大な事件の鍵を握っているという。青年は記憶の手がかりを探していくうちに、事件の真相を知ることになっていく。

感想のまとめ


複雑怪奇な原作の雰囲気を保ったまま、これ以上無くわかりやすくまとめ上げている傑作。あの原作をこれほど完璧に表現できるのか、と衝撃を受けるであろう作品。原作で多くの人が挫折したであろうシーンもテンポ良くまとめている。正木博士を始めとしたキャスト陣も完璧。原作を読んだ人にも、原作を断念した人にもおすすめの作品。

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ロミオとジュリエット (2011年雪組) 感想
―上品な悲劇だが大人しすぎる物語―

概要


原作は誰もが知っているシェイクスピアの恋愛悲劇。ジェラール・プレスギュルヴィックによるミュージカル作品を、小池修一郎先生が潤色・演出した公演。宝塚では2回目の公演。
14世紀のイタリア・ヴェローナを舞台に、対立している家柄のモンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットが恋に落ちるが、運命の悪戯によって悲劇となってしまう物語。原作から変更点もいくつかある公演。

感想のまとめ


主要メンバーの歌がとても良い公演。歌も演技も良くて上品だが、理性的すぎるロミオとジュリエット、一歩引いたスタンスかつ無機質で概念的な愛と死などが噛み合ってしまった結果、幸福感による盛り上がりが弱くて大人しすぎる物語だった。
歌がとても素敵で悲劇の似合う音月さんのロミオ、同じく歌と悲劇性がとても映える舞羽さんのジュリエット、キレっぷりのすさまじい早霧さんのマキューシオ、最後の歌がとても素敵な奏乃さんのロレンス神父が特に印象的。
大劇場仕様のフィナーレは少し蛇足気味で、演出的にも劇的な初演 ( ロミオとジュリエット (2010年星組) 感想) のほうが好みだった。

 

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