めぐり会いは再び My only shinin’ star 感想 ―先の展開がわかっていても楽しい王道喜劇―

概要


めぐり会いは再び My only shinin` starは小柳奈穂子先生の脚本・演出による作品。フランスの劇作家マリヴォーの「愛と偶然との戯れ」をモチーフにした作品で、結婚相手のことを知るために、身分を偽って相手を観察しようとする男女を描いた喜劇作品

感想のまとめ


古典喜劇の王道を歩むので先の展開がわかっていても笑えるし、ロマンスで盛り上がる事ができる作品。柚希さんと夢咲さんの息の合ったラブシーンがとても素晴らしくて印象的。作品を自分の色に染め上げる、紅さんの劇薬ぶりを堪能できる。
お気に入りはカリスマぶりとラブシーンでのピカイチの格好良さが印象的な柚希さんのドラント、出てくる度に舞台が引き締まる英真さんのオランド伯爵、辛辣なセリフを絶妙な間のとり方と声のトーンで繰り出して笑いを取ってくる涼さんのマリオ。

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王家に捧ぐ歌 (2022年星組) 感想
―圧倒的な歌唱力が素晴らしい―

概要


ヴェルディのアイーダをモチーフとした作品で、木村信司先生による脚本・演出。エジプトの将軍ラダメスと、エジプトの捕虜となったエチオピア王女アイーダの悲恋を描いた物語。星組・宙組で上演されている公演の再演である。

感想のまとめ


ライブ配信での視聴。
圧倒的な歌唱力と演技力が際立っていて、歌を浴びるタイプの作品。わかりやすい対立軸と抜群の歌唱力で謳われる、愛と平和というテーマが際立っている。舞台機構や衣装は簡素で、良く言えば歌や演技に集中しやすい公演。
歌と演技が際立っている礼さんのラダメスと有沙さんのアムネリス、セリフがなくても気持ちが伝わってくる天華さんのケペル、アイーダの悪印象を抑えてヒロインに仕上げた舞空さんがお気に入り。

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婆娑羅の玄孫
―愛が込められた最高の当て書き作品―

概要


婆娑羅の玄孫は植田紳爾先生の作・演出による作品で、轟悠さんの退団公演。
江戸時代を舞台に、近江蒲生郡安土を治める佐々木家の当主家次男として生まれるも家から縁を切られた佐々木蔵之介、改め細石蔵之介を主人公とした作品。正義感が強く粋な男、そんな蔵之介の生き様を描いた作品を専科の轟さんと汝鳥さん、そして星組メンバーが演じる。
  

感想のまとめ


植田先生から轟さんへの愛が込められた最高の当て書き作品になっている。蔵之介と轟さんを重ねたクライマックスは、物語としても轟さんへのメッセージとしても感動的。メリハリのある2本立てのストーリー、和物らしい美しい所作や殺陣を堪能できる構成、テンポの良い江戸言葉による掛け合いを楽しめる。
すべての所作で男役の極致を見せてくれる蔵之介を演じた轟さん、専科同士だからこその重みと阿吽の呼吸を見せてくれる彦左を演じた汝鳥さん、軽妙な掛け合いから憂いを帯びた姿まで完璧なお鈴を演じた音波さん、軽く明るく華のある江戸男の権六を演じた極美さん、ガラッと変わる一人二役を見事に演じ分けた阿部 / 頼母を演じた天華さんがお気に入り。

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ロミオとジュリエット (星組2021年版) 役替わり比較
―ガラッと変わる役替わり―

概要


礼真琴さん・舞空瞳さん体制の星組で随所で絶賛されている「ロミオとジュリエット」。役替わりで雰囲気がガラッと変わっているので、見比べると二度も三度も楽しめる作品になっている。
今回珍しく両パターンのブルーレイが発売されるので、両パターンの違いをピックアップしてみる。
個別の感想は下記を参照。
ロミオとジュリエット (役替わりA) 感想
ロミオとジュリエット (役替わりB) 感想

まとめ


王道を行く青春物が好きならば役替わりA、変化球が好みならば役替わりBが刺さりやすい印象。「マーキューシオ」と「死」の二役が雰囲気におけるキーキャラクター。「ティボルト」や「パリス」の人間味の違いや「ジュリエット」の変わらなさなど、変わるところも変わらないところも面白さにつながっている。
ティボルト/死で人と概念の演じ分けが凄まじい愛月さん、マーキューシオ/パリスで言動すべてが腑に落ちる極美さん、死/マーキューシオをかなり攻めたアプローチで演じた天華さんが個人的なお気にいり。

 

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ロミオとジュリエット (星組2021年版) 感想
―王道を征く正統派の役替わりA―

概要


原作は誰もが知っているシェイクスピアの恋愛悲劇。ジェラール・プレスギュルヴィックによるミュージカル作品を、小池修一郎先生が潤色・演出した公演で、宝塚では星組→雪組→星組→今回の星組と4回目の公演。
14世紀のイタリア・ヴェローナを舞台に、対立している家柄のモンタギュー家のロミオとキャピュレット家のジュリエットが恋に落ちるが、運命の悪戯によって悲劇となってしまう物語。原作から変更点もいくつかある公演。

感想のまとめ


若さと青春、そして愛にフォーカスされた王道を征く正統派の超大作。愛月さんのティボルトによって、若さの生み出すエネルギーと悲劇性が強調されている。ウェストサイド物語の雰囲気を少し逆輸入したようなイメージが近いかもしれない。
完成度の高い役作りも特長で、ティボルトを等身大の青年として演じた愛月さん、マーキューシオをやんちゃで直情型な幼馴染として演じた極美さんが秀逸。特にマーキューシオは、その人物像がすとんと腑に落ちる絶妙な役作りだった。そんな中で異彩を放つ天華さんによる死の大胆な役作りも光っていて強烈だった。

役替わりBの感想は別記事に記載。

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―王道を征く正統派の役替わりA―” の
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